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MEDIA WEEKLY 2022年2月1日~2022年2月8日号                  

INSIGHT #1

ターゲティング環境の変化に対応するためには?

全てのブランドにとって、最優先するべきは消費者でしょう。確かに売上は企業の最終目標ですが、売上を達成するためには、ブランドが提供するものを受け入れてくれる消費者が重要です。ブランドを構築する上で、企業のマーケティング担当者はまだ顧客化していない消費者に対し、ブランドとのエンゲージメント、ブランドの認知、そして検討を促進する必要があります。


オーディエンスターゲティング自体は目新しくありませんが、テクノロジーの進化による機能の強化・拡大が進む中で、マーケティング担当者は過去の慣習や実績に捕らわれず、今までとは異なる戦略や戦術を採用することが求められています。アドレサブルデジタル広告は、長い間ターゲティングに最も利用されてきたチャネルでしたが、インターネットコネクテッドデバイスやスマートテレビの普及が進んだことで、リニアテレビやその他「従来」メディアにも同じ考え方を導入し、大規模に展開することができるようになりつつあります。アドレサブルデジタル広告自体もプライバシー強化という点では変化しており、新たな課題や機会が顕在化しています。この2つの領域について詳しく見ていきましょう。

アドレサブルテクノロジー
デジタルは広告ターゲティングの主要なチャネルであり、その主な理由はアドレサビリティ(特定の意図するターゲットに広告を大規模に配信できること)です。このアドレサビリティは利点ですが、マーケティング担当者は、それが完全なものでないことに注意する必要があります。ニールセンのデジタル広告視聴率 (DAR)のデータを見ると、PCとモバイルに配信されたデジタル広告の平均オンターゲット率は、63% にしか過ぎません。これは性別と年齢という基本デモグラフィック属性のみで定義され、かなりのデータカバレッジと質が担保されているターゲティングの場合でさえもそうだということです。

上記のデータは、データを活用して特定のオーディエンスにリーチすることを否定するために引用したのではありません。重要なのは、精度を高めるために、高品質で確定的なオーディエンスデータを活用することです。また、マーケティング担当者は、ターゲティングの精度と販売効果の測定を強化し、データセットを比較してその価値を評価できるようにすることが賢明でしょう。

サードパーティ識別子(ID)
デジタルターゲティングを語る上で、サードパーティクッキーやその他のデジタル識別子が存在しない未来を現実的に考慮することが必須となります。そのような未来の話の以前に、米国のインターネットユーザーの約44%がすでにサードパーティクッキーのないブラウザを使用しており、Apple の iOS 14.5 アップデート以降、多くの利用者はモバイルデバイスのトラッキングに対し、オプトアウトを選択しています。これはデジタル利用者の相当の数が既にサードパーティクッキーキーやデジタル識別子が存在しないかのようにインターネットを利用していることを示しています。今年の初めに投稿した ブログにて、米国のマーケティングコンサルティング企業 DStillery は、最終的にはディスプレイ広告の総インプレッションの最大90% は、アドレサブルIDが付与されない状態になると指摘しています。デジタルインプレッションが正体不明の視聴者に配信されることで、広告のパフォーマンスは危険にさらされます。


この拡大する課題に対して、広告主は3つの主要な対応をとることができます。


• ファーストパーティデータ活用の強化
• 今後を見据えたデジタル動画アドレサビリティの活用(CTV、スマートテレビなど)
• 過去のコンテキストターゲティングテクノロジーから脱却し、最適化のイノベーションを活用


選択肢の 1つとして、ファーストパーティデータに投資することが挙げられます。具体的には、特定の生活者から直接データを収集するデータ企業との提携です。様々な共有ハッシュプロトコルを使用することで、これらのファーストパーティデータIDを照合し、適切な権利を取得すれば、ターゲティングのために共有することができます。


このエコシステムで成果を出すためには、広告主は自らのターゲティング能力を、パブリッシャーが利用者の許諾を得て取得した、「人」ベースの ID と相互運用可能にすることが必須になります。言い換えれば、消費者を誘引するコンテンツクリエイターやパブリッシャーと同一のID言語を共有することです。

経済的な観点からも、効果的なマーケティング(エンゲージメント、認知、検討)はコスト効率に優れています。多くの市場で広告予算が回復し続ける中、メディアの効率性には質の高いオーディエンスデータが欠かせません。そこで、データ戦略の策定とアクティベーションのためのデータコネクティビティが重要な課題となっています。しかし、多くのマーケティング担当者は、質の高いデータの不足に頭を悩ませています。

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ブランドはターゲットに一律にアプローチすることはできず、オーディエンスもあるチャネルから別のチャネルへと使い回されるべきではありません。ブランドは、リニアおよびデジタルチャネルにおいて、各メディアの強みを活用した包括的な視聴者戦略を活用すべきです。同時に、販売やブランドリフトの影響を検証するため、キャンペーンの数か月後ではなく、キャンペーン実施中に計測を行うことが重要となります。






INSIGHT #2

長期的なブランド成長にとって欠かせないのは、マーケティングファネル全体へ焦点を当てること

ニールセン 戦略アカウント担当VP イムラン・ヒラー

2020年、年明けと共に新型コロナウイルスの感染が拡大すると、あらゆる規模、あらゆる業界のブランドがマーケティング予算を削減し、その多くが資金節約のためにブランド認知活動を一時停止または縮小し、残された予算とリソースを新規顧客の獲得ではなく、既存顧客の維持に集中させました。


このようなローワーファネルの戦術的施策は消費者の行動を直ちに喚起するため、不安な状態にありながらも、上司や経営陣に結果を報告する義務があるマーケティング担当者の目には魅力的に映るでしょう。しかし、ROI (投資対効果)を優先するあまりにブランド認知などのアッパーファネルの優先事項をないがしろにすれば、長期的なブランド成長を維持することはできなくなります。


マーケティング担当者は、新しい現実に対応するだけでなく、将来の成功への道筋をつけるために、戦術を再調整することを学びました。成長には、アッパーファネルのブランド構築とミッドファネルおよびローファネルの取り組みを連動させた、バランスのとれたマーケティング戦略が必要です。ここでは、ブランドがどのようにバランス型マーケティング戦略を実施することができるかを説明します。


カスタマージャーニー全体を重視
消費者はブランドのことを知らなければ、興味を持つことはできません。そのため、マーケティング担当者はブランド認知活動を通じて新規の見込み客をターゲットとし、将来の販売につながるパイプラインを構築する必要があります。このような見込み客がパイプラインに入ると、ローワーファネルの取り組みで影響を与えられる消費者の層が広がり、潜在的な収益が増加します。実際、ニールセンの最近の調査によると、認知度などのブランド指標を1ポイント上げると、売上が1%増加することがわかっています。


現在の焦点は成長ではなく維持であると主張するブランドは、ブランドで素晴らしい経験をし、忠実である顧客でさえ、再訪問するためのリマインダーを必要とすることを忘れてはなりません。最も知名度の高いブランドでさえ、消費者の頭の中に残るように、アッパーファネル戦術を実行し続けています。製品やサービスの選択肢やアクセス方法が多様化している今、消費者の記憶に残り続けることが、売上を左右する可能性があるのです。


見込み客に対し、適切なチャネルと適切なメッセージでターゲティング
ブランドに接触したばかりの消費者の注目を獲得し、売上を増やすには、消費者の共感を得られるブランドメッセージを発信することが重要です。マーケティング担当者は主要トレンドやニュース、イベントを検討し、自社の製品やサービスがそれらにどのように合致しているかを明確にすることで、ブランドの関連性を強調することができます。オーディエンスについてより深く知ることで、その人たちの個人的なニーズに対応するメッセージを作成し、自分たちのビジネスを評価している消費者に感謝を示すこともできます。同様に、ブランドに接触したばかりの消費者に対し、ブランドロイヤルティの高い顧客と同様の行動喚起を呼びかけても、反応を得られないこともあります。マーケティング担当者は、活用するメッセージを相手に合わせて慎重に検討し、各オーディエンスがカスタマージャーニーの次のステージに移ることができるよう、背中を押す必要があります。


チャネルを選択する時でも、マーケティング担当者は同様の配慮をすることが求められます。9つのチャネルでキャンペーンを実施した保険ブランドに関するニールセンの調査によると、大方のチャネルは短期的な売上に貢献したが、ブランド認知や検討には予算規模に反し、効果を発揮しなかったことがわかりました。ブランドが発信するメッセージに対する消費者の反応を考慮する際に、チャネルの選択はメッセージの内容と同じくらい大切になります。いかに内容が練られていても、各プラットフォームに適したメッセージを用意できなければ、予算の無駄遣いとなる可能性があるからです。


経営陣に対しアッパーファネル施策の重要性を説得
経営陣は常に結果を求めますが、マーケティング担当者は自らの組織に対し、売上に対する長期的なブランド構築の潜在的な影響がいかに重要であるかを理解させ、浸透させるべきです。アッパーファネルマーケティングの長期的な売上効果やブランドエクイティ効果を測定して、ブランド構築の効果を示すことで、経営陣に、売上結果に対する忍耐が報われるという確信を与えることができます。


ローワーファネルの施策は短期的な売上に貢献するため、経営陣の受けも良いが、多くの場合、長期的な売上には効果を発揮しません。そのため、コンバージョン優先のマーケティングに集中すると、売上や長期的なブランド成長が衰退します。ローワーファネル施策だけでは、ブランドを維持することはできないのです。逆に、アッパーファネルマーケティングは、すぐにROIを示す効果は低いものの、ニールセンの調査によると、将来のパイプラインを育成するだけでなく、短期的な売上にも貢献することが分かっています。そのため、アッパーファンネルの活動は、ミックスの中でより重要視されるべきなのです。


マーケティング活動の成果は、売上のみで評価されるべきではありません。アッパーファネル、ローワーファネルのアクティベーションは異なる目標に対して実施されることから、共通の指標で両方のファネルの成果を計測することは、それぞれの効果の積み上げを過小評価することになります。アッパーファネルで発信されるメッセージ評価には認知や検討などの指標を用い、ローワーファネルからのメッセージに対しては、コンバージョンをトラッキングして評価することができます。コンバージョンは売上だけではなく、ニュースレター配信登録、ホワイトペーパーのダウンロード、ウェビナー出席など、ブランドの目的に応じて様々な指標が含まれます。行動アトリビューションを把握する測定プラットフォームを活用することで、ブランド構築や認知度向上活動の長期的な効果を確認し、成功や改善の領域を特定することができます。


現在の市場環境を鑑みると、コンバージョンを目的としたマーケティングによる短期的な成果は良いニュースとして受け止められますが、長期的なブランド成長につながらない場合もあります。多くのブランドがパンデミックの感染拡大状況に対応し、予算を調整していますが、マーケティング戦略についても同様に、状況に応じて調整が行われるべきでしょう。ビジネス成長を継続的に達成するには、マーケティング担当者はファネル全体をバランス良く考慮した計画を策定する必要があります。






INDUSTRY NEWS

Marketing Brew (マーケティング・広告ニュースレター)

恩恵と苦しみを同時に味わうストリーミングテレビ

ニールセンの調べによると 2020年末時点、リモートワークを行う社会人のほぼ半分は、仕事中にテレビ番組やストリーミング視聴を行っており、昼間の時間帯が第2のプライムタイム化する現象が確認された。これはエンターテインメントビジネスにとって、特に昼夜を問わずコンテンツを視聴する生活者の増加という恩恵を既に受けているストリーミング配信業者にとっては吉報だろう。ニールセンのデータでは2021年度、アメリカ在住の視聴者は1500万年分に相当するコンテンツをストリーミング視聴した。


Adweek (広告業界誌)

19日間で 12億ドルのテレビ広告売上

米NBC Sports は北京オリンピックと第56回スーパーボウルという2つの巨大イベントにはさまれた期間中に、2018年2月に記録した広告売上12億2000万ドル以上の売上を獲得する見込み(昨年の夏に開催された東京 2020オリンピック期間、同社は 12.4億ドルの広告売上を獲得した)。NBC Sports が「スーパーゴールドフライデー」と呼ぶ 2月13日、同社は北京オリンピックと第56回スーパーボウルの両方を中継、同社の広告販売担当 EVP、ダン・ラビンガーが「NBCU の歴史上、最も長い 1日」と語ったこの日だけで5億ドル以上の広告売上を獲得する予定。広告売上の新記録に加え、NBC Sports は第56回スーパーボウル中に流れる30秒のスポット広告を、2018年の販売単価よりも20% 高い最高7億ドルで販売した。



Variety (エンターテインメント業界誌)

米国におけるテレビ視聴率:北京 2022 冬季オリンピック開会式の視聴者数は1600万人、前回の平昌大会から43%減

北京冬季オリンピック大会の開会式の視聴者数1600万人は、NFLを除いたリニアテレビ放送番組の中では素晴らしい数字だ。しかし今回の1600万人は、2018年2月に開催された平昌2018冬季オリンピック大会開会式の視聴者数2830万人の43% 減。オリンピックの視聴者数は減少傾向にあることから、数字が下がったこと自体は驚きに値しないが、それにしても大きな下落幅が計測された。






Campaign (広告・メディア・マーケティング業界誌)

ニールセン、英国で Nielsen Ad Intel サービスを強化、ペイドソーシャルと広告クリエイティブをモニタリング対象に追加

ニールセンは同社のNielsen Ad Intelサービス強化を発表、今後は英国企業のマーケティング担当者にペイドソーシャルと広告クリエイティブ情報を含む詳細な広告モニタリング機能を提供する。英国ニールセンメディアのコマーシャルディレクター、バーニー・ファーマーは「ソーシャルメディアは、ブランドが消費者にリーチし、交流する場となっている。企業やブランドのマーケティング担当者は、ROIが計測可能なソーシャルメディアでの存在感の向上に努めている。ニールセンが提供するサービスの広告カバレッジを大幅に強化することで、パブリッシャー、プラットフォーム、エージェンシーやブランドは、SNSに広告を配信するブランドを特定できる他、既にトラッキングしているその他デジタル広告活動も把握できるようになる。SNSでの広告活動を、ニールセンが長年カバーしてきたテレビ、ラジオ、プレス、屋外やシネマなど、他の広告チャネルにおける活動と合わせて評価することが可能になる」とコメントしている。




Digiday (マーケティング・メディアDXニュース)

米Google、Meta、Amazon、2022年度広告費の50%以上を獲得する見込み

Google、Meta (旧 Facebook)、Amazon の3社は、かつてないほど強力になっている。2021年度の全世界デジタル広告予算の74%がこの3社に流れ、これは同年度の総広告費の47%に相当する。昨年からの流れで、この3社が 2022年度総広告費の支配的なシェアを占めると予想されている。パンデミックの初期段階で、これら3社が広告に及ぼした影響がさらに拡大する形だ。




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