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MEDIA WEEKLY 2022年2月15日~2022年2月22日号                

INSIGHT #1

インプレッション 2.0:メディア業界における重要なイコライザー

ニールセン プロダクトマネジメント担当SVP Kim Gilberti

メディア用語の中にはあまりにも一般的になり、その本当の意味を見失うことがあります。Impression(インプレッション)はその良い例です。誰もがインプレッションという言葉の意味を知っており、言葉自体も数十年使われています。しかし包括的なメディア測定という文脈でインプレッションがより広義に使われている現在、言葉の意味の変化を考慮する余地があるのではないでしょうか。

インプレッションという言葉の意味は、当初から変化していない。
大前提として、インプレッションという言葉は、コンテンツや広告を見るという行為そのものを指すのだということに、まず同意してください。1990年代初期、インプレッションはオンラインパブリッシャーが広告主に対し、広告主のバナー広告の視聴者数を報告するために使われ始めました。現在では、メディア業界はこの言葉をより広く使用しており、その使用は、包括的かつ独立した測定・検証基準に裏付けられています。このような経緯を踏まえても、この言葉は、コンテンツや広告を見た人を指す言葉であることに変わりはありません。


この言葉の普遍的な適用性こそが、特に消費者がデバイスやプラットフォームを問わず、自分のスケジュールに合わせてコンテンツを消費するようになった今、インプレッションが偉大なイコライザーである理由なのです。また、このような消費者のコンテンツ接触行動により、メディア業界はインプレッションベースの売買への移行が進んでおり、以前からその動きは加速していました。今年、ニールセンのローカルテレビ視聴測定にブロードバンド視聴のみの世帯が加えられたことにより、米国のローカルテレビ市場では、インプレッションベースの広告枠取引が採用されています。


Nielsen ONE 実現に向けての移行過程において、メディア業界ではリニア(番組表に沿って番組が放送される従来のテレビ放送)とデジタルの完全な比較可能性が実現し、測定においてもその完全性や代表性が担保されるようになるでしょう。さらには、分単位以下の比較可能な測定が可能になります。


インプレッションの前提は単純ですが、インプレッションを構成する要素には複雑なレイヤーが存在します。比較可能なクロスメディア測定にとって、インプレッションベースへの移行は、コンテンツが実在する「人」に視聴されたかどうか(ビューアビリティ)についての判定基準に依存することを意味します。


歴史的にデジタルプラットフォームでは、ファーストビュー以外のエリアに掲載される広告、レンダリングされていない広告、スキップが可能な広告などの存在により、ビューアビリティは検討事項として取り扱われてきました。しかしプラットフォームを横断する消費者の視聴行動により、デジタルとリニアは急速に収束してきています。このような状況下において、リニアテレビ番組を視聴するための有料のケーブルケーブル放送加入は不要となり、消費者は特定のCTVアプリケーションで広告をスキップすることができ、広告主はスマートテレビの普及に伴い、プログラマティック技術の利用を増やし続けています。

ビューアビリティの基準は長年にわたって進化してきましたが、つい最近まで、その進化は個々のプラットフォームに関係していました。リニアとデジタルの橋渡しをするために、いくつかのクロスメディアの視聴者測定基準が登場しました。それらの基準によると、クロスプラットフォームでのビューアビリティは、スクリーン上でコンテンツのピクセルの100%が2秒間連続して画面上で視聴されることを意味しています。また、この基準では、テレビ番組が100%のピクセルで配信されることを前提としています。


全国テレビ放送を含めてメディア業界では長年にわたりインプレッションを使用してきましたが、完全かつ比較可能なクロスメディア測定のためにインプレッションに移行することは重要なステップと言えます。移行は既に実施、理解されている基礎指標をベースに進められますが、完全な適用に向けては調整が必要となるでしょう。


また、この測定をスタジオ制作とクリエイター制作の両方のコンテンツに適用することは、コンテンツ制作や「品質」のばらつきという理由で調整が必要になることが予測されます。品質は視聴者や広告主によって判断され、ブランドや企業は安全なコンテンツの見極めにDoubleVerifyやIAS のようなツールを利用し、広告の掲載先を決定するためのフィルター使用するようになるでしょう。フィルターは広告主によって異なるかもしれませんが、業界として基本的な基準を設ける必要があり、ニールセンは販売サイドとも協力してこの測定に取り込んでいきたいと考えています。


想定の範囲内であったとしても、変化に対しては多少の抵抗や疑問が生じることが予想されますが、将来的な基盤は既に存在し、さらには業界にはビューアビリティへの疑問に対処する基準が既にあることにより解決できでしょう。しかし、業界全体が新たなクロスメディア測定に完全に対応するまでには、ある程度の時間がかかるでしょう。


今後、新測定への移行過程において、コマーシャル時間帯の分当たり平均視聴率は引き続きリニアテレビ視聴測定の一部として提供されます。しかし、クロスプラットフォームに対する真の比較可能性が実現のために、ブランドや企業、および広告代理店は 個別コマーシャル指標(Individual Commercial Metrics) を用いて、オムニチャネル広告キャンペーンの活性化や最適化を行えるようになります。


ブランド、企業、広告代理店が新測定に向けた移行を進める中、異なる測定ソースからのインプレッションには品質にばらつきがあることを理解することが重要です。インプレッションの品質は、包括的かつ個人レベルでの代表性に左右されます。代表性という視点でインプレッションと視聴率を比較すると、正確性の高い測定の提供という点では、インプレッションが優位になります。


総利用者に占める比率を提供する視聴率ベースの測定とは異なり、インプレッションは広告が視聴者に表示された実際の回数を反映します。これが意味することは:


• 広告主は、最も関心のある消費者とのエンゲージメントを深めることができます。
• 番組パフォーマンス測定の正確性が高まる(例:端数の丸めによる視聴者の増減が排除される)。


メディア業界の全ての関係者にとって、メディアに対する消費者エンゲージメントを理解することの重要性は、かつてないほど高まっています。コネクティビティ、デバイスやプラットフォームの普及、個人の選択により、消費者には無限の選択肢があるように見えますが、その選択に影響されない測定の必要性を高めています。リニアとデジタルの世界の収束に伴い、測定のベースはインプレッションへと移行します。インプレッションを最大限に活用するためには、インプレッションが代表性のある測定値を提供するための品質が重要になります。インプレッションという言葉の定義は一つですが、インプレッションは、その裏付けとなるデータがあって初めて成り立つものです。






INSIGHT #2

コンテンツに飢えた視聴者に多数のアクセス方法や選択肢が存在するテレビ複数台保有世帯

1985年の米国のSF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』では、1955年にタイムスリップしたシーンで、主人公のマーティ・マクフライが祖母に「家にはテレビが2台ある」と語る場面があります。1985年の生活を語るマーティに対し、祖母は「テレビが2台ある家なんて存在しない」とはねつけました。


2022年の現代に目を向けると、テレビ複数台保有世帯は既に当たり前となっています。事実、米国の総世帯を占めるテレビ1台のみ保有世帯は、僅か19%に過ぎません。各家庭におけるテレビの台数に関わらず、テレビは現在もメディアの主役であり、消費者が好きな時に好きなコンテンツを視聴するために使用する数多くのその他デバイスを補完しています。テレビのチャネルを回してコンテンツを視聴した1955年と違い、現在のテレビはコンテンツという点で、ありとあらゆる柔軟性があります。そして米国の世帯ではテレビセットの利用が進化を続けており、利用も部屋によって異なります。


米国の家庭における現在の平均テレビ保有台数は2.3台です。1955年同様、米国の家庭のほぼ半数(44%)はケーブルテレビや衛星放送に加入していない、すなわちコードカッターです。消費者がアクセス可能な選択肢の幅や深さを考慮すると、多くの世帯はコンテンツのどちらかを選ぶのではなく、様々なオプションを組み合わせて利用しています。例えばある部屋ではブロードバンド経由でコンテンツにアクセスし、他の部屋ではケーブルテレビや衛星放送サービスで放送される番組を楽しむというケースは珍しくありません。実際、副寝室のテレビの51%はストリーミング専用に使われています。


デバイスやプラットフォームの氾濫は、家庭の各部屋、そして世帯人員間のメディア接触に対し、様々な影響を与えています。選択肢が増加する中、個人的なテレビ利用実態を把握できれば、広告主や広告代理店はインサイトを発見することができます。これらのインサイトを踏まえ、広告主は末端ごとの消費者との意義のあるエンゲージメント獲得を確実に行えるようになります。


人気を集めるSVOD番組
リビングルームのテレビ利用率は、2歳以上では58%と、どの部屋よりも高く、長年にわたり、テレビ世帯のメディアコントロールの中心であることに変わりはありません。

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興味深いことに、リビングは必ずしも共視聴が行なわれる部屋ではないということです。リビングルームにおけるコンテンツ視聴の55%は単独視聴です。ケーブルや番組販売形態の放送では、リビングでの単独視聴比率はさらに高くなります。そして、リビングでの共視聴は、SVODコンテンツに対して行われる傾向にあります。

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家庭に浸透するコネクテッドデバイスの利用
手頃な価格のテレビセットが販売されている現在、米国の家庭におけるコンテンツへの接続やアクセスが浸透し、スマートテレビの保有やストリーミングスティックなど、インターネットコネクテッドデバイス利用の一般化が進んでいます。そしてテレビ視聴のハブであるリビングルームには、拡大するOTTコンテンツへのアクセスを可能にする最新テクノロジーを駆使したデバイスが真っ先に設置されています。実際、スマートテレビの約半分、ゲーム機の44%、インターネットコネクテッドデバイスの40%はリビングルームに置かれています。しかし、主寝室と副寝室に設置されたインターネットコネクテッドデバイス台数を合算すると、合計比率(44%)はリビングを上回り、世帯におけるテレビコネクテッドデバイスの重要性が浮き彫りになります。

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住宅内でのコネクティビティの確保は、リビング以外の部屋における若い消費者のテレビ利用に直接影響を及ぼしています。例えば主寝室以外の寝室においては、消費者の51%がインターネットコネクテッドデバイスを利用してコンテンツに関与しており、地下室における同比率は47%になっています。主寝室におけるテレビ利用は主にテレビ番組視聴(68%)で、65歳以上の消費者では同比率は88%になっています。

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1955年当時、テレビの使い方は非常に単純でした。テレビ番組は番組表に沿って放送され、チャンネル数は限られており、1つのテレビセットの前に視聴者が集まりました。1955年の「未来」にあたる現在、個人的なテレビ利用や家庭内での設置場所など、テレビ利用は当時の想像を超えて多様化しています。






INDUSTRY NEWS

The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)

米Comcast傘下NBCUniversal、Hulu とのコンテンツ提携契約を変更

Comcast Corp. 傘下のメディアエンターテインメントグループNBCUniversalは、Huluとの提携関係を大きく変更する計画を最終化している。事情に精通している情報筋によると、NBCUniversalは今後、人気番組を自社ストリーミングプラットフォームであるPeacockで配信する。また同情報筋は今年の秋、人気番組 "The Voice"、"Saturday Night Live"、"American Auto"の新エピソードは放送後、Huluでは配信されなくなると話している。NBCUniversalは最近、競争が激化するストリーミング市場で苦戦している同社のPeacockの強化施策を実施している。Huluを共同所有するWalt Disney Co.とNBCUniversalは当初はストリーミングパートナーという関係にあったが、近年では直接競合となったことが、今回のHuluとの提携関係の変更に影響を与えていると推察される。


Adweek (広告業界誌)

Z世代のブランドロイヤルティ

Z 世代は移り気でインフルエンサーに強く影響を受け、デバイスに依存しており、ブランドからブランドへと渡り歩く存在だと言われているが、同世代に関する一般論を再考する。Z 世代は物事に精通しているために要求レベルが高く、倫理観の強い消費者で、彼らが欲するのはリアルな体験。これらの要求に応えられるブランドは、生涯顧客を獲得することになる。Student Beans の調査によると、Z 世代調査対象者の42%は、ポジティブな購入体験を得られたブランドに対しては、一生良い見方をすると回答した。



NY Times (ニューヨーク・タイムズ紙)

プライバシーポリシー変更を計画する米Google、変更の影響に配慮

2月16日、Googleは同社のAndroid OS がインストールされたスマートフォンのデータ共有を制限するプライバシー施策に取り組んでいると発表。同社によるプライバシーポリシー変更の影響について、同社は昨年Appleが導入したプライバシー施策による大混乱を生じさせないと確約した。






The Hollywood Reporter (エンターテインメント業界誌)

米テレビ視聴率:北京冬季五輪のオーディエンス、過去最低を記録

NBCU による冬季北京オリンピック番組の視聴者数は、東京2020オリンピック視聴者数から26パーセントダウンした。同社の東京2020オリンピック「総オーディエンスデリバリー」指標(ニールセンのテレビ視聴率、デジタルのAdobe Analytics数値の組み合わせ)では、プライムタイムの平均視聴者数は1550万人。北京冬季オリンピック視聴者数の減少幅は、昨年の夏季オリンピック、前回の冬季オリンピックの開幕週と同等だった(過去3回のオリンピックは全て東アジアで開催され、開催都市と米国の時差はほぼ同じだったことを追記する)。



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