INSIGHT
豪州における新車売上の回復に伴い、広告予算を増やす自動車メーカー
メディア業界グループ アドインテル コマーシャル Rose Lopreiato メディア業界グループ担当ディレクター Michael Brown
COVID-19の影響による広告予算削減という暗いニュースが次々と発表される中、一部の業界では広告予算の増加が見受けられる。これらの業界にはパンデミックによって需要が高まっている日用消費財や eコマースに加え、想定外の業種も含まれている。
売上減という一般的な傾向に反している自動車業界では、公共交通機関の代わりに自動車というパーソナルな移動手段に頼ろうとする消費者とのエンゲージメント獲得を狙い、広告予算が強化されている。自動車サイト、SUVブランドやディーラーグループの活動についてニールセン アドインテルのデータによると、豪州における自動車業界の広告費は2020年5月から6月にかけて増加した。
豪州では、多くの州でロックダウンが解除されつつある。移動が厳しく制限されなくなりつつある現在、自動車検討層とエンゲージメントを獲得したい自動車ブランドにとって、より多くの広告投資は重要な意味を持つ。またCOVID-19の感染拡大は、生活者の行動に変化をもたらした。ロックダウン期間中の生活者によるメディア接触の増加により、企業のマーケターは広告戦略の見直しを迫られた。
ロックダウン期間中、豪州における自動車の新車販売は急落した。2020年4月に 48.5%減を記録した後、自動車業界は回復基調へと転じ、6月末時点の新車販売台数は対前年同月比で-6.4%にまで回復した。主な要因として消費者や企業が年度末の大幅値下げキャンペーンを狙ったこと、さらには豪州政府が資産の即時償却施策を打ち出したことが挙げられる。事実、豪州における2020年6月期の新車販売台数は 1万台超となり、今後数か月に渡る在庫不足が懸念されている。
この自動車業界の事例は企業が危機に直面し、予算削減を迫られた場合においても、対消費者コミュニケーションを怠らないことがいかに重要かを示している。ニールセンの調べによると、2020年度内に全く広告を行わないブランドは、2021年には収益が最大11%減となる可能性がある。
新型コロナウイルス禍での自動車検討層のプロフィールの深堀を目的とした最新のニールセンNielsen Consumer & Media View (CMV) データを見ると、新車と中古車共に需要増の傾向にあり、特に25歳から39歳の男性の需要が高まっている。同データは、2020年2月から4月にかけて実施した調査に基づいている。
2020年2月から4月にかけて、豪州の地方部に在住する18歳から24歳の生活者の新車検討意向は倍となり、2019年12月- 2020年2月期に対して8%となっている。都市部に目を向けると、25歳から39歳の生活者の新車購入意欲は顕著に高まり、2019年12月- 2020年2月期の9%から12%に上昇した。
今後6か月以内に新車購入を検討している層に対し、検討対象となる自動車ブランドを聞いたところ、Audi、BMW、JEEPおよびトヨタの検討意向の高まりが確認された。 広告費を見ると、自動車業界における2020年1月- 6月期の広告費ランキング上位 10社のトップ3はトヨタ、現代、三菱自動車。
今後の展開を考えると、自動車メーカー各社はそれぞれが発信するブランドメッセージを進化させ、常に消費者に寄り添う内容とする必要があるだろう。
COVID-19によって広告業界は確実に変化し、広告主企業やマーケターにとっては戦略を見直す機会となった。自動車メーカーが「ニューノーマル」(新しい日常)で成功を収めるには、消費者におけるトップオブマインド認知を確保し続けることが鍵となる。
ニールセン 2020年度自動車マーケティングレポート:多文化消費者層とのつながり強化の重要性
テクノロジーの進化により、消費者が自動車を買う方法は変化した。そしてCOVID-19の感染拡大がこのトレンドをさらに加速している。パンデミックのピーク時に確認された生活者の行動変化は今後定着し、多くの業界にとってオンラインでの買い物が新たな日常となることはデータによって証明されている。
自動車メーカーのマーケターがニューノーマルに対応する上で、最優先事項となるのが多文化をルーツとする消費者層へのリーチだ。今日の一般消費者層と比べ、多文化層は年齢が若く、デジタルにより精通しており、今後の新な消費者インサイトを提供しうる重要な消費者グループを形成する。
多文化層は未来の消費者像を予告するだけではなく、未来の消費者そのものとなる。2020年現在、米国の総人口の40%は多文化をルーツに持ち、多文化層比率は25年後には50%に到達する見込みだ。
新車購入に関しても、多文化層は非多文化層とは異なる、独自の購入ファネルを通じて購入に至る。自動車メーカーがパンデミックの過度な影響を受けた多文化層と今現在つながることは、今後長期的な関係を構築する上で極めて重要となる。
ニールセンの2020年自動車マーケティングレポートは、多文化層の新車購入プロセスの独自性を網羅し、多文化層に対するアプローチに向けた効果的かつ効率的な予算活用の一助となることを目的に作成された。
レポートの主な内容 • 多文化層と非多文化層の購入ファネル比較(ブランド認知、検討、広告想起)。 • 多文化層をターゲットとするデジタルやオムニチャネル戦略を実行してつながりを持つことが、自動車業界全体の成長課題の克服につながる。 • ヒスパニック、アフリカ系やアジア系アメリカ人に対し、それぞれにとって重要な「モーメント」においてリーチを獲得する戦術的な提言。
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INDUSTRY NEWS
The Drum (マーケティング・メディア業界向けニュース)
全世界の消費者による行動の同一化
ニールセンのインテリジェンス部門をグローバルで統括する Scott McKenzie (スコット・マッケンジー)によると、今年の1月以降、全世界の消費者の行動は極めて同一化している。同氏に対し、生活者の消費習慣に対する COVID-19 の影響、さらには市場を形成するマクロトレンドについての見解を聞いた。 まず消費に関して、全世界の消費者のほとんどが同じ行動を取るという現象は、過去の歴史を見ても極めて例が少ないと言える。発端はCOVID-19に対するニュースへの反応だ。パニック買いや買い溜めは、ニュースを視聴した一部の消費者によって始まった。各国の政府がロックダウンを発動したことによって、人々は自宅で食事を作り、自宅での新たな楽しみ方を発見した。調査を通じて消費者にアフターコロナ時代の行動について聞いたところ、自宅でより多くの時間を過ごすという習慣を今後も続けるという回答が得られた。
Ad Exchanger (デジタルマーケティングニュース) 米ニールセン、エージェンシーデータプラットフォーム向けメディアプランニングツールを構築
年齢や性別だけに基づいたメディアプランニングは過去のものとなり、広告エージェンシーは自らのファーストパーティデータプラットフォームを活用してプランニングやアクティベーションを行っている。しかし高度なセグメントを用いてテレビ、デジタルやラジオなどの媒体をミックスした広告キャンペーンをプランニングするツールを利用する場合、時間がかかる手作業でのマッチングや単調な重労働が求められる傾向にある。このような問題を解決するために、ニールセンはAudience Plannerを構築した。Audience Planner は「自動車購入意欲の高い層」などの高度なセグメントを指定し、オーディエンスにマッチした放送ネットワークや番組を特定するツール。さらには指定したオーディエンスへのリーチカーブのスナップショットや年齢や性別、年収などオーディエンスの目立った特徴を提供することで、効果・効率の高いプランニングを支援する。
CNBC 米Google、他人の監視や追跡を目的とする製品やサービスの広告を禁止
Googleは新たな広告ポリシーとして、許可なしで他人を追跡、監視することを目的とした製品やサービスの広告を認めないことを発表した。 同社の広告ポリシーのアップデートとして、新たなポリシーはテキストや通話の監視、履歴の閲覧など、パートナーや配偶者を監視するために利用されるスパイウェアやテクノロジーに適用される。適用範囲には相手の許可なしでスパイ行動をする際に利用されるGPSトラッカー、さらにはスパイ行為を目的とする監視機器(カメラ、音声レコーダー、ドライブレコーダー、ベビーシッターカメラ)も含まれる。
The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙) 豪州政府、Facebook と Google にニュースコンテンツに対する支払を要求
豪州政府は米のFacebookとGoogleに対し、豪州のメディア企業が発行したニュースを自社プラットフォームに表示した場合、そのことであげた収益をメディア企業に支払わせる新たな規則を導入する計画を発表した。大手アドテク企業の収益をローカルメディア企業に補償させたい他国にとっては、先例が作られることになる。 7月30日に発表された豪州競争当局の声明によると、オーストラリア連邦議会での可決が必要となる新たな規則は大手アドテク企業に対し、メディア企業と支払に関する交渉の場につくことを義務付ける。3か月の交渉期間中にメディア企業と大手アドテク企業が合意に達しない場合、独立仲裁人がいずれかが作成した補償計画を選択する。決定は法的拘束力を持つ。

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