INSIGHT
コンテキストデータと行動データを組み合わせてオーディエンスターゲティングを向上
ブランドや企業のマーケティング担当者にとって、データの重要性はかつてないほどに高まっています。
デジタルチャネルに対する生活者の継続的で強い関与が深まるにつれ、適切なメッセージをターゲットとするオーディエンスに届けるには、生活者のより包括的な理解が必要となります。つまり、コンテキストデータのみに頼ることは、生活者の全容を見逃すことを意味します。現代のマーケティング担当者にとって、コンテキストデータ(ターゲットオーディエンスが見たコンテンツ)と行動データ(オンライン上での生活者の実際の行動)の組み合わせは、ターゲットの全容をより把握するより良い手段であり、結果としてより効果的なメッセージ発信が可能となります。
多くのブランドがデジタル広告予算、特に新たに台頭するデジタルチャネル広告予算の大幅増を計画するという流れにおいては、メッセージの重要性もさらに高まっています。Nielsen 2022 Annual Marketing Reportによると、全世界のマーケティング担当者の51%は来年度、OTT/CTV (コネクテッドテレビ)の予算増を計画しています。北米のみを見ると同数字は61%となり、これは昨年の動画ストリーミング広告予算の増加傾向と一致しています。さらに米国に目を向けると、米国在住の生活者は昨年、定額制および広告付ストリーミングプラットフォーム上で、ほぼ1500万年分のコンテンツをストリーミング視聴しました。
消費者の居る場所を突き止めてリーチするためには、マーケティング担当者は質の高いデータを活用して戦略を策定し、より多くのターゲットオーディエンスにリーチする必要があります。ニールセンの2022 Annual Marketing Reportのために調査を実施した全世界のマーケティング担当者にとって、オーディエンスターゲティングは最重要マーケティング戦術となっています。

調査対象となった全世界のマーケティング担当者の多く(69%)は、ターゲティング戦略を策定し、消費者へのリーチを達成する上で、ファーストパーティデータは欠かせないと感じています。オーディエンスデータの重要性は認識されているものの、マーケティング担当者の36%にとって、データからインサイトを発掘することは「難しい、または極めて難しい」と思われています。
消費者データソースが拡大し続けていることから、異なるデータセットから消費者インサイトを発掘するケースが増えています。このようなケースにおいては、マーケティング担当者がインサイト発掘を難しいと感じるのは当然でしょう。しかし山のようなデータから実用的なインサイトを発掘することができるマーケティング担当者は、多くの見返りを得ることができます。
ニールセンが実施した複数のマルチタッチアトリビューション(MTA)分析によると、最も効果の高いマーケティング戦術は行動データとコンテキストデータの両方を活用しており、結果として最も高いROIが生み出されています。ニールセンのデジタル広告視聴率(DAR)データを見ると、データカバレッジと品質が担保された、年齢と性別で定義されたターゲットデータであっても、PCとモバイルの両方で配信した広告の平均オンターゲット率は63%です。
マーケティング担当者がコンテキストデータを高品質で確定的な行動データで補完すれば、担当するキャンペーンの効果・効率の向上に加え、ターゲットのエンゲージメントを強化することも可能になります。また、オーディエンスデータに対するこの総合的なアプローチは、リードのアトリビューションと収益への影響に対する信頼性を高めることができます。
ニールセンは最近、分析を実施して適切な内容の広告を意図するターゲットオーディエンスに配信できれば、ROIが向上することを実証しました。結果、リーチやオンターゲット率などのオーディエンス指標はキャンペーンパフォーマンスの初期指標として有効であることが確認されました。

分析を通じて、ターゲットオーディエンスに少ない数の広告を配信した広告パートナー(上記図の左下のクラスター)の平均ROIは、広告費1ドル当たり25セント(0.25ドル)だったのに対し、より多くの広告をターゲットに配信した広告パートナー(右上のクラスター)の平均ROIは、1ドル当たり2.60ドルとなっていました。
スペインのBarceló Hotel Groupにとって、データはアトリビューションを理解する上で欠かせません。現在のメディア環境は、クッキーのない未来へと向かっているからです。ニールセンの Identity Sync を使用することで、同ホテルグループはコンバージョンの98%を実際のマーケティングタッチポイントに関連付けることができ、PPC(Pay Per Click)広告 の収益シェアは23% 増、ディスプレイ広告の収益シェアは 17% 増になりました。キャンペーンをほぼリアルタイムで効果的にモニタリングおよびテストすることで、同ホテルのマーケティング担当者は、チャネル全体にわたってターゲティング、費用、戦略を最適化することができました。
生活者にとってはメディア環境の細分化が進行していますが、マーケティング担当者の視点ではデータ環境の細分化も進行しています。より具体的なオーディエンスを狙うブランドにとって、データのギャップを埋めることは益々重要となっています。見込み顧客にリーチしたいマーケティング担当者は、コンテキストデータと行動データの組み合わせを活用して継続的にキャンペーンを強化し、効果や影響を最大化することが求められます。
インサイトの詳細は、2022 Annual Marketing Reportをダウンロードしてご覧ください。
INDUSTRY NEWS
MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト)
マーケティング担当者は消費者の欲求について誤った情報を持っている可能性がある
広告メディア専門ニュースを配信するMediaPostは5月16日、ニールセンが2022年3月に実施した調査についての記事を掲載した。同調査によると、家庭以外の場所に通勤して働いていた社会人の数は緩やかな回復傾向にあり、2020年4月の48%から2022年3月は86%に上昇。広告、マーケティング、アドテク業界向けに調査を提供するAdvertiser Perceptionsの調査では、企業のマーケティング担当者やメディアエージェンシー勤務の37%は自宅での勤務を継続、対してコロナ以前は通勤していた平均的なアメリカ人で現在も自宅勤務を続けているのは僅か14%。勤務形態に大きな差が見受けられる中、メディア専門職や広告主が配信するメッセージの影響を正しく把握できているか、疑問視されても仕方がないだろう。
Los Gatos (CA) Patch (米カリフォルニア州ローカルニュース)
米Netflix加入者減の理由は「料金改定」と「コンテンツの質の低下」
Los Gatos (CA) Patchは5月16日、2022年第1四半期(1-3月期)におけるNetflix加入者減の理由に注目、インターネット企業GetWindStreamが実施した調査結果をレポートした。同調査によると、大方の利用者の脱退理由は料金改定、または配信コンテンツの質の低下。調査対象者のほぼ40%は脱退理由として料金改定と回答、35% はコンテンツの質の低下を挙げた。約17%は「他のサービスでもっと良いコンテンツが視聴できる」と回答した。
TechCrunch (IT系スタートアップ、ウェブニュース配信ブログサイト)
米Google、利用者向けターゲット広告管理ツールを発表
TechCrunchは4月23日、EU (欧州連合)が「当地域で運用されるデジタルサービスに関するルールの大規模な変更に向けた仮協定を締結。地域内におけるECルールブック大改造の詳細を詰める作業は、深夜から早朝にかけて行われた」とレポート。欧州委員会が提唱してきた法案「Digital Service Act」(DSA、デジタルサービス法)への合意により、今後数週間かけて同法案の正式採用が行なわれ、今年の後半には法案化される見込み。DSAの内容は広範で、違法コンテンツや商品のより迅速な削除に向け、コンテンツモデレーションやガバナンス規則の統一化を目指す。DSA施行により、消費者保護やプライバシーに対する懸念を払しょくし、大手プラットフォーム企業に対してはアルゴリズムについての説明責任を負わせ、サービスの社会的責務をより厳しく追求する。
Adweek (広告・マーケティング業界誌)
米YouTube、新ブランドセーフティツールでリーチの拡大を目指す
Adweekは5月12日、独占ニュースとしてYouTubeが新ブランドセーフティツールを導入して、広告主のメディア買付を支援するとレポート。広告主は新ツールを利用して、Googleのその他サイトやアプリでブランドセーフティを一貫して強化することが可能となり、ブランドセーフティがリーチに与える影響を把握できるようになる。Adweekは記事で「Googleの新ツールは、MRCからコンテンツレベルのブランドセーフティ認定を2年連続で取得したタイミングで発表された」と指摘。今回のニュースを配信したGoogleのリリースによると、YouTubeは昨年、同認定を取得した初のデジタルプラットフォームとなり、今年に入っても唯一認定を受けたプラットフォームとなっている。
Nielsen
ニールセン最高データ責任者「ビッグデータは人ではなく、デバイスを反映」
ニールセンは5月18日、同社の最高データ・調査責任者 Mainak Mazumdarが執筆した記事を同社のウェブサイトに掲載した。同記事では、ビッグデータにのみ依存したオーディエンス測定戦略の欠陥が指摘されている。記事は「RPD(リターンパスデータ)とACR(コンテンツ自動認識)データは計測の幅を広げるという点で間違いなく価値があるが、ビッグデータは実在の「人」ではなく、デバイスを反映していることを留意するべきだ。そのためビッグデータのみでは人が方程式から外れたとき、数字は辻褄が合わなくなる。ビッグデータソースは測定に必須となる重要なインプットだが、測定ソースとしての信頼性は低い。消費者がより多様なデバイスやチャネルと関わるようになった現在、過度なエンゲージメントを示すデータは容易に識別することができるだろう。広告主は代替オーディエンスをベースとしたオーディエンスサイズをそのまま採用すると思われるが、この数字に基づいて広告を買い付けると、実在の「人」を反映していない数字に対して広告費を支払うことになる」という見解を示している。

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