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MEDIA WEEKLY 2022年3月29日~2022年4月13日号                 

INSIGHT

テレビの未来を担うストリーミング、課題は視聴者を圧倒するプラットフォームの氾濫

映画『CODA』(邦題『コーダ あいのうた』)は今年、米国アカデミー賞作品賞を受賞した初のストリーミングサービス事業者による製作映画という快挙を成し遂げました。動画ストリーミングはDVDの宅配レンタルの代替サービスとしてスタートしましたが、今ではアカデミー賞受賞を含め、次々と画期的な記録を打ち立てています。

同映画は昨年の8月からApple TV+で配信されていますが、アカデミー賞受賞で脚光を浴びた最近まで、Apple TV+の膨大な配信コンテンツラインアップに埋もれ、大々的にプロモーションされたコンテンツの陰に隠れていたように見受けられます。ニールセンの新State of Play レポートを見ると、今日の動画視聴者は従来のテレビ放送やストリーミングサービスを通じて、81万7000本以上の作品から好きなコンテンツを選ぶことができます。これは2019年末の64万6000本に対し、18%増加しています。

配信されているコンテンツの多くは従来のテレビ放送で放映されたものですが、ストリーミングサービス専用に制作されたコンテンツは増加傾向にあり、視聴者獲得に貢献しています。平均的な週において、米国在住の視聴者は平均ほぼ1700億分の動画コンテンツを視聴し、これは対前年比 で1430億分増加しています。

ストリーミング視聴時間の増加に加え、アメリカ在住の生活者はストリーミングサービスを非常に好んでいます。ニールセンが最近実施したストリーミングメディア消費者調査によると、ストリーミング視聴体験に対する否定的な意見が確認されたのは調査対象者の20人に1人の割合でした。さらには、調査対象者の93% は来年にかけて、現在加入している有料ストリーミングサービスを増やす予定がある、または現在加入しているサービスを変更する予定がないと回答しています。

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消費者行動の変化に対応するため、メディア企業はストリーミングファーストというアプローチを積極的に採用しています。サービス数も、視聴者の需要に合わせて拡大し続けています。動画ストリーミング配信プラットフォームの数が増加する中(現在のプラットフォーム数は推定200以上という説もある)、消費者は増殖するプラットフォーム数に圧倒され始めています。事実、視聴者の46%は「サービスが増え過ぎて、視聴したいコンテンツを探すことが大変になっている」と感じています。

ストリーミングサービスにログインした視聴者に対し、それぞれが好むコンテンツを探しやすくすることが鍵となります。米国在住視聴者の1日当たりのテレビ(リアルタイム、タイムシフト、CTV含む)平均視聴時間は4時間49分です。プラットフォームは視聴者をこの時間の中、自社プラットフォームにくぎ付けにしたいはずです。そのために各コンテンツの詳細情報を網羅するビデオディスクリプター(動画記述をコンテンツカタログに加えれば、コンテンツのストーリー展開や本質を具体的に伝達することができます。詳細情報を提供すれば、視聴者はその時の気分に合わせたコンテンツの検索、さらには新鮮味があり、利用者の個人的な嗜好や視聴履歴を反映したレコメンデーションを得ることが可能になります。

レコメンデーションやおすすめに加え、ビジュアルの有効活用により、ストリーミング配信プラットフォームはビジュアルを通じたコンテンツの検索・発見を実現できるのではないでしょうか。ストリーミングの世界では、動画カルーセルが「店頭」となります。訪問者は情報を閲覧するのではなく、視覚体験を求めてサービスにログインすることを踏まえ、パーソナライズされたイメージを活用すればプラットフォームのVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)を実施できます。プラットフォームが様々な視聴者にアピールするために複数のイメージを掲載すれば、動画カルーセルは顧客体験を向上するパーソナライズされた店頭と化すでしょう。

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消費者にとって、現在のストリーミング環境は発見の宝庫となっています。コンテンツの量も増加の一途を辿っています。ストリーミング環境の未来を左右する視聴者に対し、メディア業界はデータを活用して消費者のメディアジャーニーを支え、道に迷わないよう誘導することが重要となります。

その他インサイトについては、ニールセンのState of Play レポートをダウンロードしてご覧ください。




INDUSTRY NEWS

CMSWire (デジタル顧客体験情報サイト)

ファーストパーティデータ活用における類似視聴者モデルの構築

過去10年間、類似視聴者モデリングは、メディアツールキットの重要な一部として重宝されてきた。類似視聴者により、ブランドは最高のパフォーマンスを発揮する中心的な生活者を特定・分類した後、データやテクノロジーを利用してこれらの生活者と似通った個人を特定することで、視聴者数を拡大できるからだ。ここ数年においては、CCPA(米国 カリフォルニア州消費者プライバシー法)やGDPR(EU 一般データ保護規則)などの法律規制により、DMP(データマネジメントプラットフォーム)、サードパーティクッキーやその関連データが利用されなくなっている。


Streaming Media (オンライン動画ニュース・情報)

2022年 動画の収益化状況

新型コロナウイルスにより、全世界でストリーミング視聴へのシフトが加速化されたため、ストリーミング配信プラットフォームの広告市場は早々と復活した。全世界でロックダウンが施行された後に多少の落ち込みはあったものの、動画ストリーミング市場は引き続き活況だ。英国の市場調査企業 Ampere Analysisのデータによると、米国における家庭の52% は3つ以上のストリーミングサービスに加入しており、29% の世帯は5つ以上のサービスに加入している。オリジナル作品や独占コンテンツに対する需要の高まりが製作費の膨張を招いていることから、多くのストリーミングサービス企業が黒字化するには、今後数年かかることが予想される。S&P Global Market Intelligenceは、大手のDisney+でさえ、黒字化は2024年度以降と予測している。HBO Maxは広告付きサービスを2021年6月に導入したが、今後は多くのSVODサービス企業が同様のサービスを展開するだろう。その間、様々なCTVプラットフォームを網羅する一貫した、権威のある指標の欠落は、デジタル広告費にとってブレーキとなっている。


Ad Age (広告・マーケティング専門誌)

米FOX、デジタル動画広告ターゲティング支援プラットフォームを導入

サードパーティデータの利用制限を受けて、米国のテレビネットワークFox はデジタル動画広告ターゲティングを支援するプラットフォームAtlasを導入する。 同プラットフォームは当初、Fox Navigator、Fox Shieldという2つの製品として提供される。Fox Navigatorはブランドがターゲットとする視聴者の文脈に合わせて広告配信を調整、Fox Shieldはブランドの広告を関連コンテンツと組み合わせ、ブランドのサステイナビリティに貢献する。両製品は、Fox News Media傘下の全放送局に対して使用することが可能。



The Drum (マーケティング・メディア業界ニュース)

終焉を迎えるクッキーを後目に進化を続ける視聴者測定ソリューション

デジタル広告エコシステムにおける最近の著しい成長は、広告主に多様な機会をもたらしている。その傍ら、広告主は様々なデバイスに分散されている消費者行動の測定、そして来年に迫ったサードパーティクッキーの廃止という課題に直面している。このような変化への対応を目指し、ニールセンは同社のソリューションに対して継続的に投資を行い、業界をリードしている。同社は昨年末、Nielsen Identity System を採用し、Digital Ad Ratings (デジタル広告視聴率)の性能を強化する。リリースは2022年2月にスタートし、4月1日時点ではインドネシア、ドイツ、オーストラリア、日本、スペイン、インド、カナダ、ブラジルの計8か国でローンチされている。



The Drum (マーケティング・メディア業界ニュース)

テレビ広告健在の理由

生活者のテレビ視聴習慣は一変したが、一般家庭で最も利用されているスクリーンは、広告主にとって最も貴重なメディアであり続ける。そのスクリーンを通じて高度なターゲティング、最適化、そして測定を行うことができるからだ。認知の構築、またはターゲットマーケティングに軸足を置いた成長戦略への投資を計画するブランドにとって、テレビは様々な理由により、長期的な認知を獲得する上で欠かせないメディアとなっている。テレビ広告にとって、2021年は歴史的な年となった。昨年、1286広告主が新たにテレビ広告を実施、または5年以上のブランクを経てテレビ広告を再開した。過去2年で50% という劇的な増加は、テレビ広告が様々な規模や業態のビジネスに対し、さらに魅力を増していることを物語っている。 ThinkboxとNielsen Ad Intelの統計データによると、2021年度テレビ広告費は54.6億ポンド(対前年比+24%)となり、新型コロナ前の水準を上回った。



Fierce Video (ストリーミング動画業界ニュース)

ニールセン最新レポート:ストリーミング動画視聴者の月額支出 30ドル以下

ニールセンが発行した最新レポートによると、視聴者の月額動画ストリーミング予算は、値上げ続きの有料ケーブルや衛星テレビ放送サービスの月額料金を大きく下回っている。SVODサービスの段階的な値上げ、さらには複数の新サービスに人気タイトルを分散して料金を据え置きにする試みに反して、ストリーミング動画視聴者の財布の紐は固いことが伺える。同社が4月11日に投稿した記事では、同社が新たに発行したState of Playレポートに含まれる視聴者の支出傾向が取り上げられている。



TechCrunch (IT業界ニュース)

ニールセン最新レポート:ストリーミング市場の細分化が進行、利用者はバンドル志向

現在、市場には途方もない数のストリーミングコンテンツが出回っている。ニールセンの最新State of Playレポートによると、米国の生活者の93% は現在加入している有料ストリーミングサービスを増やす予定がある、または現在加入しているストリーミングサービスを変更する予定はないと回答。一方で、調査対象者のほぼ半数は「選択肢が多過ぎる」と感じている。
ニールセンの製品戦略担当SVP、Brian Fuhrerは「ニールセンが初めて発行したState of Playレポートは、ストリーミングが新たなフェーズに突入したことを強調しており、これは過去数年間のストリーミング傾向に基づいている。人生に例えれば、ストリーミングは幼少期から青年期に突入し、青年期特有の複雑さに直面している。ストリーミングは年々増加しているが、消費者はストリーミングに対し、より単純明快にアクセスできることを求めている。また急激なサービス増加により、バンドリングや集約という議論が再開している。これらの課題を解決すればストリーミング業界は長期的な成長を遂げることができるため、業界にとっては機会と言えるだろう」とコメント。



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