PERSPECTIVE
未来のために:リニアテレビ広告進化の必要性
Kelly Abcarian、ニールセン アドバンスドビデオ広告担当ゼネラルマネージャー
日々のメディア接触について聞かれた場合、大方の生活者は好きなテレビ番組、最近はまっているテレビゲームや最新のNetflixのオリジナル番組などが頭に浮かぶのではないか。興味深いことに、広告が挙げられることは滅多にない。この現象は、日々の生活における広告の重要性が過小評価されていることを示している。 長年、テレビ広告は生活者に大きな影響を与えてきた。オーディエンスリーチに適したメディアとして確立されたテレビは、生活者の購買意欲を掻き立てるパワーを持つ。現在でも、テレビはプレミアムなコンテンツの視聴意欲を後押しするメディアだ。視聴者に対して教育や情報を提供する、観ている人を夢中にし、エンゲージメントを獲得するなど、テレビは信頼の置けるメディアとして認識されている。そしてこれらの特性は時代を越えて存続するだろう。
COVID-19の影響による大きな変化を経て、ビジネスや企業は春に一旦停止した活動を再開し始めている。広告はビジネスを元の軌道に戻るのを助けることができる。しかし、注意したいのは、今年に入って人類が経験した大きな変化を踏まえ、さらには今後起こりえる変化を見据えた具体的な広告メッセージを開発、発信することだ。
COVID-19以前に目を向けると、テレビ業界は生活者の動画視聴習慣の変化に苦慮していた。OTTデバイスの普及により、生活者は家庭での総テレビ視聴時間のほぼ20%をストリーミング配信コンテンツに費やしていた。米国でCOVID-19の感染が確認された3月、パンデミックによって新たな視聴習慣はさらに確固たるものとなっていった。6月1日の週を見ると、生活者が動画ストリーミング配信に費やした時間は1261億分となり、前年から49%増加している。多くの生活者が新たな視聴習慣を取り入れる中、テレビ業界はリニアテレビにおけるアクセサビリティへの移行を加速する必要に迫られている。
既にデジタル、ローカルケーブルテレビやコネクテッドテレビといったメディアにおいては、ブランドはアドレサビリティによって意図する消費者のエンゲージメントを効果的に獲得し始めている。とはいえ、動画視聴の主流は今現在も全国ネットのリアルタイムテレビやケーブルテレビであり、そのリーチはテレビを視聴する成人人口の80%にも上る。日々のテレビ視聴行動を見ると、米国在住の成人は、1日平均でほぼ4時間をテレビ視聴(リアルタイムおよびタイムシフト視聴)に費やしている。この数字は、1日当たり56分のアドレサブル広告が配信されるポテンシャルを示している。アドレサブルテレビを拡大するひとつの方法として、スマートテレビが挙げられる。米国のテレビ保有世帯の53%が利用するスマートテレビを活用することで、アドレサブルテレビを迅速に拡大することができると考える。
今年の後半から2021年にかけての宣伝計画の検討を開始する企業のマーケターやパブリッシャーに伝えたいことは、アドレサブルテレビは広告配信の精度やアカウンタビリティを向上し、広告の意義を高める機会をもたらすということだ。アドレサブルテレビの高い精度により、マーケターやパブリッシャーはよりピンポイントなメッセージを発信できる他、新たな方法でターゲットとする消費者と関係を築き、ひいては「ポストCOVID-19」時代の経済の再活性化を促進することが可能になる。
パーソナライズされたブランドと消費者とのコネクション構築 今日、マーケティングの世界では「オーセンティシティ(authenticity)」という言葉が頻繁に使われている。しかしながら、特定の消費者グループが「オーセンティシティ」を感じられる全国規模の広告キャンペーンを開発するのは至難の業だ。さらには移り気な消費者のブランドロイヤルティは低下傾向にあり、「購入するブランドに深く関わりたい」と感じる消費者は全世界で僅か8%にしか過ぎない。消費者が自ら購入したブランドに深く関わりたいと思わなければ、そのブランドの未来は明るくないだろう。アドレサブルテレビ広告は異なるメッセージを異なる視聴者に配信することを可能にするため、視聴者とブランドや企業とのコネクション構築のきっかけとなる。もっと言えば、特定のニーズや目標を持つ一部の生活者が共感を覚えるコネクションを築く一助となる。アドレサビリティの他の利点として、無駄の排除が挙げられる。特定のオーディエンスを効果的にエンゲージすることができれば、配信する広告数を減らすことができ、視聴者体験の質が向上する。さらには同じ広告、トピックスやテーマを繰り返し視聴することで発生する視聴者の「飽き」を回避することも可能だ。
最も重要なポイントは、アドレサビリティはブランドやマーケターが現在最も必要とする柔軟性を提供するということ。新型コロナウイルスによって世界は変わってしまったが、世界が直面している問題は人類が初めて体験するウイルスだけではない。世界に訪れる様々な変化によってマーケターが抱えるリスクは高まったが、アドレサブルテクノロジーの活用によって、ターゲットオーディエンスにとって意味のあるメッセージの開発や配信が可能になる。
人類が歴史から学んだことの ひとつとして、人類は危機が訪れると今まで以上の力を発揮することがある。イノベーションを起こすことは、たやすくない。世界がパンデミック、上昇する失業率や世界で広がりつつある社会不安に瀕している時はなおさらだ。しかし見方を変えれば、これらの要因は広告配信の進化を業界が一丸となって推し進める理由となる。アドレサブルテレビ広告は、広告主が長年待ち望んでいた柔軟性、価値や消費者とのコネクション構築をもたらすのだから。
CASE STUDY
「いいね」や「シェア」数に留まらないインフルエンサーマーケティング効果の計測
ニールセンのInfluencer Brand Effect (インフルエンサーブランド効果)は、ブランドのKPIに対するインフルエンサー戦略効果の測定や評価を支援するサードパーティの計測ツールだ。Lucozade EnergyとThe Fifthは、ソーシャル動画シリーズ広告の効果検証にInfluencer Brand Effectを採用した。このケーススタディでは、英国で最も有名なインフルエンサー6名を採用したソーシャル動画シリーズ広告のターゲットとするジェネレーションZオーディエンスへの影響を評価する方法を紹介します。
多くのブランドや広告エージェンシーにとって、インフルエンサーマーケティングキャンペーンの効果や貢献度の評価指標は「いいね」の数やシェア数に留まっている。ニールセンのInfluencer Brand Effectは、ブランドのKPIに対するインフルエンサー戦略効果の測定や評価を支援するサードパーティの計測ツールだ。
ターゲットとする Z世代のオーディエンスに対し、ブランドの自分事化と「ポジティブなエネルギー」というイメージの獲得を目指した飲料ブランドのLucozade Energyとその広告エージェンシー、The FifthはニールセンのInfluencer Brand Effect を採用、英国で最も有名なインフルエンサー 6名が登場した #POSITIVECHAIN ソーシャルメディア動画シリーズ広告の効果測定を実施した。
Influencer Brand Effectは、ターゲットとする18歳から25歳までのオーディエンスが最も共感したインフルエンサーコンテンツを特定。さらにはクリエイティブ評価やセンチメント解析などの機能・ツールにより、今後のインフルエンサーマーケティング改善に向けたアプローチの精査を支援した。
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INDUSTRY NEWS
Forbes (経済誌)
米Google、一部のパブリッシャーに対するコンテンツに支払に同意
Alphabetが所有するGoogle は 6月25日、パブリッシャーとのトラブル解決に向けた対応を発表した。発表によると、同社はオーストラリア、ブラジルおよびドイツの一部のメディアグループに対し、質の高いコンテンツに対して支払を行う。支払対象は今後拡大する予定。 今回支払対象となるのはニュース週刊誌Der Spiegelを発行するドイツのSpiegel Group、ブラジルのメディア企業Diarios Associados、そしてオーストラリアでローカル紙を発行するSolstice Mediaの3社。
Reuters (ロイター通信) 米Google、利用者のロケーションやウェブ履歴を18か月後に削除
Alphabet Inc. 傘下のGoogleは6月24日、新規利用者に対し一部のロケーション履歴を18ヵ月後に自動的に削除し、利用者が追跡されることなく同社の検索エンジン、Googleマップや YouTubeアプリをアクセスできるようにすると発表した。 世界最大級の検索エンジンによるデータ収集に批判が集まる中、同社から利用者のプライバシー管理のアップデートが登場した。カリフォルニア州や欧州で施行されている新プライバシー法により、インターネット企業は過去2年間に渡ってビジネス慣習を変更する必要に迫られた。Google は過去数か月、データ収集で不正を行ったとして複数の消費者や検事総長から起訴されている。
The Wall Street Journal (ウィールストリート・ジャーナル紙) 米 Facebookをボイコットする広告主の新たな広告掲載媒体
消費者への広大なリーチと強力な広告ターゲティング機能により、多くのマーケターにとってFacebook Inc. は外せない媒体として重宝されてきた。調査会社eMarketerの予測によると、FacebookとInstagramの今年の広告収入は、米国における2020年デジタル広告収入の 23.4%に相当、これはGoogleに次ぐ数字で、同社にとって最大のライバルのAmazon.com Inc. の広告収入を大きく上回る。
MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト) 米Microsoft、中小企業向け単一広告プラットフォームを開発
Microsoftが提供するMicrosoft Advertisingは、検索やソーシャルプラットフォームにおける中小企業の広告配信を支援するGarage Projectを発表した。同プロジェクトはBingやGoogleなど、ソーシャルメディアから検索まで様々な媒体で配信する広告キャンペーンの一括管理を可能にするプラットフォームの開発を進めている。このプラットフォームは、広告主企業の予算に応じて全媒体での広告効果をモニタリングし、パフォーマンスを最適化しながら予算を複数の媒体に割り当てる。また広告、拡張、キーワードの自動生成も行う。ワンパーソンショップ(個人会社)に代表される小規模のエージェンシーパートナーは、既に開発中のプラットフォームに関心を示しており、テストへの参加意欲を見せている。

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