ブランド広告の投資対効果最大化のために、オンターゲット率の最適化を
■届けたいメッセージが、届けたい人に届いているのか?
非常にシンプルな質問ですが、読者の皆さんが過去関わった、現在関わっている広告キャンペーンは、メッセージを届けたい相手に届けることができたでしょうか?届けられたとお答えの方は、実際に何%の人に届けられたのかご存じでしょうか?
この非常にシンプルな質問に正確に答えられることが、実は極めて重要なことなのです。
例えば女性向けの商品であれば、女性にその良さを知らせたい。若年層向けのサービスであれば、若年層にメッセージを受け取ってもらいたいと思うのは当然のことです。しかし、仮に女性向けの商品の広告の半分が男性に見られていたら、結果的に、あなたが広告キャンペーンに投資したお金の半分は、本来の目的とは違った形で利用されたことになり、その効果を把握することが困難になってしまいます。 また、通常の広告キャンペーンは、想定しているターゲット層の共感を得るために、様々なアイデアを駆使し広告のクリエイティブを制作していますが、そもそものターゲット層に届いていなければ、せっかくのアイデアも本来の価値を産むことが難しくなってしまいます。
■従来のデジタル広告効果指標は「人」ベースの考え方が見逃されていた
デジタルの世界では、様々な情報が取得できるにも関わらず、広告キャンペーン、特にブランディング目的のキャンペーンの結果になると、実はこの「届けたい人に届いたのか」を知ることは非常に曖昧です。なぜなら、従来デジタル広告を評価する指標は、クリック数や視聴回数など、アクションがベースの指標が用いられていたからです。また、インプレッションをベースにリーチを割り出すといった手法はとられていましたが、例えば30代女性の何%が実際に広告を見たのか、といったような数値を確認することは困難でした。また、キャンペーン終了後に実施する調査でも、認知や好意度、購買意向などのブランディング効果は調査されているものの、そもそも「届けたい人」に「どの位届いていた」のかはあまり調査されていなかったと思います。加えて、キャンペーン終了後のアンケートでは結果が出てくるまで時間がかかるため、いわゆるPDCAを回すためのタイムラインも長くなりがちでした。
■改善の余地が残されているデジタル広告のオンターゲット率(ターゲット到達率)
では、通常はどのくらいの割合でターゲット層にリーチできているのでしょうか?弊社のニールセン デジタル広告視聴率を用い、米国の1万件以上の計測結果から計算した平均のオンターゲット率(ターゲット到達率)は、全インプレッションのうち54%となっていました(図表1)。
同様に、最近日本で実施した10キャンペーンで利用された広告メニューごとのオンターゲット率を見てみると、数値が高いものもあれば、低いものもあるという結果になりました(図表2)。
デジタル広告は、詳細なターゲティングができることが一つ特徴であり、ターゲット層へより効率的に広告を届けるための技術や取引形態が発達してきていますが、足元では、実はまだオンターゲット率を改善できる余地が残されていることが分かります。
■リアルタイムでの最適化と継続的な計測が重要なアクション
デジタルのもう一つの特性として、タイムリーにPDCAを回していけることがあげられます。図表2で見たように広告メニューごとにオンターゲット率が異なることがリアルタイムに把握できれば、キャンペーン実施中にオンターゲット率の低いメニューから高いメニューへ配信を寄せていくアクションも可能になり、投資対効果の最大化が可能になります。
また、オンターゲット率を継続的に計測し知見をためることで、次回以降のプランニングにつなげていくことも重要です。その際には2つの視点から効果検証を重ねることで、最適な運用が可能になると考えています。
1. 配信先の最適化 配信先のメディア・サイトの中で、どのメディア・サイトが、どの性年代に対してオンターゲット率が高いのか、検証を続ける事でキャンペーンのターゲット毎に最適な組み合わせで配信を実現することが可能になります。
2. ターゲティング元データの最適化 何かのデータソースを元にターゲティング配信をしているのであれば、どのデータソースを利用すれば、オンターゲット率が上がるのか検証を続けることで、より良いデータソースを利用していくことが可能になります。
以上、まずプランニングの基礎に立ち帰り、「伝えたい相手にメッセージを届けられているのか」を常に数値化して見ていくことが、ブランド広告の投資対効果を最大化するため第1歩であると考えてます。
※オンターゲット率の最適化を実現するためのソリューション: ニールセン デジタル広告視聴率の詳細はこちら
(ニールセン エグゼクティブアナリスト 中村 義哉)
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