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MEDIA WEEKLY 2021年9月28日~10月5日                     

INSIGHT #1

健康に配慮したライフスタイルを極めたいオーストラリアの消費者

Consumer Media View(CMV)担当マネージャー Akshara Risbud 
Ad Intel 担当マネージャー Rose Lepreiato

再度ロックダウンに突入するオーストラリアにおいて、消費者の意識は健康維持に向けられています。健康志向の高まりを加速しているのは、新型コロナウイルスだけではありません。自身や家族の健康維持は、オーストラリアの消費者の80%にとって最優先事項となっており、消費者の健康維持重視は5年前と比較すると11%上昇しています。また興味関心という点でも、食品や料理関連ウェブサイトでの滞在時間が2019年同時期比で16%増加しています。


消費者の健康意識が高まっている状況でキャンペーンに対する消費者の共感を最大化するためには、企業やブランドのマーケティング担当者は健康に配慮したライフスタイルを極めたいという消費者意識の主要因を理解する必要があります。具体的にはより健康的な食事、アルコール摂取の低下、運動の増加などが挙げられます。


食の健康志向
健康を最大限に高めるために、オーストラリアの消費者はより天然の食材や栄養価の高い食事を積極的に選んでいます。この傾向は、特に年齢の高い層において顕著です。
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健康意識が高まっている消費者へのアピール
世界が新型コロナウイルスとの戦いを続ける中、心と身体の健康やウェルビーイング(幸福)は、かつてないほどマーケティング担当者や消費者の注目を集めています。健康を重視する新たな消費者意識やニューノーマルへの対応は、多くのブランドや広告主にとって継続的な検討事項となります。

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2021年上半期、健康的なライフスタイルを志向する消費者に向けた健康食品、ダイエット食品や野菜の広告費は、前年同時期比 3倍となりました。見込み顧客に対し、適切なタイミングでエンゲージメントの構築を狙うブランドにとって、広告費用の増加は重要となります。Nielsen Consumer and Media View データによると、オーストラリアの消費者のほぼ3人に1人は、低脂肪ダイエットは今や生活様式であると回答しました。


フードデリバリー業界も、消費者に浸透しつつあります。Nielsen Ad Intel データを見ると、レストランのデリバリーサービス、健康食品や料理のデリバリーをくくったカテゴリーの広告支出は増加傾向にあります。レストランのデリバリーサービスでは Ubereats、Menulog、DoorDashやDeliverooの広告費が増えています。背景には新型コロナによる外食規制により、消費者はお気に入りのレストランで食事をすることができない状況があるからです。


広告費が増加しているもう1つのカテゴリーは Lite N Easy、Hello Fresh、Youfoodz、Marley Spoonなど健康食品のデリバリーサービスです。理由として、複数の要因が挙げられます。まずはリモートワークの増加により、家庭外での食品や飲料の消費が減少したこと、次に自宅で献立をし、調理をするようになると、健康的な料理に時間をかけずに調理できるようになり、消費者は新たなレシピを欲するようになっていることが挙げられます。


外食規制は今後緩和されることが予想されますが、レストランが提供するメニューのデリバリー、自宅で調理する料理のバラエティを増やす、さらには自宅で家庭料理のレシピを再発見するなど、消費者にとっては食に関する新たな選択肢が増えています。

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意識の高いアルコール飲料の摂取
消費者による自然食品や天然食材へのシフトは、アルコール飲料の選択にも反映されています。オーストラリア在住の18歳以上の消費者の52%はアルコール飲料の摂取量が減少したと回答している一方で、引き続きアルコール飲料を摂取している層はスピリッツ(蒸留酒全般)を摂取しており、天然の原料を使った選択肢を求めています。


ビールの摂取量はやや減少、対してワインの摂取量は安定しています。スピリッツの摂取は増加しており、34%が過去3か月に何らかのスピリッツを摂取していました。


オーストラリア中のブランドは、この新たな消費者セグメントに対応するべく、ノンアルコール飲料の開発を急いでいます。健康志向の高まりを受け、スピリッツを好む消費者は天然の原料で作られた商品を選ぶ傾向にあります。バリューに加え、これら天然志向消費者の検討重視ポイントは以下の通りです。

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スマートウォッチ、フィットネストラッカー利用の増加
ロックダウンにより人々は通常の生活を送ることが難しくなってはいる一方で、オーストラリアの消費者意識はフィットネスにも向けられています。調査対象者の66%は、可能な限り家から出てアクティブな生活を送りたいと回答しています。
人々の健康志向の高まりと共に、健康器具の所有も増加しています。オーストラリア人のほぼ3人に 1人(32%)は、現在スマートウォッチまたはフィットネストラッカーを所有しています。オーストラリア人の17% が今後1年以内にフィットネストラッカーまたはスマートウォッチの購入を予定しており、スマートウォッチや健康器具市場は拡大基調にあります。


デジタルフィットネスの台頭
オンラインの健康・フィットネスプログラムの台頭は、ロックダウン中に健康を維持したいという消費者のニーズを後押ししています。フィットネスジムやブートキャンプが利用できなくなった消費者にとって、自宅でのフィットネスが新たな日常となりました。消費者は対面式のフィットネスセッションから、エクササイズや栄養サポートを提供するオンラインアプリの利用へと移行しています。


Nielsen Ad Intelによる広告費推定によると、Noom、VShredや28 by Sam Wood などのフィットネス系サービスは、それぞれが提供するオンラインの健康フィットネスプログラムのプロモーションに多大な投資を行っています。これらのサービスはパーソナライズされたプログラムやウェアラブルテクノロジーを提供することで、利用者がプログラム受講期間中の食事や習慣を簡単にトラッキングできるようにしています。


マーケティング担当者にとっては、健康意識の高い消費者が最重視するコトやモノを強調して消費者のエンゲージメントを獲得し、キャンペーンへの共感を最大化する大きな可能性が存在します。特にベビーブーマー世代(1946-1966年生まれ)やプレブーマー世代(1946年より前に生まれた世代)に対しては、提供するサービスを信頼できる情報源として位置付けることが重要となります。




INSIGHT #2

ブランドがソーシャル・インフルエンサーをどのように活用しているか

多くのブランドが消費者とより深い、個人的な関係構築を目指しています。その一環として、ブランドは過去数年に比べ、SNSインフルエンサーとの関係構築を強化しています。メディア接触の細分化、さらにはYouTube、InstagramやTikTokなどの動画チャネルにおけるインフルエンサーのエンゲージメントの高さがその理由として挙げられます。


インフルエンサーマーケティングは新型コロナ禍の産物ではありませんが、過去 1年半に渡る社会状況によって、消費者は対人関係の重要性を再認識し、それに応えているのがソーシャルメディアです。ここでInstagramを例に挙げてみます。SNSインフルエンサーを計測するソリューション、Nielsen InfluenceScopeのデータによると、エンゲージメント率トップ10 インフルエンサーの全世界でのフォロワー数は合計1億1000万人で、これらインフルエンサーとの総インタラクションにおけるエンゲージメント率は28%になります。


ブランドは、インフルエンサーの膨大なフォロワー数、および複数のソーシャルプラットフォームにおける高いエンゲージメント率に着目しました。2021年 Nielsen Annual Marketing Reportを見ると、企業のマーケティング担当者は最も予算を強化する媒体チャネルとして、オンライン動画やポッドキャストを含むソーシャルメディアを挙げています。

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インフルエンサーマーケティングは、SNS市場のサブカテゴリーに過ぎませんが、ブランドにとっては長期的なコラボレーションを念頭にアプローチするべき領域です。コラボレーションの第1歩は、ブランドの個性や目的に合致するインフルエンサーを選定することですが、適切なインフルエンサーの選定はニールセンの InfluenceScope を利用する顧客の86%にとって課題となっています。マーケティングを行う上での多くのハードルと同様に、消費者行動やトレンドを把握し、インフルエンサーマーケティング領域でのパートナーシップ候補を特定するには、データが必要不可欠となります。


カルフォルニア州を本拠地とする化粧品ブランド、e.l.f Cosmeticsは Z世代消費者とのエンゲージメント獲得に向け、TikTokで展開する広告キャンペーンのオーガニック施策を拡大しています。Nielsen InfluenceScopeによると、同ブランドはZ世代に対する音楽の影響の理解に基づき、オリジナルソング「Eye、Lips、Face」を TikTok キャンペーンの要として制作、同キャンペーンは 6日間で10億ビューを獲得しました。オリジナルソングは、TikTokのオーガニックトレンドリストで1位を獲得した初のブランデッドコンテンツとなり、現時点で累計60億ビューを獲得、キャンペーン関連コンテンツとして500万本のUGC動画(一般の個人が作成する動画)が作成されています。

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3000万人超のフォロワーを抱えるインフルエンサーのJames Charlesは、同ブランドをプロモートしたトップインフルエンサーの 1人です。同氏の投稿のエンゲージメント率12.88%は、同規模のファンを持つインフルエンサーの平均エンゲージメント率のほぼ6倍に相当します。総インタラクション数をフォロワー数で割り、100 を掛けて算出されるエンゲージメント率は、特定のSNS プラットフォームに投稿されたコンテンツに対するフォロワーのインタラクション度合を把握するために活用されます。Charles 氏による同ブランドのプロモーションは、単体で1億6700万ビューを獲得しました。


ここで重要なポイントは、全てのインフルエンサーマーケティングキャンペーンは、必ずしもブランドから始まるとは限らないことです。事実、インフルエンサーの活動がキャンペーンの着想となるケースが頻繁に見受けられます。SNSインフルエンサーは、自らが好む商品やサービスをフォロワーに向けて積極的にプロモートしており、インフルエンサーのオーガニックな行動はブランドにとって大きな機会となります。例えば米国の服飾企業Gapは、同社のTikTokアカウント開設に先駆けて、同プラットフォームで活躍するインフルエンサーの影響力が拡大していることを把握しました。2020年後半から 2021年にかけて、様々なインフルエンサーが色違いのGapのスエットパーカーを着用した自らの動画をTikTokにアップロード、その後同プラットフォームで大人気のファッションインフルエンサー、Barbara Kristoffersenが 2000年代初頭以来、Gapが生産していない茶色のパーカーを着た動画をTikTok に投稿しました。

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#brownhoodieというハッシュタグが付いた同氏の投稿のエンゲージメント率は 188.35%に登り、中古販売サイトでは同色のパーカーの値段が300ドルにまで高騰、さらには #gaphoodieハッシュタグは650万ビューを獲得しました。この一連の TikTok 活動により、Gap は生産を中止していた茶色のパーカーの再販売を 2021年7月に開始しました。商品は瞬く間に大人気となり、同社のECサイトでは品切れ状態が続いています。ちなみにKristoffersenのフォロワー数27万3000人は、著名インフルエンサーとしては少ない部類に入ります。ブランドにとっての新たな小売機会は、数百万人のフォロワー数を誇るインフルエンサーに限定されないというポイントを覚えておく必要があります。


インフルエンサーマーケティングは、TikTokに限定されません。しかし、TikTokのエンゲージメント率は他のSNSを上回っており、これを後押ししているのは18歳から 24歳の主に若い女性です。他のキャンペーンの分析結果を見ても、若い女性層に最もリーチできるSNSはTikTokで、常に50%を越えるリーチを確保しています。

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YouTubeやTikTok などのチャネルは若い世代の圧倒的な支持を得ているため、ブランドがインフルエンサーマーケティングに魅力を感じるのは当然だと言えるでしょう。しかしインフルエンサーの影響は特定の年代に限定されておらず、拡大しています。


Nielsen Scarboroughによると、アメリカ人のほぼ5人に1人は「著名人による商品の推奨は、商品の購入に影響を及ぼす可能性がある」と感じています。ただし、影響力があるのは著名人だけではありません。アメリカ人の5人に2人以上(41.6%)は、購入を決定する時に周囲の意見を聞き、70%は購入を決定する前にオンラインのユーザー評価を参照すると回答しています。


ブランドが機会を得るためには、自らを消費者にとって信頼できる情報源として確立することが重要となります。そうすることによって、ブランドの情報を参照した消費者が、他者の購入に影響を及ぼすことが可能になるからです。再びNielsen Scarboroughデータを見ると、アメリカ人の83%は好きなブランドを買い続けるが、SNSでブランドとつながりたいと思っているのは22.6% に過ぎません。インフルエンサーマーケティングを実施することで、ブランドはこの60%のギャップを埋めることができます。


インサイト発掘手法
本記事に含まれるインサイトは、以下の情報源から発掘された。
• 2021 Nielsen Annual Marketing Report
• Nielsen Scarborough: 2020 リリース 1; 2021 リリース 1
• Nielsen Influence Scope






INDUSTRY NEWS

Digiday (マーケティング、メディアDX情報サイト)

米Googleの新たな広告パフォーマンス計測モデル、一部の広告主の賛同を得られず

Appleやその他ブラウザー上でオンライン利用者のインタラクションを示す手段が消えつつある中、Googleは利用者の最新クリックに基づく既存の広告パフォーマンス計測モデルから広告主を遠ざけようとしている。しかし広告主に対し、同社が提唱する解析モデルベースの広告パフォーマンス計測の優位性を証明、説得するのはかなり困難になるだろう。
同社は、利用者のプライバシー保護施策を大々的に掲げている。しかし Google の新広告パフォーマンス計測手法を有効活用するには、広告主は自らの顧客データを同社に対してさらに開放することが求められる。この動きについて、一部の顧客企業のデジタル広告担当役員は、プライバシー保護を後退させる行為だとコメントしている。


MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト)

2022年米国テレビ広告収益予測:従来のテレビ広告は横ばい、CTV 広告費は増加

米国のIPG Mediabrands の情報機関、Magnaの2022年テレビ広告収益予測では、米国における 2021年度の広告収益は対前年比 +23%、2022年度は+12%。ただし、従来のテレビプラットフォームの大方は、収益増加の恩恵を受けられそうにない。
米国最大の従来型テレビプラットフォームを構成する全国テレビネットワーク、ケーブルネットワークの 2021年度広告収益成長率の見通しは7.4%、金額換算では400億ドル。


AdWeek (広告業界誌)

ニールセン、全米テレビ視聴率計測サービスにセットトップボックスとスマートテレビデータを追加

単一のクロスプラットフォーム指標の実現を目指しているニールセンは、同社の全米テレビ視聴率計測サービスにビッグデータを追加する準備を進めている。
ニールセンは 9月20日、同社の顧客に対し、9月からセットトップボックスデータとスマートテレビ視聴者データの追跡と収集を開始したこと、そして自社パネルデータを収集したデータで補完すると発表した。Dish、DirecTV、VizioやRokuなどの企業から獲得するビッグデータから収集するインパクトデータは 2022年1月以降、同社の顧客に提供される。これにより、業界全体が拡張データセットから季節トレンドやその他変化を発見することが可能になる。



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