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MEDIA WEEKLY 2022年3月1日~2022年3月8日号                  

INSIGHT

広告キャンペーンにおけるソーシャルインフルエンサー活用

インフルエンサーを信頼する消費者にとって、インフルエンサーによるブランド推奨は、ブランドが提供する商品ラインアップの正当性を担保する。このトレンドを利用するためには、戦略的なインフルエンサー選定とキャンペーン実施を確実に行うことが重要

ニールセン アウトカムプロダクト グローバル担当EVP Tina Wilsoni

企業のマーケティング担当者が メディアプランニングにおいてSNS 広告費の増加を優先する現在、インフルエンサーマーケティングは、B2Cブランドにとって、プラットフォーム間でエンゲージメントを高めながら、消費者とより効果的につながる絶好の機会となっています。消費者が関わるブランドと個人的なつながりを持ちたいという欲求が高まっていることは、インフルエンサーキャンペーンに対するオーディエンスの受容性は高まっていることを意味します。このようなオーディエンスの目には、インフルエンサーが宣伝するブランドは、その正当性が保証されているように映ります。


多くのマーケティング担当者は、既にソーシャルインフルエンサーマーケティングがもたらすエンゲージメント機会を捉えています。2020年、米国企業のマーケティング担当者のほぼ75% がインフルエンサーマーケティングを活用し、同マーケティングの利用率は2019年から55%増加しました。しかし、インフルエンサーキャンペーンを開始する前に、ブランドはまず、最も強いインパクトを与え、マーケティング費用を最適化するために、キャンペーンのための健全な戦略を策定する必要があります。ここでは、マーケティング担当者がキャンペーンでソーシャルメディアインフルエンサーを最適に活用する方法をご紹介します。


ブランドの個性や目的に合致するインフルエンサーを見極める

企業のマーケティング担当者がブランドの認知構築、信頼性向上という目的でインフルエンサーを採用する場合、実施するキャンペーンがオーディエンスによって「本物」と感じられることが重要です。消費者の95% は、「本物ではない」と思われるインフルエンサーを「うっとおしい」と感じているからです。適切ではないインフルエンサーを採用した広告キャンペーンは単純に失敗するだけではなく、ブランドから見込み客を離反させるリスクをはらんでいます。


本物と思われるキャンペーンを実施するには、マーケティング担当者はまず、ブランドのオーディエンスに合致したフォロワーを持つインフルエンサーを特定し、キャンペーンに対するオーディエンスの受容性を向上させる必要があります。ここで注意したいのは、フォロワー数が多い一流著名人が必ずしも効果を発揮するとは限らないことです。Nielsen Scarborough によると、著名人を採用した広告を見て商品を購入するのは、米国在住の生活者19%に過ぎません。 消費者は著名タレントよりも、共感できる人物の意見に耳を傾けたいと思っており、米国在住の生活者の42%は購入を決定する際、周囲のアドバイスを求めています。カナダの靴ブランドAldoはこの傾向を捉え、ブランドのペルソナに合致した複数のインフルエンサーを採用した #StepIntoLove という SNSキャンペーンを実施しました。Z世代の買い物客をターゲットとした同キャンペーンは、自撮りダンス動画をキャンペーンハッシュタグと共に投稿してキャンペーンに参加すると、賞金5000ドルがもらえるという仕組みです。ニールセンの InfluenceScopeデータによると、このキャンペーンは50億回以上再生され、Aldoのブランド認知度を2.5%上昇させたとされています。


オーディエンスが「本物」と感じるインフルエンサーを特定する最初のステップは、候補として挙げられたインフルエンサーのコンテンツを自らの目で確認することです。インフルエンサーが既に愛用している商品やサービスとブランドが展開する商品・サービスが一致していれば、フォロワーはフィードに新たなブランドの商品広告が配信されることに違和感を覚えず、その商品とエンゲージする可能性が高くなります。また、マーケティング担当者は、フォロワーがインフルエンサーのコンテンツとどのように関わっているか、例えばフォロワーのコメントはどれくらい誠実かというようなオーディエンスのエンゲージメントを確認し、その上でインフルエンサーに投資する価値があるかどうか、検討を行うことが重要です。


SNS プラットフォームの組み合わせを活用

インフルエンサーとコラボレーションするプラットフォームの選定も、キャンペーンのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。これは、利用する層によってプラットフォームへの関与の仕方が異なるためで、インフルエンサーも利用するプラットフォームによってエンゲージメントレベルが異なる可能性があります。これらの理由により、インフルエンサーはプラットフォーム別に料金を設定する傾向にあります。マーケティング担当者は、インフルエンサーとの関係を始めたばかりの頃は、より安い料金を選択したくなるかもしれませんが、仮にブランドと合致する個性やフォロワーを持つインフルエンサーを採用したとしても、料金のみを考慮したプラットフォーム選定は、キャンペーン効果を台無しにする可能性があります。

メディアの細分化が進む中、マーケティング担当者は全般的に高いエンゲージメント率を誇るプラットフォームではなく、ブランドのターゲット消費者が活発に活動するプラットフォームを特定する必要があります。多くのインフルエンサーは Instagram、YouTube、TikTok を通じて高いエンゲージメントを獲得していますが、これらのプラットフォーム間でも視聴者層は微妙に異なり、インフルエンサーキャンペーンの結果に影響を与える可能性があります。ニールセンが実施した調査によると、SNSの中で最もエンゲージメント率が高いのはTikTokで、オーディエンスは若い女性が中心となっています。若い女性をターゲットとするブランドでない場合、マーケティング担当者がより個人的なつながりを築きたいと望む消費者がそこにいない可能性があるため、TikTokはキャンペーンを行うのに最適なプラットフォームとは言えないかもしれません。


インフルエンサー、メッセージとプラットフォームの選定を正しく行えば、マーケティング担当者は良いキャンペーン結果を出すことができるでしょう。米国の化粧品ブランド e.l.f Cosmeticsは最近、SNSキャンペーン用に "Eye, Lips, Face" というタイトルのオリジナル曲を制作し、TikTokを活用するZ世代の購買力を捉えることに成功しました。同キャンペーンは利用者に対し、オリジナルソングを自らの動画で使うように仕掛けましたが、ニールセンInfluenceScopeのデータによると、キャンペーン開始から6日目には10億回の再生回数を獲得しました。現在、このキャンペーンは60億回以上再生され、500万本以上のユーザー作成動画が投稿されました。様々なSNSでメークアップの動画を投稿している美容インフルエンサー、James Charlesは、e.l.f Cosmeticsが採用したトップインフルエンサーのひとりですが、同氏によるTikTok投稿は12.88% というすさまじいエンゲージメント率を打ち立てました。


継続的な測定に重点を置き、インサイトを発掘

ブランドがインフルエンサーとの関係やその影響を最大化するには、インフルエンサーとの関係を長期的な戦術として扱うことも重要なポイントとなります。インフルエンサーが定期的に商品やサービスを宣伝することで、フォロワーは「宣伝されている商品やサービスは、インフルエンサーが本当に気に入っているものだ」と信じるようになるからです。


インフルエンサーとの関係を最適化したいマーケティング担当者にとって、強固なマーケティング測定が必須となります。インフルエンサーキャンペーンに対する消費者のエンゲージメントをモニタリングすることで、改善の機会を見出すことが可能になります。投稿のみを見るだけ。特に動画に対する「いいね」数を多く獲得した場合やブランドのフォロー数が増えた投稿などでは、キャンペーン効果を見誤ってしまう可能性があります。反応したオーディエンスがその後、どのような行動をとったか、すなわちクリックしてブランドのウェブサイトに遷移して商品を購入したなど、エンゲージメントの成果を把握できなければ、インフルエンサーキャンペーンの実際の効果を正しく認識することはできません。同様に、キャンペーン別 ROI の把握を可能にするマーケティングツールを活用すれば、マーケティング担当者はSNSの効果的かつ効率的な利用を確実に行うことができます。


インフルエンサーキャンペーンは、現在最も注目されているマーケティングトレンドですが、他のあらゆるプロモーション戦術と同様に、実施に先駆けて慎重に検討を進める必要があります。ソーシャルメディア上でインパクトを与えたいのであれば、マーケティング担当者は、誰をどのようにインフルエンサーとして活用するのかを冷静、かつ客観的に判断することが求められます。






INDUSTRY NEWS

Newsweek (ニューズウィーク誌)

テレビを保有する米国人の90% がスーパーボウルを視聴

ニールセンと米国のNFLが実施した調査によると、米国では推定2億800万人が2022年スーパーボウルを少なとも一部視聴した。視聴場所には自宅、友人や親族の家、そしてレストランなど公共の場所が含まれる。同調査は米国の6600世帯を分析、スーパーボウルを視聴する平均的な家庭のサイズを判定し、その後、過去の調査におけるニールセンの推定計測値(1億6700万人がスーパーボウルテレビ中継番組を1分以上視聴)との比較を行った。NFLの最高データ・分析担当責任者、Paul Ballewは「カスタム調査を実施するにあたり、ニールセンの協力に感謝している。カスタム調査結果は、スーパーボウルという他に類を見ないイベントの総視聴に関する最も正確な状況を反映していると感じている」と声明を通じてコメントしている。ニールセンのアメリカ担当スポーツマネジングディレクター、Jon Stainerは「スーパーボウルは、真に比例のない視聴体験だと認識している。ニールセンの計測は業界のゴールドスタンダードではあるが、ニールセンは常に顧客とのより密接な協業を通じて、具体的な視聴オーディエンスや視聴方法の理解を深めるための方法を模索している」とコメンしている。


Advanced Television (テレビ業界ニュース)

ストリーミングテレビ、引き続き拡大傾向

オーディエンス計測プラットフォーム AudienceProject によると、リニアテレビからストリーミングテレビや CTV (コネクテッドテレビ)へのオーディエンスのさらなるシフトは、広告主や放送会社にとって大きなポテンシャルとなる。米国、英国、ドイツ、北欧におけるリニアテレビやストリーミング接触の実態を網羅する同社の調査レポート「Insights 2022 - Linear TV and streaming」発行後、同社の英国担当コマーシャルディレクター Martyn Bentleyはブログに投稿したコメントを通じて、リニアテレビは過去数年に渡り、何度も死に体と言われてきたと指摘。同氏は「リニアテレビは決して死に体ではない。事実、米国と北欧におけるリニアテレビ視聴は、若干ではあるが増加している。しかしながら、全体的なトレンドとしては、テレビコンテンツ接触はリニアテレビからストリーミングテレビや CTV プラットフォームへと移行している」とコメントした。


Variety (エンターテインメント業界誌)

テレビへの対抗姿勢を強める米YouTube

テレビ広告予算のさらなる奪取を狙うYouTube は今年、初の試みとして、テレビアップフロントプレゼンテーションの開催週に企業のマーケティング担当者向け2022年度広告枠販売プレゼンテーションを実施する。同社が主催するYouTube Brandcast は、テレビアップフロントの開催週に行なわれる。プレゼンテーションは5月17日、ニューヨークシティで東部標準時間午後8時にスタート。プレゼンテーションにはトップクリエイターや著名ミュージシャンが参加すると発表されている。




Variety (エンターテインメント業界誌)h

米ニールセン、テレビ視聴計測を補完するストリーミング視聴データをリリース

テレビ視聴計測における競争激化に直面するニールセンは、広告主が必要とするデータのさらなる活用を進めている。内部の情報筋によると、コネクテッドテレビセットから取得したストリーミング視聴データのリリースを発表する見込み。新たにリリースされる視聴データにより、広告主、媒体取引者やメディア企業に対し、複数のスクリーンをまたいだオーディエンスの視聴態度や行動をより明らかにすることが狙い。本リリースの数日前、同社は顧客に対し、テレビオーディエンスのより粒度の高い計測や、性年齢別の従来のリニアテレビ視聴者計測を含む「ビッグデータ」の構築を目指すという趣旨の文書を送付している。今回のリリースは、テレビアップフロント広告枠販売イベントにて、どの業界基準が最重視されるかについて、ニールセンがテレビネットワークと論争を繰り広げているタイミングでの発表となる。昨年9月に発行された文書にて、ニールセンの CEO (最高経営責任者) David Kennyは「オーディエンスの変化に遅れをとらないよう、ニールセンも動きを加速する必要があることを理解している」とコメントした。2月14日週に発表された声明にて、ニールセンはビッグデータ構築に向けた同社の施策は重要なステップであり、信頼性が高く、独立した単一の業界標準指標を用いた広告主やパブリッシャーとの媒体広告枠の取引を可能にする NielsenOneのローンチに向け、動きを加速すると宣言した。また同社は「単一のクロスプラットフォーム計測ソリューションの実現に向けて、顧客と密接に協業しながら進んでいる」とコメントしている。



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