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MEDIA WEEKLY 2020年6月22日号                     

COVID-19 MEDIA INSIGHT

世界がパンデミックに直面する中、デジタル広告の課題克服に向けてやるべきこと

世界規模のメディアエコシステムは、新たな脅威に直面している。新型コロナウイルス(COVID-19)が経済に与える影響により、さらには感染拡大や死者数といった日々大々的に報道される暗いニュースから距離を置くために、企業のマーケターは広告予算を削減している。そして世の中を見渡すと、COVID-19関連広告が絶え間なく掲載されている。今後、人類はCOVID-19と少なくとも中期的に共存しなければならないことを考えると、縮小するマージンを回復させるためにはエンゲージメントの強いオンラインオーディエンスの活用が極めて重要なテーマとなる。


世界中の生活者はCOVID-19の情報源としてオンラインに殺到し、感染に関する最新情報にアクセスしている。これは媒体側にとってはオーディエンス増という良いニュース。広告枠のバイヤーにとっても、理想的かつエンゲージメントが高いオーディエンスへのリーチは、過去に例を見ないほど容易になった。


パンデミック流行のステージは国によって異なるものの、18歳以上の日本、米国、オーストラリア、タイ在住の生活者は情報を得る手段としてデジタルデバイスを活用し始めている。イタリアは3月初旬からロックダウンを開始、オーストラリアは3月中旬にロックダウンに踏み切り、タイと米国は3月末、日本では4月頭からロックダウンが始まった。今年3月のニュース視聴時間は昨年同時期比で大幅に増加しており、特にモバイルデバイスでのニュース視聴時間の増加が顕著だった。


ニュース視聴の急増や全体的なメディア接触習慣の変化は、オンラインパブリッシャーに絶好のビジネス機会をもたらした。世界経済フォーラムが発行した 「消費者と業界の視点を通じたメディア価値の把握」(Understanding Value in Media: Perspectives from Consumers and Industry)というタイトルの白書に掲載されたニールセンの調査データを見ると、中国、ドイツ、インド、韓国、英国および米国在住生活者の平均16%は有料ニュースコンテンツを利用している。他方、53%は今後有料ニュースを利用したいと考えている。パンデミックを通じて特定のパブリッシャーのニュースを視聴し始めた生活者に対し、オンラインパブリッシャーは新加入者獲得に向けた積極的なアクションを取るタイミングを迎えている。消費者の飽きを封じると共に、経済的に厳しい状況下を考慮して、スキニーバンドルを検討する価値は十分にある。

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一方でCOVID-19感染拡大期間中、全世界でCPMが大幅に下落したが、小規模から中規模の広告主企業にとってはインプレッションを低価格で購入するチャンスが到来した。一部のブランドマネージャーは、広告掲載はブランドイメージにとってリスクが大き過ぎるという判断をしたが、より大きなオーディエンスにリーチするにはコスト効率が良いと現在の状況を分析するマネージャーも存在する。


2020年第1四半期(1-3月期)、全世界におけるデジタル広告インプレッションはモバイル(+32%)、OTT(+182%)の両デバイスで前年同時期から大幅に増加したが、パソコンでのデジタル広告インプレッション数は9%減少した。過去数年間に見受けられたこれらの傾向は、パンデミックによって増幅したと言える。安価なCPM率というチャンスをものにするためには、マーケターは自らが管理する予算から少額を確保し、今までテストやトライアルを行っていない広告フォーマットに投資することを再考するべきだろう。

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世界がパンデミックに苦しむ最中、デジタル広告の売買には様々な課題が存在する。パンデミックの現在のステージを考慮すると、短期から中期的なスケジュールで活動を計画し、過去最低レベルのCPMを利用しながら常に機会とリスクを再評価することがマーケターにとって最良の判断と考える





INDUSTRY NEWS

Tech Crunch (テクノロジー業界ニュース)

ロックダウン解除後も高レベルで推移するコネクテッドテレビ視聴

ニールセンによると、COVID-19感染拡大対策として米国で施行されたロックダウン期間中のテレビ・動画ストリーミングサービス視聴時間増は、「新たな日常」になるかもしれない。ロックダウン最盛期、週当たりのコネクテッドテレビ視聴時間はメディアの全体的な接触時間と共に上昇、数週間に渡り10億時間超の増加が計測された。政府が自主隔離やその他規制を緩和した現在でも、コネクテッドテレビの利用はCOVID-19以前よりもはるかに高いレベルで推移している。コネクテッドテレビとはスマートテレビ、インターネット接続デバイス、ゲーム機などを指し、従来の地上波やケーブルテレビ放送という枠を超えて多種多様なエンターテインメントを楽しめる手段として米国で利用が拡大している。

Tech Crunch (テクノロジー業界ニュース)
米、英、スペインの子供、TikTok視聴時間がYouTubeと同レベルに

子供のアプリ利用や習慣に関する新たな調査を通じて、YouTubeの圧倒的な優位性を揺るがす事実が明らかになった。米国、英国およびスペイン在住の子供たちの動画視聴時間は Googleのオンライン動画プラットフォームやTikTokなどの動画視聴アプリ、NetflixやRobloxなどのモバイルゲームなど、細分化が進んでいる。4歳から15歳までの子供の1日当たりのYouTubeの動画視聴時間は平均 85分、対してTikTokの動画視聴平均時間は80分。さらに調査レポートによると、TikTokは2019年における子供のソーシャルアプリ利用100%増を牽引、2020年に入ってからも200%の利用増に貢献している。



The Verge (テクノロジー関連ニュース)
再びテレビの席捲を狙う米 Google

Googleは世界最大かつ最も重要な動画プラットフォームを保有しているにも関わらず、不思議なことに家庭で愛用される動画視聴スクリーンとしてはほとんど選ばれていない。
理由として挙げられるのは、同社が一部の商品領域で的外れとも思える展開を行っていること。例えば消費者向け技術、ソーシャルネットワーキング、メッセージング、音楽ストリーミング配信、そして何といっても最もずれているのがテレビだ。GoogleはChromecastを展開しており、テレビセットにAndroid TVを内蔵する戦略を推し進めてきたが、Roku、Amazonや Appleにすら追いついていない。



AdWeek (アドウィーク誌)
ニールセン、スタジアム内のホワイトスペースの価値を評価するスポーツ業界向けサービスを提供

ロックダウン解除に伴い、テレビには無観客のスポーツ中継番組が徐々に戻りつつある。各種スポーツ団体のチケット売上機会損失の回復を支援するために、ニールセンが提供する Nielsen Whitespace Valuationサービスは、世界中のスポーツ会場における新たなブランド構築機会のメディア価値を体系的に評価する。拡張されたニールセンの同サービスはスポーツ業界に対し、スタジアム内資産の新たな活用やスポーツ団体がブランド構築、エンゲージメント、スポンサーシップ機会として活用可能なソーシャルメディアコンテンツの査定を可能にする。さらにはスポーツチームや権利所有者にインサイトを提供し、現在は無観客で行われている試合での新たな売上機会の実現化を支援する。ニールセンスポーツのマネジングディレクター、Jon Stainer (ジョン・ステイナー)は声明を通じて「無観客でスポーツの試合が行われる移行期間において、よりクリエイティブな発想でビジネス目標を達成し、新たな資産の価値換金を推進するなど、ニールセンは独自の手法を通じてスポーツチームや権利所有者を支援する」とコメント。


The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
米の大手広告主企業、テレビのアップフロント開催時期の「タイムシフト」を要求

主要ブランドを保有する米国の大手広告主企業や広告業界団体はテレビネットワークに対し、毎年恒例のテレビアップフロント広告市場を今年の後半に延期するよう、要求している。実現すれば、過去数十年間続いてきたテレビ業界の慣習が変わることになる。
この要求は番組制作の中止やスポーツ競技開催の不透明な状況など、新型コロナウイルスがテレビ業界に与えた大損害にも起因している。広告主企業にとっては、投資対象が見えないからだ。さらに多くの広告主企業は最近の企業活動の減少を受けて広告予算を削減しており、広告予算も常に変化している。多くの企業やブランドは、来年度の予算計画に苦慮している。


MediaPost (広告メディア専門ニュースサイト)
米ANA、テレビ業界に対しアップフロントの延期とカレンダーイヤーでの広告枠販売を要請

広告業界に対して業界のインクルージョンとダイバーシティの向上を目指す抜本的な変革を要請した翌日、米国の広告業界団体ANA (全米広告主協会)は6月10日、メディアエコシステムにおける「抜本的な変革」を新たに呼びかけた。具体的にはテレビ業界に対し、毎年開催されるアップフロント広告枠交渉シーズンを、通常の春から初夏にかけての期間から秋から冬にかけての期間への変更を要請。これに伴い、第4四半期(10-12月期)から翌年度の第3四半期(7-9月期)までの広告枠の取引の代わりに、カレンダーイヤー(1-12月期)での広告枠の取引が適用されることになる。
アップフロント交渉時期や交渉対象となる広告枠の掲載期間の変更に加え、同団体はアップフロントのプロセスそのものは変更されるべきではないという見解を示唆した。


Radio & Television Business Report (ラジオ・テレビ業界ニュース)
米Disneyの高度広告機能Luminateと共に脚光を浴びるニールセンのアドレサブルテレビベータテスト

ニールセンは、同社のアドレサブルTVベータプログラムに新たにDisneyが参加したと発表した。ニールセンのアドバンスビデオアドバタイジング担当ゼネラルマネージャー、Kelly Abcarian (ケリー・アブキャリアン)は「アドレサブルファースト戦略を推進し、柔軟性を強化する新たなテクノロジーに社運を賭けるDisneyがニールセンのベータプログラムに参加することを非常に嬉しく思っています。メディア業界の進化に伴い、広告枠在庫収益の最大化を目的とした管理や柔軟性をもってテレビ局の編成担当者が職務を遂行することが重要となります。Disneyとの協業を通じてアドレサブル広告の価値を向上し、同社が保有する魅力的なコンテンツと高度オーディエンスデリバリー機能を組み合わせ、広告主が期待する柔軟性と価値を提供することに貢献することを楽しみにしています」とコメント。


The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
大手メディア代理店、2020年の広告費13%減を予測

経済が不安定になると、多くの企業で真っ先に予算削減の憂き目にあうのが広告だ。各国が経済よりも新型コロナウイルスの感染拡大抑制を重視したことから、世界経済は鈍化。経済悪化を受け、旅行、小売や自動車業界の企業は広告予算の削減に踏み切った。
このような逆境での希望の光は、今年11月に行われる米大統領選挙だ。大統領選挙に伴い広告支出も増加する傾向にあるが、米国の大手メディア代理店 GroupMは選挙活動を勘案したとしても、2020年の総広告支出額は8%減少すると予測している。




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