NielsenGlobal Media.jpg

MEDIA WEEKLY 2021年4月27日~5月11日                  

PERSPECTIVES

デジタルオーディエンス測定の未来に向けて

ニールセン データサイエンス担当 SVP Jonathon Wells

サードパーティクッキーが存在しない世界の現実化が進行する中、多くのマーケターは新たなツールやテクノロジーに注目していますが、彼らの話題の中心になっているのはプランニングとターゲティングです。これらはデジタルマーケティング戦略の重要な側面であることは言うまでもありませんが、デジタルメディア環境の変化が加速する中で、正確な測定の必要性を排除しないことも重要です。


重要なことは、プライバシー保護に関する要求の高まりに対応するために業界が行ってきた変化は、デジタルマーケティングのあらゆる側面に影響を与えているということです。デジタルオーディエンス測定の世界においてもプランニングやターゲティングと同様にcookieやMAID(モバイル広告ID)があるかないかでは大きく状況は異なります。


もう一つ指摘しておきたいのは、消費者ファーストのデジタルマーケティングへの移行は、マーケティング担当者が扱うべきデータやインサイトが、これまで慣れ親しんできたものとは異なるということです。言い換えれば、古いプロセスを同じ型にはまる新しいプロセスに置き換えるという単純な話ではないということです。


ご存知のように、CookieやMAIDなどのデジタル識別子への第三者のアクセスが制限されるようになると、マーケティング担当者は自社のキャンペーンを見た人を正確に把握することが難しくなります。プラットフォーマーなどの各企業が自らの利用者に関する情報へのアクセスをそれぞれの方法で制限することにより、これまで業界が採用していた広告露出と視聴者属性とを結びつける決定論的なアプローチが実行できなくなるからです。


測定サービスも、従来型の人と利用デバイスを認識する手法ではなく、今後はプライバシー要件に合致した方法で人と利用デバイスを認識する新たな手法を確立する必要に迫られています。効果を発揮する新たな識別子に求められる要件を以下に挙げます。


- 「人」中心
-  持続性(長期的な安定性)
-  普及性(ウェブ業界全体で一貫して利用されること)
-  移転/拡張性(異なるデバイスやアクセスポイント間でクロスプラットフォーム測定が実現できること)


しかし、上に挙げたような新たな識別子だけではおそらく全てのデジタルインプレッションを測定することはできないでしょう。このギャップを埋めるためには、識別子を利用しないソリューションによりデジタル測定を強化する必要があります。ソリューションの効果を最大化するには、確率論的な設計、機械学習の重用、視聴者属性を特定するために、インプレッションがどこでどのように発生したのかという手がかりやシグナルを利用した文脈的なアプローチが必要になります。


デジタルマーケティングは、特殊な時代に突入したと言えるでしょう。この新しい現実の中で包括的な測定を行うために、テクノロジー企業が解決しなければならない重要な3つの課題があります。まず、パブリッシャー(特にウォールドガーデンと呼ばれるパブリッシャー)のオーディエンスを測定することに対し、測定サービス会社とパブリッシャーの間の合意が重要になります。次にその他のオープンウェブオーディエンスを判別するために、測定会社はライセンスされたサードパーティ利用者登録データを責任ある形で活用する代替IDソリューションを開発する必要があります。最後に、個人やデバイスの識別子が全く存在しない匿名化されたウェブを前提としたモデルの開発も必要となります。


デジタル時代の今、明日のソリューションのためにビッグデータ、機械学習、人工知能に簡単に頼ることができます。しかし、ブランドやマーケターは、現代のマーケティングにおいて、実在する人間の重要性を見失うわけにはいきません。バイアスやエラーを補正するためには、直接観察することが重要であるため、人をベースにした真実のデータセット(パネル)がこれまで以上に重要になります。

測定の進化が進むにつれて、重要なトレンドブレイクを認識し、計画することが重要です。 この進化を推進する環境の変化は、オーディエンスの測定方法を根本的に変えるでしょう。 測定の基礎が変わることで、顕著な傾向の変化が予想されることを理解する必要があります。



INSIGHT

ファーストパーティデータだけでは不十分な理由

消費者がブランドにパーソナライズされた体験を求めるようになった今、高品質なデータの必要性を疑問視するマーケターはいないでしょう。しかし、その必要性にもかかわらず、データの質はあらゆる規模のブランドにとって大きな障害となっています。つまり、多くのマーケターは、消費者が求めている関連性のあるつながりを確立するのに苦労しているのです。


ファーストパーティデータは、あらゆるブランドのマーケティング活動の生命線であり、今年のNielsen Annual Marketing Reportの調査対象となったマーケターの86%がその重要性を認識しています。しかし、このような認識にもかかわらず、データの品質に対する信頼度は全体的に低いものとなっています。例えば、大企業(本レポートでは、マーケティング予算が1,000万ドル以上の企業と定義)のマーケティング担当者の41%は、データの正確性を課題と捉えています。しかし、それは大企業に限ったことではありません。

MM20210511_001.jpg

データは、消費者が求めるパーソナライズされた体験の開発には不可欠ですが、ファーストパーティデータはブランド固有のインタラクションに特化しています。そのため、特定のブランドから離れたところでの消費者行動に関する情報を入手することができません。消費者がブランドと関わっていないところでの行動を把握するためには、セカンドパーティデータやサードパーティデータが有用となります。真のオムニチャネルマーケティング を実践するには、マーケターはブランドとの直接的なエンゲージメント(深い関係性)を越えた情報が必要です。顧客獲得が最優先される 2021年において、ブランドは自らのファーストパーティデータを強化するために、データパートナーシップに着目する必要があります。

MM20210511_002.jpg

データは、無数のソースから入手することができます。接続性とデジタルインタラクションの増加に伴い、新たなデータソースが続々と登場します。しかしながら、様々な規模のブランドは実際の購入、クレジットカードでの支払いやウェブページでのインタラクションなど、主にカスタマージャーニーの最後のアクションを示すデータソースに注目する傾向にあります。マーケティング担当者がカスタマージャーニーの最終地点だけでなく、全体に注目するようになると、全てのタッチポイントを特定するためにはマルチタッチ アトリビューションソリューションが極めて重要となります。

MM20210511_003.jpg

新型コロナウイルスの感染が1年続き、このウイルスから得られた学びが蓄積されつつある現在、混乱と変化が続く中で消費者とどのように関わっていくべきかを知るためには継続的なデータ収集が必要です。データ浸食が進む中、データパートナーシップを最優先に考えるべきです。マーケティング施策を今後成功させるには、「データ」と「個人レベルでのブランド・企業とのエンゲージメント」が必須となります。幸い、多くのツールやソリューションは、様々な規模のブランドに利益をもたらすよう設計されています。


2021 Nielsen Marketing Report: Era of Adaptationをダウンロードして、さらに詳細なインサイトをご覧ください。








INDUSTRY NEWS

The Hollywood Reporter (エンターテインメント業界誌)

ニールセン、動画ストリーミング計測を拡大

タイトル別視聴ランキングに加え、新たにプラットフォーム別視聴時間に対するインサイトを提供
ニールセンは特定のプラットフォームの視聴時間を計測する新たな製品を通じて、動画ストリーミング視聴実態のさらなる深掘りを進める。テレビ視聴率を提供する同社は、様々なストリーミング配信サービスの視聴時間に対するインサイトを提供する新製品、Nielsen Streaming Video Ratingsを導入する。同製品はタイトル別にストリーミング時間を計測し、週間トップ 10 リストを作成するニールセンの SVOD Content Ratings に続く製品として位置づけられている。同社が提供するテレビ視聴率同様、Streaming Video Ratingsにより、ストリーミング配信視聴者数をプラットフォーム別に横並びで比較することが可能になる。


Bloomberg (ブルームバーグ)
米AppleとGoogle がcookieを廃止する理由

cookieに別れを告げる時が来た。数年にも渡る議論の末、AppleとGoogleはそれぞれの方法で、マーケターが消費者のオンライン活動を追跡し、個人の嗜好に合った広告を配信するためのソフトウェアを実質的に抹殺する。両社の動きはインターネット黎明期以来、企業がオーディエンスにリーチし、広告から利益を上げる方法をひっくり返すことになる。Appleの計画はプライバシー保護を唱える人たちにとって満足のいく内容だが、モバイルアプリ開発者、アドテク企業や同社のライバル(主に Facebook)を憤慨させている。一方、Googleは、同社のChromeブラウザに論争の的となるアップデートを近々行う予定、アップデート後にはウェブサイトに掲載される広告のターゲティングが根本的に変わることが予測される。これらの変更を通じて、両社は通常政府のみが持つ権力を行使することになる。



MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト)
米YouTube、IAB Newfrontsで新番組とCTV広告メニューを発表

広告モデル動画プラットフォームのYouTube は 5月4日、IAB NewFronts での同社のプレゼンテーションにて、オリジナルの新番組と同社のコネクテッドテレビ(CTV)広告の新機能を発表した。新機能により、視聴者は動画を観ながら広告をクリックして、広告主のウェブサイトにアクセスすることができる。広告主は、Google Adsでのブランド拡張を通じて獲得したコンバージョンを計測することが可能になる。



AdAge (広告・メディア情報&ニュース)
米Amazon、Fire TV、Prime、Twitch の新広告枠を開発

Amazonの巨大な販売・コンテンツプラットフォームにおける存在感を高めたいというブランド側のニーズを受け、Amazon は製品アップデートを通じて同社のFire TVやPrime、Twitch を含むストリーミング配信サイトにより多くの広告枠を設定する。同社は、Fire TVに追加される新たな広告スペースを発表。Fire TVは、5000万人超の視聴者を有するコネクテッドTV に動画を配信するデバイス。新しい広告ユニットのひとつは、"sponsored content rows "と呼ばれるもので、この広告は、主にメディアやパブリッシャーが番組や映画を宣伝するためのもの。ストリーミングアプリを持つTVネットワークや、映画のサブスクリプションサービスなどのブランドは、視聴者を惹きつけるために最大10タイトルを列に表示することができる。



Bloomberg (ブルームバーグ)
米Citigroup による広告成長鈍化予測を受け、AlphabetとFacebook の株価が下落

Citigroup Inc. によるデジタル広告の今後の見通し予測を受け、5月10日、Alphabet Inc. と Facebook Inc. の株価が下落、これによりインターネット関連の株価全体が下落傾向となった。デジタル広告は、インターネット業界にとって重要な収入源。Citigroup はデジタル広告を収入源とする企業を「注意が必要」とし、両社の格付けを「バイ」から「ニュートラル」に格下げした。広告予算は今後もオンラインへとシフトすることが予測されるが、デジタル広告の成長は減速が見込まれるため。



The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
米における春のテレビ広告枠販売シーズン到来、2020年コロナショックからの反発が期待

C毎年恒例となった「アップフロント」の季節が到来した。アップフロントとは、広告主が秋からスタートするテレビ新シーズンに放送される番組コマーシャル枠を先行買付するテレビ広告枠の一大取引イベント。今年のアップフロントでは、コロナショックを受けた 2020年からの反発が期待され、ストリーミング配信プラットフォームへの予算シフト加速が予想される。昨年に感染が拡大した 昨年のCovid-19は、テレビ番組の制作を中止させ、スポーツ中継にも大打撃を与え、2020年のアップフロントに大きな影響を与えた。パンデミックにより、一部の広告主はアップフロントの存在意義を疑問視し始めた。テレビストリーミングが台頭する現在、アップフロント自体の近代化が遅々として進まないからだ。事実、アップフロントに関する進展は今のところ確認されていない。


bar.jpg