ソーシャルフィルターを通して情報取得をするミレニアル世代
■日本ではあまり認知されていないサイトが人気
訪問者数のランキングから利用状況を見ると、GoogleやYahoo、Facebook、YouTubeなどが上位となり特徴が見えにくくなるため、今回は訪問者構成比指数を利用して、ミレニアル世代の特徴を見ていきたいと思います(図表1)。
※訪問者構成比指数:各サービスにおいて選択された属性グループの構成比の割合を同じ属性グループのインターネット全体での構成比と比較した指数で100を平均とする。
図表1:米国 ミレニアル世代(21~34歳)によく利用されているサイト TOP5 2015年11月
集計条件 1. ミレニアル世代のインターネット人口の10%以上が利用しているサービスに限定 2. Brandレベルを使用
Source PC:Nielsen NetView 家庭および職場のPCからの利用 スマートフォン:Nielsen Mobile NetView ブラウザとアプリからの利用
米国のこの世代が特徴的によく利用しているサービスを見ていくと、PCでは「Reddit」が1位となりました。「Reddit」は、いわゆるソーシャルブックマークサービスです。利用者が気になったニュースや画像を感想とともに共有することができ、他のユーザーがその投稿に対し投票を行うことで人気が上下することが特徴となっています。これにより利用者は、今どんな話題が人気なのかを簡単に知ることができます。世界中の200を超える国、地域から利用され、2015年12月の月間利用者は2億3,400万人と巨大なサービスとなっています。 2位には「BuzzFeed」がランクインしました。「BuzzFeed」は今、最も注目されている新興ニュースサイトの一つであり、ソーシャルメディアで拡散されやすいコンテンツを独自で作成し、SNS経由で多くの読者を獲得していることが従来メディアとの違いとなっています。現在は世界中で月間2億人以上が利用し、ビデオ視聴回数は月間15億回を超えると言われており、今年はいよいよ日本でもサービスが本格的に開始されます。日本においても、どこまで利用者が拡大するのか注目しておくべきサービスであることは間違いありません。 3位も日本ではあまり知られていないサービスの「Wikia」がランクインしました。「Wikia」はコミュニティサイトで、ゲームや映画といったエンターテイメントに関する話題を中心に、現在約33万件ものコミュニティが存在していると言われています。また、このサイトはWikipediaの創設者により設立されていることでも有名です。そして4位には日本でも利用者が拡大している「Instagram」が、5位にはテクノロジーやガジェットを中心に取り扱うメディアである「Ziff Davis Tech Websites」がランクインしました。
次に、スマートフォンからの各サービスの利用動向を見てみます。スマートフォンでは1位が写真共有SNSの「Snapchat」となりました。共有した写真が10秒後に自動的に削除され履歴が残らないことが特徴で、プライバシー保護の面からも人気となっています。日本でも数年前から注目されているサービスですが、現在のところそこまで大きく利用者数を拡大している状況ではありません。しかし、「Snapchat」も日本市場においてどこまで利用者を拡大するのか2016年に注目しておくべきサービスであると思います。 2位には、これもあまり知られていないサービスである「Imgur」がランクインしました。「Imgur」は画像の共有サイトであり、今インターネット上で最も話題となっている画像を発見できるサービスをキャッチフレーズに展開しています。SNSやキュレーションメディアなどでもその画像が広く使われていることも特徴です。 3位以下はPC同様に、「Reditt」、「BuzzFeed」、「Wikia」がランクインしていますが、これらのいずれのサービスもスマートフォンからの利用者がPCからの利用者を上回っていました。
■効率的な情報取得は必然
以上、PC、スマートフォンともに日本ではあまり知られていないサービスが米国でよく利用されている状況が見えてきましたが、共通している点は、従来のようなマスメディアにより選別された情報ではなくユーザー同士が相互につながり、その中で選別された情報を取得できるサービスが主流であることだと思います。「Reddit」や「Imgur」ではいわゆる人気順で、「BuzzFeed」ではFacebookを中心としたSNSで拡散した情報を取得するといった行動が行われています。 インターネットが普及した環境で育ち、デジタルを駆使しているこの世代は、それだけ情報にも過剰に触れています。そういった状況の下では、いわゆるソーシャルフィルターを通すことで、自分の関心のある情報、自分により身近な情報を効率的に取得することの重要性が増したと見ることができます。ミレニアル世代が、これらのサービスを利用することは必然なのかもしれません。2016年、どのような新サービスがユーザーを惹きつけるのか予測することは難しいですが、この「ソーシャルフィルター」をうまくサービスに取り込むことが一つの鍵になるのではないかと思います。 今年も引き続き彼らの動向に注目が集まり、ミレニアル世代という言葉を聞く機会が増えていくと思います。ニールセンも日本の状況にとどまらず、様々なマーケットでのインターネットの利用動向を探り発信していきたいと思います。引き続き本メルマガをご愛顧くださると幸いです。
(ニールセン エグゼクティブアナリスト 中村 義哉)
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