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MEDIA WEEKLY 2022年8月30日~2022年9月7日号                  



INSIGHT

ROI向上のための6つのヒント

細分化が進むメディア環境、そして台頭する大量の新プラットフォーム、チャネルやサービスにより、ROIのトラッキングはますます複雑化しています。ROIの測定、最適化、検証テクノロジーもかつてないほど豊富になっていますが、これらのテクノロジーのフルファネルROI測定能力を信頼していると回答したのは、全世界の企業のマーケティング担当者54%にしか過ぎません。 

消費者データソースが拡大し続ける中、マーケティング担当者は異種のデータセットからインサイトを発掘することに苦戦しています。多種多様なデータを上手く活用する一助として、データの力を利用してROIを向上するための6つのヒントをまとめました。



ヒント1 ターゲティングの精緻化

マーケティング担当者にとって、拡大するメディア環境に合わせたマーケティング予算の拡大することは困難です。だからこそ、パブリッシャーやプラットフォームをまたぐ広告キャンペーンのユニークリーチとフリークエンシーを把握することが重要になります。ニールセンデジタル広告視聴率 (DAR)によると、デジタル広告予算のほぼ40% は、広告主が意図しないオーディエンスに費やされています。ターゲティングの効率は、ROIパフォーマンスを判断する上で重要な指標となります。 

データドリブンマーケティングが主流となった今の時代、キャンペーン期間中における測定指標を活用してほぼリアルタイムでキャンペーンを最適化することが、より多くのターゲットオーディエンスにリーチし、ROIを向上させる鍵になります。ニールセンは最近、適切な広告を適切なオーディエンスに配信することでROIが向上することを検証する分析を行い、リーチをはじめとするオーディエンス指標がキャンペーンパフォーマンスの早期指標となることを確認しました。

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同分析を通じて、ターゲットオーディエンスへの配信広告数が少ないケース(上記グラフの左下のクラスター)では、支出1ドルに対する平均ROIは0.25ドル、対して配信広告数が多いケース(右上のクラスター)における支出1ドル当たりの平均ROIは2.60ドルでした。 

 

ヒント2 ブランド指標の測定と最大化

ブランド認知の構築は、全世界のマーケティング担当者の2022年最優先課題となっています。ニールセンのデータによると、認知や検討などのブランド指標の1ポイント増は、平均的に売上1% 増につながります。また、認知や検討スコアが上昇すれば、コンバージョン指向型マーケティングの効率が向上します。

しかし、多くのブランドは売上に対するメディアの影響は頻繁に測定するものの、ブランドに対するメディアの影響については見落としがちです。売上とブランド構築の両方に寄与するメディアチャネルはかなり稀であることから、これは危険な行為と言えます。事実、両方に寄与するケースは全体の36% に過ぎません。キャンペーンの潜在能力を最大限引き出すためには、マーケティング担当者はアッパーとローワーの、両方のファネルに効果の高いチャネルミックスを活用する必要があります。

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本記事に掲載されていないインサイトについては、Nielsen 2022 ROI Reportをダウンロードしてご覧ください。

インフレ圧力が高まる中、短期的な売上増を達成するためにインセンティブやプロモーションを実施することは魅力的に感じられます。ここで重要なポイントは、ROIは長期的なゲームであり、短期的な売上増と継続的なブランド構築を上手く両立させるメディアプランが良い結果を生み出すということです。 

マーケティングミックスモデリング (MMMs)を活用すれば、短期的な売上に貢献するチャネルミックスの最適化が図れます。その後、二次分析を実施して、認知やその他アッパーファネル指標を念頭にチャネルミックスを最適化します。このアプローチを採用することで、短期的な売上目標、さらにはブランド構築を通じた長期的な成長目標の両方に対応することが可能になります。



ヒント3 クリエイティブの力で売上を伸ばす

メディアはますます細分化され、消費者の目に触れる広告も膨大になる中、消費者の注目を集め、維持するためには、優れたクリエイティブが重要な役割を果たします。

Meta社の依頼で最近実施したニールセン調査では、様々な消費財カテゴリーの計41ブランドのMMMデータを分析しました。分析を通じて、質の高いクリエイティブを採用したキャンペーンは、質の劣るクリエイティブを使用したキャンペーンよりも35% 高い効果を達成したという結果が確認されました。

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ヒント4 新たなメディア=新たなエンゲージ手法

消費者が利用できる新しいメディアのプラットフォームやフォーマットが豊富になったことで、マーケティング担当者は潜在的な購入者とエンゲージする方法をかつてないほど多く持つようになりました。そして、新しいマーケティングチャネルが増えるたびに、どのフォーマットが最もROIを高めるかを特定するために、アトリビューションと最適化が重要になってきます。

新しいメディアやフォーマットに投資しているブランドは、大きなリターンを得ています。例えば、ニールセンとスナップ社の調査では、AR (拡張現実)広告は他のメディアよりもROIが大幅に高く、ニールセンとTikTokの調査では、TikTokキャンペーンで複数の広告フォーマットを実行したブランドは、個別の広告フォーマットのみに焦点を当てたブランドに比べ、広告費に対して12%も高いリターンを達成したことが分かっています。ニールセンの2022ROIレポートでは、ポッドキャスト広告、インフルエンサーマーケティング、ブランデッドコンテンツ広告もブランド指標を推進する上でインパクトがあることが示されています。

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ヒント5 地域間の費用を最適化し、ROIを向上させる

多くの場合、ブランドは、ROIが低ければ支出を減らすべきだと考えます。しかし、ブランドが突破口を開き、インパクトを与えるには、支出が少なすぎるという場合もあります。ニールセンの2022 ROI Reportを見ると、検証対象のメディアプランの半数は過少投資(中央値50%)と判定されました。マーケティング組織が責任をもって理想とする投資額を確保できれば、ROIは最大50% 向上する可能性があります。

パフォーマンスを地域別に分類すると、さらに多くの違いがあります。北米は、57%のプランが投資不足であるにもかかわらず、調査したどの地域よりもROIレベルが高く、ほとんどのブランドにとって最も大きな機会が存在する地域の1つとなっています。中南米もまた、半数以上の計画が投資不足であり、このギャップを埋めることでROIが大幅に向上するため、非常に大きな機会があります。

一方、ヨーロッパのブランドはメディアへの投資が最も少なく、ROIも全地域の中で最も低くなっています。これらのブランドは、ROIをより世界の他の地域のレベルに近づけるために、分析を通じてROIを拡大する機会を見い出し、他の地域のROIレベルに追いつく必要があります。

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ヒント6 複数のデートセットを活用して、より深いインサイトを発掘する 

最も効果が高く、ROIの最大化に貢献できるマーケティング戦術は、行動データとコンテキストデータの両方を活用することです。コンテキストデータを高品質で確定的な行動データで補完することで、マーケティング担当者はマーケティングキャンペーンの効果、効率を向上することが可能になります。ニールセンのアトリビューションノーム値を見ると、行動ターゲティングを通じてオーディエンスに配信されたインプレッションは、コンテキストターゲティングのみを通じて配信されたインプレッションよりも高いROIを生み出しています。

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マーケティングキャンペーンを無事スタートできれば仕事は終わり、という時代は去りました。消費者の購買意欲の急速な変化に後れをとらないために、ブランドはオーディエンス行動の変化に柔軟に対応する、適応型戦略を採用する必要があります。そして、多くのマーケティング課題と同様に、チャネルの効果測定とマーケティングキャンペーンの最適化は、適切なデータと、そのデータを実用的なインサイトに変えるのに役立つ適切なツールがあれば、より管理しやすくなります。






INDUSTRY NEWS

MediaPost (広告・メディア専門ニュース)

米Netflix、広告付き低価格プラン料金に関する報道を否定

MediaPostは8月29日、Netflixが導入を計画している広告付き低料金プランの月額料金は、伝えられるところによると7ドルから9ドルの間というBloombergのレポート内容を掲載。報じられた金額は「HBO Maxの広告付きプランの月額料金 9.99ドルよりも若干低く、Paramount+、Discovery+、Peacockの同プランの月額料金(4.99ドル)よりも高く設定されている」と解説。同日配信されたNew York Postの報道では、Netflixは同日配信された一連の報道内容を否定、同社の広報担当者は「当社の広告付き低料金プランについては、まだ計画の初期段階にあり、経営判断は一切行われていない。報道された内容は、あくまでも憶測に過ぎない」というコメントを発表した。 



eMarketer (メディア関連市場調査会社)

CTV広告費をめぐって競い合うTikTokとYouTube

eMarketerは8月26日、TikTokはコネクテッドテレビ(CTV)広告への進出強化を狙っており、同プラットフォームの短尺動画機能をもってYouTubeと競合し、CTV広告収益の増加を目指すとレポート。同プラットフォームの前に立ちはだかるYouTubeは既にCTVに進出しており、YouTube Shorts機能を導入してさらに存在感を高めようとしている。



AdExchanger (データドリブンマーケティング情報)

米におけるテレビ業界で再び脚光を浴びるパネル測定

AdExchangerに掲載された寄稿分析記事を執筆したAlyssa Boyleは「テレビ局は長年、ニールセンのパネルベースの測定アプローチに不満を抱いてきた。同社のピープルメーターの不備により、同社は昨年ローカルおよび全国テレビ視聴率のMRC認定を失った。その後、パネル測定はストリーミングとテレビ視聴測定の新たな手法として、脚光を浴びている。8月初旬、Video Advertising Bureau(VAB)は、ニールセンと同規模のクロスプラットフォーム測定用パネルの構築を発表したが、その翌日、ニールセンは初めて同社のストリーミングメーターパネルのサイズ(4万2000人)を公表した。このパネルサイズはVABや業界が予想していたパネル規模をはるかに上回るものだった。パネルベース計測の価値について、業界ではまだ統一見解に至っていないが、執筆者は「全数調査レベルの大規模データセットは一部の人口を反映しない可能性があるため、パネルはデータの偏りを軽減することができる」という見解を示している。執筆者は最後に「業界が夢中になっている様々な取引通貨が拡大していなければ、実行可能な新パネルソリューションを待つ方が賢明」と記事を締めくくっている。



MediaPost (広告・メディア専門ニュース)

米Netflix、広告サービスをCPM 65ドルで提供する見込み

MediaPostは9月2日、Netflixはメディアバイヤーに対し、同社の新広告サービスをCPM 65ドルという極めて高額な値段で提供する見込みとレポート、この価格でもメディアバイヤーはニールセンやComscoreなど、サードパーティの測定を利用できないとの見解を示した。第三者による測定が行われていないことは、メディアバイヤーにとってはやや憂慮すべきことだ。彼らは、あらゆるビジネスを行うための基準として第三者による測定を要求するだけでなく、メディアスケジュールの投資収益率に関しては、今日ではより多くを期待している。メディアバイヤーに対し、Netflixは「広告付き低料金プランを2か月後にスタートし、推定加入者数は50万人」と控えめな情報を提供している。




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