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ニールセン、テレビ視聴の実態を明らかにする月次レポート THE GAUGEを発表
ニールセンは6月17日、テレビ放送やケーブル、動画ストリーミング配信を対象としたテレビ視聴の実態を明らかにする月次レポート、THE GAUGE を発表しました。
THE GAUGE は、現在のテレビ視聴実態を明らかにするニールセンの初の試みで、テレビの今後を現実的に検証する手段となります。ニールセンの新たなサービスに対し、NETFLIX の共同 CEO (最高経営責任者) REED HASTINGSは「ニールセンは、動画ストリーミング視聴が米国のテレビ視聴環境に与える影響を審判、採点する立場にふさわしい企業」と賛辞を送りました。
このパンデミックをきっかけに、ストリーミングサービスはより幅広い消費者に支持されるようになりました。これに対し、一部のメディア企業は昨年、自らが所有する豊富な動画資産を活かして動画ストリーミング配信市場に参入、ロックダウンで自宅にこもる消費者に対し、絶妙なタイミングでまとめ視聴(いっき見)のプロモーションを実施しました。ニールセンが先頃発表したテレビと動画ストリーミング全体を網羅する月次スナップショット、The Gauge によると、米国の全テレビ保有世帯におけるストリーミング配信の利用は総テレビ視聴時間の26%に上昇。また、ストリーミング配信とテレビ放送の合計が総テレビ視聴時間の半分に相当し、利用も同程度となっていることがわかりました。

ニールセンの製品戦略担当 SVP、Brian Fuhrerは「昨年以降、テレビ視聴環境は全面的に変わりました。人々は新型コロナ前の生活に戻ろうとしてますが、コロナがもたらした生活環境の変化、さらには新たなストリーミングサービスの台頭により、多くの視聴者は動画ストリーミングという新たな視聴習慣を受け入れました。これらの視聴者は、今後も自ら選択肢を探し、検討することが想定されます。今後、動画コンテンツの制作増加に伴って登場する新たなコンテンツの数々が、ストリーミングの人気をさらに牽引するでしょう」とコメントしています。
PERSPECTIVE
マーケティング測定の成功基準
ニールセン グローバル分析プログラム部門長 Jason Tate
測定は長年、効率的なマーケティング施策に欠かせない重要な側面として捉えられてきました。しかし現実的には、マーケティングテクノロジーは今ほど多種多様な機能を備えていませんでした。近年のマーケティングテクノロジーの進化によって、メディアに対する消費者エンゲージメントの急速な細分化が進行し、皮肉なことに投資対効果(ROI)を証明するというマーケターの課題をさらに困難にしています。
企業規模に関わらず、新たな消費者プラットフォームやデバイスの氾濫は、クロスチャネル計測という全てのブランドにとっての課題を増幅しています。最近発行された Nielsen Annual Marketing Report によると、ROI に対するマーケティング施策の影響をしっかりと計測できていると回答したのは、米国のマーケターの20%のみでした。これは米国だけではなく、全世界共通の課題とニールセンは認識しています。
グローバル規模の広告主やパブリッシャーに機会をもたらすのは、米国以外の市場です。国際市場への拡大という新たな機会は具体的な投資先や投資の種類など、今までは見えていなかった課題を浮き彫りにします。広告戦略が実施される市場に拠点を持たないツールやベンダーを利用するという安易な考えを行動に移すのは容易ですが、これらの課題には慎重な検討を要します。広告戦略を実行する市場にいないツールやベンダーの力を借りることで、簡単に道を踏み外してしまうことがあるからです。また一方で、マーケターがマーケティング活動のさまざまな側面で異なるツールやプラットフォームを使用していることも珍しくなく、それらがうまく連携できないこともよくあります。
基本中の基本ではありますが、マーケティングを実施する企業やブランドにとって、現代のデジタルマーケターを念頭に設計されたソリューションを入手することが極めて重要となります。今日活動するマーケターの主要ニーズは「アジリティ(迅速性)」、「グラニュラリティ(粒度)」、そして「カバレッジ(範囲)」の 3点に集約されます。
アジリティ(迅速性)
ブランドやマーケターは常々、変化する市場や消費者の需要に迅速に対応することが求められます。しかし 1年以上に渡り、日常生活のあらゆる側面に大きな影響を及ぼしたパンデミックに予め備えることは、どのブランドにとっても不可能でした。この状況に複雑化するメディア環境が加わると、アジャイル(迅速性)というニーズはさらに重要となり、変化のスピードについていけない場合は予期しない事態に直面することになるでしょう。
マーケティングの世界では変化の激しい市場力学、進化する競合環境、そして近代史上最大規模の混乱が生じている現在の状況下での消費者行動の変化に合わせて、マーケティング投資やプランニングサイクルの合間で意思決定を適応させることに焦点が置かれています。だからこそ、マーケターは今、まさにアジリティを発揮する必要があります。この点で、「アジリティ」とは、意思決定を促進するアナリティクスへのリアルタイムでスピーディなアクセスが不可欠であることと同義です。
アジリティは企業の規模に関係なく、全てのブランドにとって重要となります。特に誰もが知っているブランド、認知度の高いロゴを持つ大企業は、中小企業よりも大きなリソースに恵まれていますが、優先順位にもとづいた効率的な予算配分、または新たなトレンドを利益化する目的での施策転換を実施できているかどうかは別問題です。固定され、硬直的なメディアプランニングを実施している大規模ブランドは、アジリティを欠く傾向にあります。
しかしながら近年、大企業の中には変化する市場需要や消費者嗜好により迅速に対応する企業も増えてきました。アジャイルなマーケティング方針を採用し、最新のマーケティングテクノロジーに投資することで、これらの大企業は非効率を克服して、市場や消費者に対しより動的な対応を行っています。
グラニュラリティ(粒度)
消費者にリーチし、エンゲージメントを獲得して「つながる」ために、マーケターは「男性」と「女性」という 2つの変数に囚われていた時期がありました。ビッグデータ、アドレサブルメディア、そしてターゲティング機能により、今日のマーケターは性別に依存したマーケティング施策から抜け出し、実在する生活者と真にパーソナライズされたやりとりができるようになりました。
マーケターや広告主にとって、「パーソナライゼーション」は新たな大目標となっています。パーソナライゼーションを駆使してマーケティングを進化させるための次のステップを実現する鍵は、粒度の高いデータと、それを戦術レベルでリアルタイムに大規模に最適化する能力です。競合の一歩先を行くためには、マーケターは迅速に現在の状況に対応し、求められるスキルセットを入手する必要があります。
カバレッジ(範囲)
今日のツールやテクノロジーをもってすれば、マーケティング上の意思決定において、直感や即断は許されません。今後はデータに基づいた意思決定が主流となり、マーケターは、カスタマージャーニー全体を通して、デバイス、プラットフォーム、チャネルを横断して意思決定を行う必要があります。あるタスクにはあるツールを使い、別のタスクには別のツールを使って、2つのアウトプットを組み合わせてひとつの答えを導き出そうとする時代は終わりました。
カスタマージャーニーは、消費者が商品やサービスを購入するかなり前から始まっています。購入に至るまでのステップを理解することは、重要なインサイトとなります。これは大事なポイントです。ニールセンの Annual Marketing Report によると、大小様々なブランドは最優先するマーケティング目的として顧客獲得を挙げています。同レポートの調査対象者は、消費者の全体的な体験に焦点を当てるのではなく、いくつかの厳選されたチャネルへのマーケティング費用を増やすことしか計画していないと回答しています。しかし、ブランドは常にカスタマージャーニーの全行程について考え、投資を行うべきです。
ROI がますます注視される昨今、マーケターは予算規模に関わらず、予算を配分した全チャネルを測定する必要があります。その上で、チャネルを「またいで」配分した予算が示唆することを同一条件下で理解することが重要です。例を挙げると、リニアテレビに投下した 1ドルと Google、Facebook、CTV (コネクテッドテレビ)やその他活用するプラットフォームやチャネルに投下した 1ドルを比較し、違いを理解することが求められるようになります。エンゲージメント、リターン、機会を把握することは大きな意味を持ち、データは常に正しい道筋へと導いてくれるでしょう。そのためには、データは同条件で比較可能でなければなりません。
カスタマージャーニーに存在する全てのチャネルを通じてアジャイルなソリューション、そして精度の高いインサイトにフォーカスすることは、デジタルマーケターにとって最低限必要な行為となり、聡明なマーケターは、全ての側面で妥協を許さないでしょう。実際、最も聡明なマーケターはアジリティ、グラニュラリティ、カスタマージャーニーにおける全チャネルを踏まえたROI 予測の重要性に狙いを定めています。このようなマーケターは前述の3つの要素を活用して、成果ベースのメディアプランニングというマーケティング測定の進化を推し進めています。
INDUSTRY NEWS
The New York Times (ニューヨーク・タイムズ紙)
ストリーミング視聴実態の解明に乗り出したニールセン
6月17日、ニールセンはエンターテインメント業界にとって最大の懸案事項の1つであるストリーミング視聴規模実態把握の解明に一歩近づいたと発表した。近年、Netflix、YouTube、Amazon、Hulu、Disney+やApple TVは米国における数百万人規模の生活者の視聴習慣に革命をもたらした。しかしこれらのストリーミング配信企業は自らの視聴者数データを公表せず、開示する場合でもその範囲は極めて限定的だ。 98年の歴史を持ち、米国で独占的にテレビ視聴率を計測するニールセンは、同一条件下でストリーミング視聴率と従来のケーブル放送やテレビ放送の視聴率の比較を可能にする、新たな指標を発表した。 今回発表されたThe Gaugeは、米国における視聴習慣の変化の全容を解明する試みで、単純な例を挙げれば、視聴者がケーブルニュースチャンネルのCNNとNetflixで配信されるドラマシリーズ『Bridgerton』 を行き来する視聴行動の具体的な把握に貢献する。ニールセンのCEOで元 Akamai 社長のDavid Kennyは「リモコンを手にしているのはあくまでも消費者で、消費者はスポーツのライブ中継、ニュース番組、そしてストリーミング配信サービスを行き来している。その実態を比較可能な方法で解明するには、業界が団結しなければならない」とコメントしている。
Beet.TV (デジタル動画最新ニュース) 消費者習慣全容の把握に欠かせないパネルデータ
消費者が様々な視聴デバイスやサービスから好みのコンテンツを探す方法は増加している。細分化が進行するメディア市場を踏まえ、広告主は生活者の視聴習慣全体像をより具体的に把握する必要に迫られている。 Beet. TV のインタビューでは、ニールセンの製品マネジメント担当 SVP、Kimberly Gilbertiは「テレビとデジタルという従来の線引きの曖昧化が加速している。広告主がターゲットとする消費者に最も効果的な方法でリーチしたい場合、リーチが可能な全プラットフォームをまたいだインサイトが必須となる。以前のように、プラットフォーム別にデータを調べるやり方は通用しないだろう」とコメントした。
MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト) 米GroupM 推定データ:メディア企業上位 25社、総広告費の 2/3 を占める
GoogleとFacebook は世界最大の広告の巨人であることに変わりはないが、世界最大のメディア企業ランキング上位10社にTikTokを所有するBytedance を含む、中国のメディア企業 4社がランクインした。Bytedance は、数年前にはその存在がほとんど知られていなかった。このランキングは、GroupM のビジネスインテリジェンス部門が最近発表した推定値に加え、企業レポートに記載された広告収入見込値の分析に基づいた試算をベースに作成された。
AdWeek (広告業界誌) Covid-19 に対応する米国で CTV 広告費増が加速
広告費という視点では、CTV (コネクテッドテレビ)は急速に成長している市場の 1つ。TVSquared の新たな調査によると、新型コロナウイルス感染拡大期間中、CTV のインプレッション数は急上昇、2021年度はさらなる成長が見込まれる。2021年第1四半期(1-3月期)、CTV のインプレッション数は 2020年第4四半期(10-12月期)比で 14% 増加した。TVSquared によると、調査対象となった100名超のマーケターの65% は、今年度のCTV 広告費の「適切な」(5-20%)増加を計画していると回答、また5人に1人がCTV 広告費の 20%以上の増加を予定している。

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