MW_new title.png

MEDIA WEEKLY 2022年7月12日~2022年7月19日号                 



INSIGHT

「収益を出すためには相応の投資が必要」が真実である理由

広告主にとって、広告活動は結果を求められる「コミットメント」であり、往々にして多額の費用が必要となります。多くのブランドにとって、ブランド認知の向上は来年度の優先課題となっているため、投資に対する有形のリターンを軽視するマーケティング担当者など、地球上には存在しないでしょう。ブランドや企業がリターンを得られないと判断した時、投資を控えるという行為は珍しいことではありません。しかしながら、これは概して良い戦略とは言えません。 

得られるリターンが少ないことを理由に支出を抑制することは論理的な判断です。プラスの成果が明らかに得られない場合、支出を維持、または増やす理由は見当たりません。しかし、リターンが少ない理由は不十分な投資額にある場合もあります。事実、最高のリターンを得られる支出額の閾値は存在します。投資額が閾値に達していなければ、期待を下回るリターンしか得られません。リターンが得られないからという理由だけで投資を抑制すると、問題はさらに悪化します。

十分な広告費用を投下しなければ、期待するリターンは得られない

ニールセンが最近実施した、様々なクロスチャネルメディアプランに対するディープダイブ調査によると、計画された投資が最大のリターンを得るには不十分だったブランドや企業は、調査対象の半数に上りました。金額を見ても、これら半数のブランド・企業の投資額は、最高の結果を得るために必要な支出額の50%でしかありませんでした。企業のマーケティング担当者が理想とする投資額にコミットし、「投資を増やしてリターンを増やす」という考え方でメディア計画を策定すれば、ROIは最大50% 向上します。

最大化されたROIは支出レベルによって異なることから、マーケティング担当者による最適な支出額の見極めが重要となります。ROIを最大化するためには、ブランドはブレークスルーに必要な支出レベルを具体的に把握する必要があります。

例を挙げて説明します。最近ニールセンが実施した分析によると、ブランドの広告支出額が「過少」の場合、ほとんどのオーディエンス(87%)に対する広告露出頻度(フルークエンシー)は2回以下で、同オーディエンスは広告の総インプレッションの68%に相当しました。広告によって得られた総インプレッションのほぼ7割は、効果が薄まっていた可能性があることが示唆されました。

同分析で中程度の広告支出額を投下した別のブランドを見ると、広告オーディエンスの約40% に対する広告露出頻度は最低3回、露出頻度が週当たり8回以上となったのは僅か8%だったことから、広告の無駄が懸念されます。広告支出額が大きいケースでは、広告の総インプレッション数の75%は、広告に8回以上接触したオーディエンスによるものでした。しかしこのケースにおいても、32%のキャンペーンオーディエンスの広告接触回数は1回から2回でした。

MW20220713_001.png

具体的な事例の分析に加え、ニールセンはブランドの広告支出不足及び支出不足が見受けられるメディアを世界規模で把握する試みを実施しました。ニールセンのROI分析を通じて以下の3つの質問を設定し、支出額とROIの把握、さらには機会損失の可能性を探りました。

  • 競争力を維持するために必要な支出額
  • 必要となる支出額の地域差
  • 計画された支出レベルと各メディアチャネルの最適支出レベルの比較

ニールセンの分析によると、平均的なブランドは収益の3.8%を広告活動に投資します。ブランドが市場で競争力を維持するためには、収益の1%から9%を広告活動に投資する必要があるというのがニールセンの見解です。同分析によると、大半のブランドは収益の1.4%から9.2%を広告活動に費やしており、内訳は1/4のブランドが3.8% 未満、1/4のブランドが3.8% 以上でした。

MW20220713_002.png

市場に新規参入するブランドが競争力を高めるためには、既に市場で確立されたブランドよりも多くの広告活動費を投下する必要があります。対して確立されたブランドが競争力を保つためには、広告活動費は少なくて済みます。

支出とROIの相関関係を考慮すると、リターンの最大化を追求する広告主と広告代理店にとって、モデリングは極めて重要となります。もちろん、支出は多すぎても少なすぎてもいけませんが、より問題視されるのは支出不足です。

様々な事業規模の顧客がニールセンに提供したメディアプランの分析を通じて、個別のメディアチャネルに対する支出の25%は、ROIを最大化するためには多すぎることが明らかになりました。この25%のケースにおいては、実際の支出額は最適化された支出額よりも32% 多くなっていました。支出を削減すれば個別チャネルのROIは改善しますが、それでも4% の改善しか見込めません。単純に支出を削減すれば広告による販売量が減り、結果として販売量が大幅に減少しかねません。

このようにただ予算を削減しても、問題は解決されません。ROIの最大化を達成したいブランドは、メディアミックスを最適化する必要があります。適切なバランスを見つけることで、リーチ、フリークエンシー、効果を念頭にメディア予算を適切に配分することが可能になります。例を挙げると、ある自動車メーカーは最近、メディア配分を最適化することでリーチを26% 向上、インプレッション数も39%以上増加することに成功しました。このメーカーはリニアテレビ、デジタル、CTV(コネクテッドテレビ)の予算配分を減少、減少分をラジオに配分することで、総予算を維持しながら目標を達成しました。 

より問題視されるのは支出不足と述べましたが、ニールセンの分析を通じて、分析対象のブランドは平均で52%支出が足りないことが明らかになりました。多くのブランドにとって、52% というギャップは1回のプランニングサイクルで対処できない可能性が高いでしょう。しかし、ニールセンの予測では、対処できた場合、ROIは50.3% 改善します。

支出不足は、全世界で頻繁に見受けられる現象です。ほとんどのブランドは広告予算の大半をテレビに配分していますが、ROIを最大化するためには配分比率が不適切なケースが散見されます。テレビ以外のメディアに目を向けると、ニールセンが分析したメディアプランの半分以上において、ディスプレイ広告とデジタル動画に対する過小投資が見受けられました。

MW20220713_003.jpg

広告主が広告代理店と共にメディア予算を検討する際、ROIは計画上考慮される複数要因の1つでしかありません。しかし、予算こそがキャンペーン効果の原動力となります。今現在、全世界のメディア投資の半数が過少投資となっています。広告主は投資レベルの最適化を通じて、ROI改善の機会を得られるようになります。

詳細インサイトについては、ニールセンの最新ROIレポートをダウンロードしてご覧ください。






INDUSTRY NEWS

The Drum (UK) (マーケティング、広告、SNS最新ニュース)

メディアプランの半数は、ROI最大化に必要なメディア費用不足

英国のマーケティング・広告の最新ニュースを発信する The Drum (UK) は7月11日、ニールセン初となるROIレポートの内容を取り上げた。ROIの低下に直面するブランドや企業は支出を抑制しがちだが、ニールセンの同レポートは「メディア支出を増加することで、目立ちと収益を確保できる」という結論に達している。同社は顧客のメディアプランに加え、ROIレポート15万本を分析、「過小支出と比べると、過剰支出はさほど問題視されない」。同社はまた、デジタル動画とディスプレイ広告は「ROIに対して最も投資が少ないメディアチャネル」とし、その根拠としてデジタル動画のメディアプランの66%、ディスプレイ広告に対するメディアプランの60% は過少投資と指摘している。



Videonet (テレビ専門戦略インサイト、分析、ニュース提供サイト)

米Nielsen Sports調査データ:米におけるリニアテレビ広告収益の30% 超を占めるライブスポーツ番組

米国のテレビ専門ニュースを配信する Videonet は7月11日、Nielsen Sports の調査結果に関する記事を発表した。同調査によると、米国におけるリニアテレビ広告収益の31% はライブスポーツ番組によるもの。しかしながら、2020年第2四半期(4-6月期)から2021年同四半期までの期間、米国のリニアテレビ総視聴時間に占めるライブスポーツ番組の視聴時間は僅か8%だった。スポーツコンテンツは、米国の対前月比+22%のテレビ視聴増を牽引したが、スポーツ番組数は実際に放送された総番組数の2.7%でしかなかった。このような調査結果から、ニールセンはZ世代のオーディエンスのエンゲージメントを獲得できれば、全世界のZ世代のスポーツファン層は今後1年半の間、25.2%から27%に増加すると予測している。



Quad-City (IA) Times (米アイオワ州朝刊)

米国における多くのテレビ視聴世帯、ストリーミングサービス数利用減の動き

米国のアイオワ州ダベンポートを拠点とする朝刊 Quad-City (IA) Times は7月16日、米国では2022年6月、過去41年で最高となったインフレ率が記録されたことを受け、多くの世帯は生活費の節約を始めており、その手段としてストリーミングサービス数の利用が減少していると報道。米国のHDTVアンテナプロバイダーMohuが2021年に実施した調査によると、米国在住の生活者の44%は料金の値上げとコンテンツ不足を理由に、「現在加入しているテレビストリーミングサブスクリプションを今後、1つ以上解約しようと思っている」と回答。また同紙はニールセンが2021年に実施した調査にも触れ、「従来のテレビ視聴者数は未だに多いものの、ストリーミング視聴は急速に拡大している」というファインディングを引用している。



Adweek (広告業界誌)

米Netflix、広告業界とは縁遠かったMicrosoftとの提携を発表

米国の広告業界誌 Adweek は7月15日、NetflixとMicrosoftの提携に関する記事を配信した。Microsoftは今後、ストリーミングサービス大手Netflixの「グローバルアドテクノロジーと販売パートナー」となるが、アドテクは長年、Microsoft以外の大手ソフトウェア企業が支配してきたことから、Microsoft選定のニュースは広告業界に驚きを与えた。NetflixとMicrosoftの提携に関して、同誌は「コネクテッドテレビのアドテク領域において、Microsoftの競合他社はNetflixと競合するサービスと既に提携している」ことを挙げ、Microsoftの選定は道理にかなっているという見解を示した。Microsoftは過去数年、アドテク領域では競合他社に遅れをとっていたが、先月AT&Tから10億ドルでXandrを買収、今後ゲーム業界大手のActivision Blizzardとの合弁を予定している。今回のNetflixとの提携は、Microsoftがアドテクに関する支持表明を得たことを象徴している。



Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)

米国におけるストリーミングの成長を牽引する50歳以上の視聴者

The Wall Street Journal は7月13日、ニールセンのデータに基づく記事を配信した。ニールセンのデータによると、米国におけるストリーミング動画の成長を牽引するのは50歳以上の視聴者。同記事は、ニールセンのプロダクト戦略&ソートリーダーシップ担当SVP、Brian Fuhrerの「ストリーミングはアーリーアドプターとセカンドウェーブに完全に浸透し、最後に残された年配のオーディエンスに浸透し始めている」というコメントを引用。 ニールセンのデータによると2022年5月、50歳以上の視聴者によるストリーミング視聴時間は、月間総ストリーミング視聴時間の39% を占め、前年同月の35% から上昇した。また50歳から64歳のストリーミング視聴時間が、初めて35歳から49歳の同視聴時間を上回った。


bar.jpg