INSIGHT
55歳以上によるニュース視聴実態から得られる示唆
ニールセン VP セールスディレクター スー・トレンブルー
私たちが生きていく上では、その時々に世の中で起きている出来事を知ることが必要です。そしてそれこそが私たちの人間性そのものであると言えるでしょう。そのため、情報、特に一般的に「ニュース」と呼ばれるものにアクセスし、消費する方法が無数にあります。ソーシャルメディアが得意とするニュースや情報の拡散、そして大型スクリーンや個人所有のデバイスなどを介した、網の目のように複雑に絡み合ったテレビの視聴方法に至るまで、我々生活者は時間や場所を問わずニュースを視聴することができます。
テレビ視聴全体を俯瞰すると、ニュースは依然として最も視聴されているカテゴリーです。ニュースカテゴリーを詳しく見ると、ニュースは25歳から34歳が最も視聴するカテゴリーで、視聴シェアは11%、35歳から54歳の視聴シェアはさらに大きく15%¹ です。しかし最もニュースを視聴するのは55歳から64歳で、この年代の視聴シェアは16%2 です。55歳から64歳のニュース視聴に対する熱意は、特筆に値します。この年代のニュースに対するロイヤルティは評価されるべきでしょう。
この年齢の高い成人層は最もニュースを視聴するだけではなく、インプレッションに対しても大きく貢献しています。55歳から64歳、25歳から54歳の2つの年齢層を合計すると、地上波テレビ放送、ケーブル放送、All-Other-Tuning(その他のソースAOT3)、非従来型視聴ソース(non-HUT4)を含む全視聴ソースの総インプレッション数は2022年4月度5、56.5% 増加していました(前年同時期でも、54.9% という大きな増加が確認されています)。
ニュースの視聴方法も進化し続けています。Non-HUTソースでの世帯視聴は対前年比+8%、増加を大きく牽引しているのは25歳から34歳で、この年齢層のnon-HUTソースでの視聴は10% 上昇していいます。Non-HUTソースへの移行が最も進んでいないのは、ニュース好きな55歳から64歳(6%6)です。この年齢層は最も資産を保有しており、若い世代よりも可処分所得が高いことを覚えておきましょう。参考として、55-64歳の購買力に関する筆者の寄稿記事をご覧いただければ幸いです。
ブランドロイヤルティについて、一般的な認識では、ブランドに対する好意やイメージは若い頃に決定づけられるため、多くのブランドは年齢の若い層の取り込みにやっきになっています。しかし複数の最新調査結果を見ると、55~64歳は新しいブランドを試すことに前向きであることが示されています。ブランド購入の増分と連続購入の合計を見ると7、55~64歳のブランド購入のリピート率は、他の若い層とほとんど差がありません。同指標のスコアは全年齢層で下降傾向にあることから、消費者は同一カテゴリーの新たなブランドを試す意向があります8。
ブランドロイヤルティが最も重視される自動車カテゴリーにおいて、55歳から64歳が複数のブランドの自動車を所有している可能性は若い年齢層より高く、保有車種も高級車、ラグジュアリーなど、複数のブランドを所有する傾向が強いことがわかります9。
ニュースの今後を見据えて計画を策定する、そしてニュースを視聴するオーディエンスから利益を得る方法を検討する上で、25歳から64歳という年齢層は、安定と利益をもたらす存在であることを示しています。情報を得る新たな手段を模索、発見するという行為は、今後も続くでしょう。データによると、55歳から64歳は十分なリソースを保有していることから、これからも情報を得るためにニュースを視聴し、消費を続けると予測されます。
注釈
- ニールセン:NLTV(全国テレビ) ジャンル別視聴、2022年4月
- ニールセン:NLTV(全国テレビ) ジャンル別視聴、2022年4月
- AOT - All Other Tuning:コードやサウンドシグネチャーで識別できないコンテンツであるため、末端配信者(局コード)に紐づけられないもの。コンテンツが非エンコード/非マッチングと識別されるためには、コンテンツはテレビやセットトップボックスなど、HUT(households using television、テレビ利用世帯)デバイスで発生しなければならない。2022 Nielsen Local Reference Supplement
- Non-HUT:非HUTソース、すなわちメモリースティック、カメラ、ポータブル/ハンドヘルドゲーム機など、テレビの代替となる視聴手段。2022 Nielsen Local Reference Supplement.
- ニールセン:NPower:リアルタイム+同日、テレビ総利用に占める全日シェア(%)、2021年4月と2022年4月の比較
- ニールセン:NPower:リアルタイム+同日、全日インプレッション数、2022年4月
- Nielsen Catalina Solutions:ブランドロイヤルティ、2018年8月~2021年7月
- Nielsen Catalina Solutions:ブランドロイヤルティ、2018年8月~2021年7月
- Scarborough USA+, 2021 Release 2:米国在住の平均的な成人と比較して、1台以上の自動車を所有している確率
INDUSTRY NEWS
Forbes (経済誌)
全世界でのストリーミング利用、Netflixが引き続きトップ、Disney+が続く
Forbes は8月9日、ストリーミングサービス業界では、視聴者の注目を集めるための戦いが続いているとレポートした。加入者数は過去数か月で変化し、Netflixは過去10年で初めて減少傾向となった。対してDisney+は引き続き増加傾向にあり、HBO MaxとDiscovery+は合併の準備を進めている。全世界の加入者数ではNetflixが依然としてトップで、同社の収益報告書によると、6月時点の総加入者数は2億2067万人。Forbesは「新たに台頭するプラットフォームとの競争が激化する中、Netflixは有料加入者の減少を記録した唯一のストリーミングサービスとなった。3月以降、ほぼ100万人の加入者を失い、昨年12月との比較ではほぼ120万人減」と指摘。ニールセンが今年リリースした調査結果では、ストリーミング配信タイトル数は過去最高を記録、米国の視聴者の週当たりストリーミング視聴時間も増加している。
Ad Age (マーケティング・メディア業界誌)
米ニールセン、全国テレビパネルを4万2000世帯に拡大
マーケティング、メディア業界ニュースを提供するAd Ageは8月10日、「米国ニールセンは本日、同社の全国テレビパネルが4万1000強世帯から4万2000世帯に増加し、視聴者10万1000人をカバーすると声明を通じて発表した」とレポート。同パネルにはニールセンのストリーミングメーターパネル2万1000人が含まれているが、この数字は今まで公表されていなかった。同誌は、「今回ニールセンが発表した数字により、ニールセンの計測パネルは想像よりも大規模だという印象を与えるだろう。ニールセンは定期的に同社のメーターをベースとした推定ストリーミング番組視聴者数を発表してきたが、業界の一部ではパネルは3桁から4桁規模ではないかと疑う向きがあった」とコメント。
Variety (エンターテインメント業界誌)
ニールセン、米Amazonと「Thursday Night Football」測定契約を締結
Varietyは8月16日、ニールセンとAmazonはPrime Videoが秋の新シーズンから独占配信する「Thursday Night Football」を測定する3年契約を締結したと報道。測定値は、ニールセンが集計した全国テレビ番組のオーディエンスと比較される。この契約について、同誌は「米国の大手メディア企業はストリーミングが主流となった現在、ニールセンの取り組みを声高に非難し、広告主に対してニールセン以外のオーディエンス測定を検討するよう催促している」ことが背景にあると指摘。ニールセンはAmazonとの契約に関して「ストリーミングサービスがライブ配信する番組の測定値が、ニールセンの全国テレビオーディエンスに組み込まれる初の事例になる」とコメント。
Los Angeles Times (ロサンゼルス・タイムズ紙)
ニールセンの月間レポートGauge、ストリーミングが初めてテレビ放送とケーブル放送を上回ったと発表
Los Angeles Timesは8月18日、米国におけるテレビ視聴習慣の「月間スナップショット」を提供するニールセンの「The Gauge」によると、7月度のストリーミング視聴者数が初めてケーブル放送視聴者数を上回り、従来の有料テレビ放送からDTCサービスへと移行するエンターテインメント業界にとって、象徴的なマイルストーンを達成したと報道した。同レポートでは先月、ストリーミングは月間総テレビ利用の34.8% を占め、ケーブル放送は34.4%、テレビ放送は21.6%。同紙は「ニールセンの集計によると、ストリーミングはテレビ放送を既に抜いたことが確認されているが、テレビ放送とケーブル放送の両方を上回ったのは今回が初めて」とコメント。
Next TV(8月18日)は「リニアテレビ視聴の落ち込みを主導しているのはミレニアルやZ世代など、若い年代。35歳未満のミレニアル世代と35歳以上の世帯のリニアテレビ視聴を比較すると、ミレニアル世代の週当たり視聴時間は25% 少ない」と指摘。 TV Technology(8月18日)は「同レポートを見ると、7月度のケーブル視聴は対前月比-2%、シェアは-0.7ポイント、対前年比では-8.9%、シェアは-3.3ポイント。最も落ち込みが激しいスポーツ番組視聴は対前月比-15.4%、夏季オリンピックが開幕した昨年同月比では-34%」とレポート。Deadline(8月18日)も7月度の落ち込みについて「最も影響を及ぼしたのは、6月にTNTとESPNに大きな数字をもたらしたNBAプレーオフの終了。また、2021年7月に開幕した東京オリンピックも、前年同月のケーブル視聴者増に貢献していた」と解説。

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