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MEDIA WEEKLY 2022年6月28日~2022年7月5日号                  



INSIGHT

拡大するメディア環境における広告キャンペーン最適化の重要性

昨今、ストリーミングがテレビ視聴態度に与える影響に関するニュースや調査が増えています。直近のニュースでは、米国在住オーディエンスの総テレビ視聴時間に占めるストリーミングの比率が今年4月、過去最高となる 30%に達しました。細分化が止まらないテレビ視聴は、広告主に重大な示唆を与えています。しかし多くの広告主は従来のリニアテレビに固執し続けており、新型コロナ感染拡大を理由に広告予算を縮小した2020年半ば以降、徐々にリニアテレビ広告費を増やし続けています。

ブームとしてのストリーミングはさておき、従来のリニアテレビには多くのメリットがあります。事実、オーディエンスは、コネクテッドデバイス経由で視聴する動画コンテンツに費やす時間の2倍以上をリアルタイムテレビに費やしています。このことから、テレビは依然としてブランド認知獲得に適したメディアだと言えます。そしてブランド認知の構築は、企業のマーケティング担当者にとって2023年度の最優先課題となっています。米国では昨年、広告主の広告予算のほぼ半分がリニアテレビに配分され、マーケティング担当者がいかにブランド認知構築を重要視しているかが伺えます。

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可能な限り幅広いオーディエンスにリーチすることも大事ですが、メディア数が限定されていた昔に比べ、現在マスリーチを最大化するためには、より綿密なプランニングと戦略が求められます。従来のテレビは引き続き多くの視聴者にリーチする手段となっていますが、Nielsen Scarboroughのデータによると、米国在住の成人の47% は、テレビ(1週間当たりのテレビとケーブル放送)を全く視聴していない、またはライトユーザーに該当します。ライトユーザーの平均テレビ視聴時間は、1日当たり2時間未満と定義しています。このデータが示す視聴時間の細分化は課題として捉えられますが、メディア利用の実態を詳細に把握することができれば、予算配分の見直しによるリターンの最適化が可能になります。

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消費者がテレビをより多く視聴することは、より多くの広告接触を意味します。しかし、米国在住の成人のほぼ30%の1日当たり平均テレビ視聴時間は2時間未満であることを踏まえると、テレビに大きく依存したリーチ、フリクエンシー戦略は問題となり、費用がかさんでしまいます。例えば全国規模のテレビ広告キャンペーンを3か月実施した場合、あまり広告に接触しないことが想定されるテレビのライトユーザーの共感を得ることは非常に難しくなります。ニールセンのメディアプランニングソリューション、Nielsen Media Impactを活用した最近の広告キャンペーンに関する調査では、ライトユーザーの広告接触回数は2回にも満たなかったことがわかっています。対してヘビーユーザーに対する広告露出は過剰となり、広告接触回数は25回に上っていました。単一メディアに大きく依存する広告キャンペーンでは、オーディエンスの広告接触回数を調整することが難しくなります。

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少数のメディアをミックスして、リーチとターゲティング目標を達成することは可能です。しかしオーディエンスのメディア視聴態度が細分化し、ストリーミング視聴時間が増加する現在、バランスの良いメディアミックスの重要性が高まっています。企業のマーケティング担当者の多くは、オーディエンスがより多くの時間を費やしているメディアに広告を掲載してエンゲージメントを獲得し、SNSやコネクテッドテレビ(CTV)など、新たに台頭しているデジタルメディアを注視しています。

Nielsen 2022 Annual Marketing Reportによると、北米のマーケティング担当者は2021年度総広告予算の半分以上をデジタルに投下、翌年もデジタル広告費の増加を計画しています。SNS広告費も61%の増加が予定されており、SNSはテレビやラジオといった従来の放送メディアに比べ、効果が高いと感じられています(SNS top-2-box (「非常に効果が高い」+「効果が高い」)57%、テレビ 同49%、ラジオ 同41%)。 

戦略を策定し、意思決定を行うマーケティング担当者にとって、データこそが最強の案内役となります。固定概念や経験に基づく思い込みは、必ずしも正しいとは限らないからです。それぞれのメディアが発揮するパフォーマンスをより詳細に理解するために、ニールセンは最近、Nielsen Media Impact を用いて、単一の自動車広告キャンペーン(期間1か月、キャンペーン費用500万ドル)の典型的なメディアプランに対し、総費用を固定した状態でメディアプランにラジオを加え、キャンペーン効果の違いを計測しました。ニールセンAd Intelによると、自動車メーカーは月間メディア費用の平均67% をテレビに投下し、デジタルには27% 投下しています。

調査目的で最適化されたキャンペーンにより、キャンペーンに接触した総ターゲットオーディエンス数は1900万人増加、これに伴いリーチは26% 拡大しました。

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利用するメディアへの効果的、かつ効率的な予算配分を重視するマーケティング担当者にとって、メディアプランの最適化は重要なトピックスです。メディアやデバイスのさらなる細分化により、メディアプラン最適化の重要性は高まり続けています。マーケティング担当者にとっての永遠の課題は、投資に対する実体のあるリターンを生み出すことです。これがマーケティング活動の本質です。しかし消費者が新たなプラットフォームやデバイスに飛びつき、接触時間の分散が進む現在、効果的なマーケティングプランはターゲットオーディエンス、接触時間、メッセージのフリ--クエンシーという視点で消費者を理解し、その理解にもとづいた内容であることが求められます。




INSIGHT 2

マーケティング活動におけるバランスの重要性

ニールセン 戦略メディアリサーチ プロダクト担当SVP Nichole Henderson

5月下旬、米国での枯渇を解消するために、7万ポンド(約31.7トン)の乳児用粉ミルクが米軍機によって欧州から米国に運び込まれました。

このニュースは、全国規模のサプライチェーン危機の憂慮すべき展開として捉えられます。サプライチェーン危機により、自動車や半導体、木材に至るまで、様々な業界が打撃を受けています。企業のマーケティング担当者にとっても、商品の配送遅延はローワーファネルマーケティングに影響を及ぼしていいます。供給の低下にも関わらずコンバージョンに特化した戦術を実行することは、消費者の信頼を失うというリスクにつながりかねなません。モノを求める消費者は、宣伝している商品を届けられないブランドを信用しなくなると思われるからです。

現在のサプライチェーン状況はいずれ落ち着くと思われますが、今回の危機は我々に大切な教訓を示しています。それは、長期的なブランディング施策に注力することは、短期的な売上の追求と同様に重要であることです。

不況期においては、誰もがすぐに収益を出すことに注力しがちになります。常識に反すると思われるかもしれませんが、今こそ、マーケティング担当者はアッパーファネルマーケティングに投資するべきでしょう。

南オーストラリア大学マーケティングスクール内のマーケティング研究所、Ehrenberg-Bass Instituteが長年提唱しているように、顧客獲得の最良の手段は認知(または「メンタルアベイラビリティ」)。消費者は、見たことも聞いたこともない商品を買うことはできないからです。オンラインで買い物をする人口が増加し、仮想店舗は近所の食料品店よりも多くの商品を取り扱っていることを考えると、競争は確実に激化しています。 

認知の重要性は言うまでもありません。あくまでも平均値ではありますが、ニールセンの調査によると認知や検討などのブランド指標の1ポイント増は、将来的な売上の1% 増につながります。

さらに米国における消費者傾向として、新たな商品を試したいという意欲が見受けられます。米国在住の消費者によるオンラインでの買い物の12.1% は、今までに購入したことのないブランドの商品です。今現在、商品が在庫切れの状態にあったとしても、マーケティング担当者はローワーファネル活動に少し手を加えることで、ブランド認知と検討を強化することができます。

例えば、ECサイト上の「今すぐ購入」(Buy Now)というCTAボタンを「入荷連絡リストに登録する」に変更することは、検討に値します。商品を求める顧客をブランドや企業のメールデータベースに追加すれば、商品の入荷後、マーケティング担当者は入荷連絡待ちの顧客に対し、自動的に案内を送付できます。またこれらの顧客に対するブランディングメッセージの配信、関連商品の案内送付を通じて、興味を喚起することも可能になります。 

長期的なブランディングに注力する場合でも、アッパーファネルとローワーファネルそれぞれにアプローチすることで、最終的には収益が生み出されます。そのため、ファネルの異なる層を対立するものとして扱うことは避けるべきです。

勿論、アッパーファネルとローワーファベルの両方のファネルの目標を効果的に達成するための戦略策定は、一筋縄ではいかない場合が多いでしょう。ブランドエクイティを構築するメディアは、必ずしも売上に直結するとは限らず、その逆もしかりです。企業のマーケティング担当者は両方の目標を設定することの影響を把握し、その上でフルファネル活動の適切なバランスを確保することが重要となります。

ブランドと売上を増加するための詳細インサイトについては、Nielsen's Full Funnel Hubにアクセスしてご覧ください。




INDUSTRY NEWS

Campaign (UK) (マーケティング・広告・メディア情報)

コンテンツ連動型広告の波及効果

マーケティング、広告、メディア情報を配信する英国のCampaign (UK) は6月27日、英国を拠点とするコンテンツ連動型広告企業Seedtagの英国担当マネージャー、Paul Thompsonによる寄稿記事を掲載した。同記事で、筆者は「消費者は自分にとって関心事ではない広告が配信されることやオーバーターゲティングにうんざりしている。特にサイト訪問から数か月経った後もウェブ上で追跡される「ハイパーターゲティング」は、大きなストレスとなっている。対してコンテンツ連動型広告は、オーディエンスのポジティブなエンゲージメントを獲得する機会となり、その結果コンバージョンの可能性も高くなり、注目も喚起することができる」と論旨を展開。また「Seedtagはニールセンと共同で、コンテンツ連動型広告の波及効果を検証するために調査を実施した。具体的には、コンテンツと強くエンゲージした消費者に対し、特定の商品カテゴリーやブランドが発信するメッセージの受容性、発信元の商品カテゴリーやブランドに対する好意度を探った結果、ターゲティングされずにコンテキストにエンゲージした消費者のカテゴリーに対する興味関心は、2.5倍という結果になった」と記している。



Variety (エンターテインメント業界誌)

米Netflix、広告付きプランの導入に向けNBCU、Googleと交渉

米国のエンターテインメント業界誌Varietyは6月24日、GoogleとNBCUniversalが広告付き低価格プランの導入を計画しているNetflixの広告枠の販売と広告配信を行うビジネスパートナーの最有力候補とレポートした。Netflixの広報担当者は「広告付きの低価格プランの導入についてはまだ計画の初期段階であり、意思決定は行われていない」とコメント。同社の共同CEOのTed Sarandosは「最終的に提供するプランは、初期段階の青写真とは異なる可能性がある。視聴者の皆さんには、テレビを凌ぐプランをお届けしたいと思っている」とコメント。



Adweek (広告業界誌)

米のThe Trade DeskとAWSが提携、Unified ID 2.0統合を目指す

米国の広告業界誌Adweek は6月22日、Amazon Web Services(AWS)がThe Trade Deskが開発、40社以上のパブリッシャーが支援するオープンソースの代替識別子Unified ID 2.0と提携すると報道。データドリブンマーケティング情報を発信するAdExchangerが同日に配信した内容によると、Unified ID 2.0は「ハッシュ化され、暗号化されたメールベースのIDで、サードパーティクッキーの後継を目指している」。しかしAWSとの統合は典型的なUID2統合、The Trade Desk(TTD)が他社と行っている閉作要素のある提携と異なり、インフラに依存する。AWSの狙いは、同社の顧客がAWS Marketplaceを通じてUID2をデプロイしやすくすることにある。AdExchangerは「広告主、パブリッシャーやテクノロジー企業はNitro Enclavesと呼ばれる機能を使い、AWS上で自らのUID2識別子を生成することができるようになる。同機能はAWS顧客に対し、権限を持たない第三者に個人データを露出することなく、保護された安全な環境でのデータ処理を可能にする」とレポート。



MediaPost (広告・メディア専門ニュースサイト)

CTVの「アップフロント販売」、35% 増の見込み

米国の広告・メディア専門ニュースを配信するMediaPost は6月28日、eMarketerの予測ではコネクテッドテレビ(CTV)の広告収益は2022年度、アップフロント販売により35% 増加して64億1000万ドルに達する見込みとレポート。2023年度はさらに35% 上昇して、広告収益は81億4000ドルに達することが予測されている。eMarketerによる推定には従来のテレビアップフロント、IAB NewFrontsやその他広告枠販売イベントに起因するCTV広告枠の予約販売全てが含まれる。2022-2023年シーズン、従来のテレビアップフロントで販売されたプライムタイム枠を含む広告売上は基本的に横ばいで、対前年比+0.9% (192億1000万ドル)、2023年にスタートするテレビシーズンの予測は対前年比+2.2% (196億3000万ドル)。


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