スマホからのオンラインショッピングは増加するのか? -PCとスマホからの購買行動分析
■オンラインショッピングの拡大
先進国にとどまらず、新興国も含めて世界中でオンラインショッパーが増加しています。2014年8月、ニールセンが発表したeコマースに関するグローバル調査によると(こちら)、新興国ではモバイル端末がオンラインショッピングの拡大に大きく寄与していることがわかりました。日本においても、ウィンドウショッピング(ショッピングサイトの閲覧)も含めたオンラインショッピングサービスの利用は、2014年2月にスマートフォンからの利用者数がPCのからの利用者数を超えました (こちら)。
スマートフォンは空き時間を有効に活用でき、店頭でも手軽な情報収集手段として利用できることを考えると、購入の検討や価格などの情報収集目的の利用が進むことは自然な流れと言えるでしょう。では、オンラインでの購入も閲覧と同様にスマートフォンの利用が拡大してきているのでしょうか。今回は、弊社のインターネット視聴動向データ等を元に、PCとスマートフォンからの購買行動を分析し、今後のオンラインショッピングの動向について考えてみたいと思います。(スマートフォンからの購入状況は、弊社にて詳細なサイト行動ログ情報を測定できているAndroid端末のWEBブラウザからの利用状況を元に分析しています。iOS端末およびアプリケーションからの購入は含んでおりません。)
■スマートフォンからの購入は拡大
まずは、PCとスマートフォンの主要ECサイト*からの総購入回数を2014年1-3月と2014年10-12月で比較すると、PCの増加率は-1%で微減となりました。一方、スマートフォンでは、購入回数が13%増加しており、スマートフォン利用者の増加と共にモバイルショッピングが日本においても拡大していることがわかりました。 (*)主要ECサイトはEコマース カテゴリの訪問者数上位3サイト「楽天市場」、「アマゾン」、「Yahoo! ショッピング」を指します。
図表1:日本国内 PCとスマートフォンからの購入状況
Source: PC:Nielsen NetView 家庭および職場のPCからの利用 ※PCは2歳以上の男女、スマートフォンは18歳以上の男女 ※購入回数は、購入セッション数 ※年代別の特徴は、5歳刻みで購入者の割合を比較し、上位2つを表記 ※購入セッション開始から購入までの利用では、アプリの利用も含む ※サービス数は、Nielsen NetViewおよびNielsen Mobile NetViewにて予め定義されたBrandを使用 ※SNSは、Nielsen NetViewおよびNielsen Mobile NetViewにて予め定義されたカテゴリを使用
■モバイルショッピングは女性が牽引
次にモバイルショッピングでの購入者の特徴を見ると、スマートフォンからの購入者は女性が約70%を占めていました。スマートフォン利用者全体の男女比がおおよそ半々となっていることを踏まえると、女性がモバイルショッピングを大きく牽引している様子がうかがえます。また、購入者の割合が高い年齢層は、PCでは40-49歳であるのに対し、スマートフォンでは25-34歳となっていました。
■PCではじっくり時間をかけて
また、購入に利用したECサイトやその他のサイトの利用も含めた購入セッション時の行動を見ると、スマートフォンでは利用開始から購入までの時間が20分なのに対して、PCではその2倍以上の45分となっていました。また、その間に利用したサイト数はPCの方が平均して約1サイト多くなっていました。PCは商品の詳細な情報を確認しやすく、複数サイトを開いて比較しやすいため、比較検討に時間をかけていることなどが影響していると考えられます。また、購入までの間にSNSを利用していた人は、それぞれのデバイスで40%程度となっていました。
■今後のオンラインショッピングの動向について
今回は、オンラインショッピングサイトでの購入状況をみてきました。iOSやアプリからの購入が含まれていないため、モバイルショッピングの断片的な一面とはなりましたが、概観はつかむことができたのではないしょうか。最後に、これからのオンラインショッピングの動向ついて少し考えてみたいと思います。
オンラインショッピングのメリットは、時間に関係なく店舗に行かなくても購入できることや、手軽に安く買えるサイト/店を幅広く比較できることなどがあげられます。特に、スマートフォンは今後も利用者数、利用時間共に増加していくことが予想されます。画面サイズの大きな機種も増えていることを考えると、いつでもどこでも利用できるスマートフォンからの買い物は今後も拡大していくと予想できます。また、PCは複数のサイトを比較しやすく、初めて購入する商品や高額の商品など、様々な情報を比較して購入したい場合などには、今後も活用されていくでしょう。
また、購入前にSNSを利用するなど、購入に影響を及ぼすサイトの利用は、商品を知るきっかけや、購入の後押しをするきっかけとなります。今後、SNSで見た商品をそのサイト上で購入できるようにする機能も計画されています。このように近い将来は、商品の認知から購入に至るまでの購買行動は大きく変化していくことが予想されます。
消費者の購買行動が変化していくということは、すべての事業者にとって、簡単に商品を比較できるアプリを提供したり、SNSの公式アカウントから商品を販売したりできるようにするなど、新たな顧客接点を構築するチャンスとなるでしょう。その際に、消費者がどのようなメリットを感じて各デバイスやサービスを使い分けていくのかを正確に把握し、消費者の需要を把握していくことが重要になってきます。
(ニールセン アナリスト 高木 史朗)
|