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MEDIA WEEKLY 2022年7月26日~2022年8月3日号                  



INSIGHT

ROIにブレーキをかけるのは、マーケティング担当者の「小心」

ニールセン 戦略アカウント担当VP イムラン・ハラーニ

2022年度予算では、全世界の企業のマーケティング担当者は全てのメディアチャネルに対し、支出の増加を計画しています中でもSNS、動画やディスプレイ広告など、デジタルチャネルの一部を重視する傾向が見られます。

マーケティング担当者は、自らが管理する10数億ドルというメディア支出が自社ブランド認知の向上、さらには新規顧客の獲得に貢献することを証明しなければなりません。マーケティングテクノロジーを駆使すれば、予算を投下した施策を通じて獲得したエンゲージメントに対するインサイトを得ることはできますが、最高の結果を得るための支出額の適切性については、インサイトを得られるとは限りません。

オーディエンスは新たに台頭するメディアチャネルに飛びつく傾向にあることから、企業のマーケティング担当者はメディア支出を増やし、さらにはより幅広いチャネルに予算を配分します。このこと自体は、驚きに値しません。しかし、フルファネルの効果について考えるとき、マーケティング担当者は、チャネルへのエンゲージメントの増加や滞在時間の増加といった指標と、オーディエンスがコンテンツ接触後のオーディエンス行動を把握することが可能な測定とを組み合わせる必要があります。

チャネルレベルで最も効果的な支出をより具体的に把握するために、ニールセンは先頃、クロスチャネルのメディアプランに対する綿密な分析を実施しました。分析を通じて、対象となったメディアプランにおけるメディアチャネル投資額の半数は、効果を発揮するには過小であることが判明しました。企業のマーケティング部門が理想とする、最適化された支出額にコミットすることができれば、リターンは最大50% 増える可能性があります。

この前提を、メディアチャネルの予算配分というレンズを通して見てみましょう(詳細はニールセンの2022 Annual Marketing Reportを参照)。チャネル別では、マーケティング担当者が最も支出増を計画していると回答(53%)したのはSNSです。ブランドや広告代理店からの具体的な支出額の情報がないため、実際の金額でこの議論を組み立てることは困難です。しかし、メディアプランの内容が分かれば、支出の効果を評価することはできます。

意外にも、評価対象となったプランの43%は、SNSに十分な予算を配分できていませんでした。先に述べたように、SNSは企業のマーケティング担当者が最も予算を割り当てたいと思っているチャネルです。事実、SNSに対する投資不足の中央値は58%で、マーケティング担当者が支出を最適化すれば、ROIの中央値は44%向上します。

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ニールセンの分析によると、最適化されたROIは、最適化された支出額によって決まります。ROIが目標に達していない時、マーケティング担当者は直感的に支出削減を検討しがちですが、これはやるべきことの反対となる可能性があります。この場合、「お金を稼ぐためにお金を使う」という前提は正しいと言えます。最高のROIという結果を出すには、ブランドやその広告代理店はチャネル別に必要となる支出額を見極め、ブレークスルーを達成する必要があります。

具体的な例を挙げて説明します。人気のあるスポーツ番組の放送中、新発売のスナック食品の広告に2回から3回接触するオーディエンスは、同じスポーツイベントで競合、または類似商品の様々な広告に接触する可能性があります。スナック食品は競争が激しいカテゴリーのため、新規参入するブランドが視聴者の認知を獲得するためには、確立されたブランドよりも多く広告を打つ必要があります。ブレークスルーを達成するために最適な支出額を見極めることは、オーディエンスに対するブレークスルー、さらにはリターンの最大化を狙う上で欠かせません。

最適な支出額の閾値を明らかにするため、ニールセンは最近、ROI分析を実施しました。その結果、ブランドが競争力を維持するには、収益の1% から9% に相当する支出の確保が必要という結論に達しました。1%から9%という幅におけるスイートスポットはケースバイケースですが、より高いROIを目指すのであれば、より注意を払うべきでしょう。

企業やブランドが策定したメディアプランの大半は、従来のテレビに集中しています。オーディエンスのリアルタイムテレビ視聴時間は、コネクテッドテレビ(CTV)の視聴時間の2倍であることを考慮すると、テレビに予算を集中させるのは妥当でしょう。しかしニールセンのプレディクティブROI調査によると、調査対象となったメディアプランの31% は、テレビ支出額が不足していました。過小支出の中央値は41%で、ブランドやその広告代理店がテレビに割り当てられた予算を上方修正すれば、ROIは最大53% 向上します。

メディア予算を策定するブランドや企業は、ROIを含む多くの要因を考慮してプランニングを進めます。キャンペーン効果を高めたいのであれば、適切な予算確保は必要不可欠となります。世界を見渡しても、多くのブランドや広告代理店は、キャンペーン効果を可能な限り獲得できていません。ニールセンの調査によれば、メディアプランの半数(50%)は、達成可能なROIの50%しか得られていないからです。

詳細インサイトについては、ニールセンの 2022 ROI Reportをダウンロードしてご覧ください。






INDUSTRY NEWS

MediaPost (広告・メディア専門ニュースサイト)

ニールセン、YouTubeに4スクリーン広告の非重複測定を導入

広告・メディア専門ニュースを配信する MediaPost は7月25日、ニールセンによるPC、モバイル、コネクテッドテレビ(CTV)とテレビを網羅するYouTube向けクロスプラットフォーム測定の拡大というニュースをレポートした。ニールセンは測定範囲を拡大した、4スクリーン広告非重複測定を発表、同手法は重複オーディエンスを排除することで、デジタル配信されるYouTubeとリニアテレビのオーディエンスに対する非重複リーチをより正確に比較、測定するために開発された。これにより、ニールセンのTotal Ad Ratings(トータル広告視聴率)製品のPC、モバイル、リニアテレビ重複排除機能にコネクテッドテレビが追加される。これは2023年初頭にリリースが計画されている、Nielsen ONEプラットフォームが提供する集中型メディア計測機能の実現に向けた準備とMediaPostは報じている。



New York Times (ニューヨーク・タイムズ紙)

ストリーミングの黄金期に終焉の兆し

New York Times が7月20日に配信した寄稿記事にて、Shira Ovideは「我々生活者がソファーに寝ころび、Netflixにアクセスするという習慣的な行動は続いているが、ストリーミングエンターテインメントの黄金期は終焉を迎えるかもしれない。過去10年間、Netflix、Disneyやその他ストリーミングサービス企業は、顧客を獲得するために自らの資金を浪費し続けたが、多くの場合利益を出せずにいた。ストリーミングの未来がまだ明るかった頃、生活者はストリーミングがもたらすエンターテインメントによって大いに楽しませてもらったが、現在ストリーミング業界は自らの将来に懐疑的な目を向けており、これは残念なことだ。未来は誰にも分からないため、ストリーミングの悲観的な未来は杞憂に終わるかもしれない。しかしながら、長期的な成長を想定していたストリーミングサービス企業は今や、自らの成長ビジョンが間違いであったことを痛感しているだろう。時代が変わったことを実感せざるを得ない」という見解を発表した。



AP (AP通信)

米NetflixとDisney、広告付きサービスを計画

AP は8月1日、NetflixとDisneyが他社に追随する形で、広告付きサービスを利用者に提供する計画を進めているとレポート。この動きについて、APは「より多くの顧客を誘引し、ストリーミング市場で激化する競争を勝ち抜くための手段」と報じている。NetflixとDisneyの広告付きサービスで配信される広告数は未定だが、利用体験の妨げにならないよう、広告数は限定される見込み。両社の広告付きサービスは、今後数か月以内に導入される予定。



MediaPost (広告・メディア専門ニュースサイト)

広告付き子供向けCTVを活用できずにいる米の大手ブランド

MediaPost は8月1日、小さな子供を持つミレニアル世代の親にリーチしたい多くの広告主は、広告付き子供向けコネクテッドテレビというコスト効果の高い手法を活用できていないと報じた。若い親のリニアテレビ離れが進み、Nickelodeonのような有料ケーブル放送のオーディエンスが縮小する中、大手ブランドがテレビを通じて若い家族にリーチする機会は減少している。業界アナリストで広告・メディア関連アナリストグループ TVREVの共同創始者、Alan Wolkは自らの分析を通じて、「広告主は数十億ドル規模の予算をリニアテレビ以外に投下する必要がある」とコメント。業界誌Varietyが運営するVariety Intelligence Platformのレポートによると2022年7月時点でテレビ、そしてYouTubeなどのデジタルプラットフォームで視聴可能だったシリーズコンテンツを配信する子供向けエンターテインメントチャンネルは現在82あり、(Pluto TVで配信されていた)子供向け映画を専門とするチャンネルも1つ存在する。



MediaPost (広告・メディア専門ニュースサイト)

米Google、プログラマティック広告費の透明性を高めるツールを発表

MediaPost は7月27日、GoogleによるConfirming Gross Revenueプログラム発表というニュースをレポート。同プログラムは「広告主とパブリッシャーに対し、Ads Managerで行われる広告枠の取引において目に見えない費用が発生していないことを確認できるようにする」ことを目的とし、広告主が支払う金額を追跡することで、企業のマーケティング担当者が予算使用の状況を把握できるようにする。Googleのアメリカ大陸担当社長兼グローバルパートナー、Allan Thygesenは「業界内の一部の推定によると、広告主の予算の平均15% は不明な費用と言われている。これに対する私の最大の懸念の1つは、デジタル広告に対するマーケティング担当者の信頼を失うこと」とブログでコメント。


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