COVID-19 MEDIA INSIGHT
危機状況におけるクロスメディア広告戦略維持の重要性
Matt O'Grady, Global Commercial President, Nielsen Media and Michele Strazzera, Commercial Leader, Ad Intel International Media
新型コロナウイルス禍中、広告主企業やブランド企業は一様に、広告宣伝活動をどう行うかに頭を悩ませています。パンデミックが経済に及ぼす影響を考慮し、また感染に関する暗いニュースと距離を置くために、多くの広告主は当初計画していた広告量や予算の削減に踏み切っています。しかしながら今後、新型コロナウイルス(COVID-19)との共存が一定の期間続くことを考えると、広告を制限することは中期的にサステイナブルであるとは言えません。今現在、広告を削減することは、長期的にブランドや企業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
前向きな考えを持つ一部のマーケターは、現在の危機状況において主導権を発揮し、スマートにエンゲージメントの高い大勢のオーディエンスにリーチするためのクロスプラットフォーム広告コンテンツ戦略を策定しています。特定のオーディエンスに影響力のあるメディアチャネルや戦術が明確であれば、マーケターは多様なメディアチャネルやデバイスをミックスし、最適化された消費者体験を効果的に編成することができます。同時に、予算を最適化してビジネスに対する効果を最大化することも可能になります。各チャネルに対して具体的な戦略、戦術や指標を規定して広告やマーケティングを個別管理することは、今となっては効果を発揮しません。プラスの成果を出すのはクロスメディアオーディエンス戦略を策定し、実践する広告主企業やブランド企業です。 マーケティングリサーチアナリスト、ブランドマネージャーやチャネルマネージャーにとって、キャンペーンの効果測定は、最も反応が良い消費者セグメントやキャンペーン要素に関する強力なインサイトの発掘手段となり、これらのインサイトを踏まえてより有効な意思決定を行うことが可能となります。広告テストを通じて、実施したキャンペーンのパフォーマンスに関する以下のような重要な回答を得ることができるからです。
• キャンペーンは店頭やウェブでの販売にプラスの影響を及ぼしたか。 • キャンペーンのROAS(広告費投資対効果)はプラスになったか。 • キャンペーンの新規顧客および既存顧客に対する影響はどうだったか。 • キャンペーンは購入者、購入頻度や客当たり購入単価の増加に貢献したか。 • 最も反応が良かったオーディエンスセグメントはどこか。 • 市場シェアに対するキャンペーンの影響はどうだったか。
パンデミックの中、様々な広告主がどのようにオーディエンスとエンゲージしているかを理解するために、COVID-19 期間における業界別広告予算トップ10ランキングを作成しました。

危機に直面している時こそ、クリエイティビティが発揮される場合もあります。広告業界は悪影響を受けていますが、生活者が今まで以上にオンラインやテレビ視聴に時間を費やす今、効果的な広告を打つことによってブランドの評判を上げ、売上を増やすことができると考えられます。
「抜け出したい!」 COVID-19禍中の広告に対する生活者の共感
Martin Broad, Head of Ad Intel Insight, International Media and Cathy Heeley, Media Analytics Leader, International Media
メディア業界が COVID-19 によって引き起こされた激動の時期に対応する中、適切なデータを活用して実施した広告キャンペーンが消費者の興味・関心を引き付けているかどうかを判断することがさらに重要となっています。マーケターにとってパンデミック発生後のメディア接触の著しい増加は、今までの流れを変える動きです。ここで課題となるのが、消費者へのリーチや接触がさらに困難となる中、マーケターが手掛ける広告が大量のコンテンツから抜け出すことができるのかということです。COVID-19発生前に目を向けると、視聴者属性によるターゲティングの40%が意図したオーディエンスにリーチせず、総インプレッション数の50%はビューアブルではなく、広告キャンペーンの20%は認知されなかったというデータがあります。 この課題を解決するのは、強力な広告クリエイティブです。売上への貢献という点では、強力な広告クリエイティブの重要性はメディアプランの4倍、広告の認知獲得という点ではターゲティングよりも5倍重要性が高くなっています。 広告クリエイティブを現実の世界でテストすることで、キャンペーンが以下を達成できるどうかを判断することができます。
• 好意: 広告が気に入られたか、広告に対する消費者の反応は? • エンゲージメント: 広告は消費者に新たなものを提示し、広告を見た消費者はもっと知りたいと思ったか? • 共鳴: 誰に向けた広告であるのかが明確になっているか? • 理解: 広告を視聴した消費者は、どのように広告を説明するか?広告はキャンペーンが訴求するメッセージをしっかりと伝達できているか? • 記憶: 広告を視聴した消費者は、広告を思い出せるか? • 最適なフリクエンシー: 投下した広告予算を最大化する露出フリクエンシーは?
COVID-19に関連する広告活動は、急激に増加しています。2020年第1四半期(1-3月期)、COVID-19について言及しているモニタリング対象広告の約90%は3月の第3週から5週目にかけて掲載され、4月に入ると掲載数はさらに増加しています。ドイツ、英国、イタリアやスペインを含む複数の欧州市場では金融、通信やスーパーマーケットの広告増加が著しくなっています。 増え続けるCOVID-19関連広告の中で注目を獲得し、真に価値のある広告を制作する上で重要となるのは「オーセンティシティ」(ブランドらしさ、真摯な姿勢)です。消費者に対して共感を示し、ブランドにとって基盤となるコミュニティーに対してどのようなサポートをしているかを伝えることで、ブランドの声明を確立していくことが今最も重要です。最も効果的な広告は、センスよく作成され、私たちが世界中で見ている5つの共通の傾向の1つを共有しています。
1.慈善活動 パンデミックを克服するにはコミュニティの結束が必要という考えの元、多くのブランドは様々な情報発信源に予算を投下し、各ブランドがコミュニティにおける役割を果たしていることを訴求しています。具体例を挙げると、UNILEVERはDOVE のインスタグラムキャンペーンで1億ユーロ相当の手指用消毒剤、石鹸、漂白剤や食品を寄付すると公表しました。BUDWEISERはアメリカでのテレビ広告活動を通じて、同社のスポーツ予算500万ドルを赤十字に寄付すると発表、赤十字との取り組みにはスタジアムを献血センターとして活用することなどが含まれています。

2.医療機関や医療従事者への支援 世界各国では、自らの命をかけて感染者にケアを提供する医療従事者への感謝の輪が広がっています。英国ではMcDonald's、Domino's PizzaやBurger Kingなどを含む外食店やUber、Gett、Europcarのような運送会社が物品やサービスの寄付、または「ありがとう」という感謝のメッセージを共有することでNHS(国民保険サービス)に対する支援をしています。これは全世界で見られるトレンドで、中国では電子自動車メーカーのBYDが医療従事者向けフェイスマスクを製造している他、フランスでは高級ブランドのLouis Vuittonが自社生産ラインを改造して、医療従事者用に手指用消毒剤の製造を行っています。
 3.ブランドによるソーシャルディスタンス啓蒙活動 距離をとらなければいけないというのは生活者にとって精神的に負担のかかることですが、感染拡大を防ぐためには非常に重要な手段です。世界各国のブランドは、「人と人との適切な距離を確保する」という政府が発信するメッセージの伝達や強化を支援しています。最も簡単な視覚的手段として、ブランドのロゴやシンボルの変更があります。注目を獲得できると同時に、ブランドにとっては強力なコミットメントを伴わない、比較的負担の軽い方法だと言えるでしょう。一部のブランドはATLキャンペーンに予算を投下し、ソーシャルディスタンスを維持する方法やソーシャルディスタンスの重要性を啓蒙しています。

4.今だからこそできること 一部のカテゴリーに属するブランドは、生活者の自主隔離により思いがけない形で売上を増やしています。COVID-19の影響により、食品デリバリーサービスには消費者が殺到しています。南アフリカの Pick n Payは対消費者コミュニケーションを通じて、過剰な量を注文しないよう呼び掛けると同時に、食糧がなるべく多くの生活者に行き渡ることの重要性を訴えています。米国DoorDashも同様の戦略を採用して、消費者に対し地元企業を支援するよう呼び掛けています。

5.安定性と柔軟性 COVID-19 危機下において顧客に経済的な安定を提供するために、金融機関は融資や返済規約の見直しを行っています。ビジネスやプライベートバンキングの顧客を支援する取組みには、無利息でのバッファーオーバードラフト(借越し)、住宅ローンの支払額の減額や一時的な支払い休止、非接触型決済の限度額の引き上げ、ビジネスローンに対する金利の引き下げなどがあります。これらの事例は金融機関ならではのものですが、安心感や柔軟な対応は全ての業界で生活者に提供することが可能です。
INDUSTRY NEWS
Broadcasting & Cable (テレビ業界ニュース) 米のテレビ番組、SNS でより多くの話題を獲得
ニールセンのデータによると、新型コロナウイルス感染拡大のスピードを遅くするためにソーシャルディスタンスを確保する生活者のテレビ視聴増加に伴い、ソーシャルメディアではテレビ番組に関する話題が急増している。 米国では 2020年初以降、Twitter上のテレビ番組やCOVID-19関連のコンテンツ量が900万に達した。ニールセンは今年の1月から3月にかけて、これらのコンテンツ量は以前の40倍にまで膨れ上がったとコメントしている。
The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)e 米Google、売上増も新型コロナの影響で広告売上が大幅ダウン
米Google、売上増も新型コロナの影響で広告売上が大幅ダウン Googleの親会社、Alphabet Inc.は2020年第1四半期(1-3月期)の業績を発表した。今年の年初から広告売上が絶好調であったことから、世界規模のパンデミックによる悪影響を吸収することができた。 同社が所有するGoogle の-3.31%という結果は、シリコンバレーは他の業界に比べて景気後退の影響を受けづらいことを示唆しているかのようだ。ただし、同社の役員は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、Google の業績は急降下していること、さらには今後数ヵ月間の見通しが立たないと話している。Alphabet のCEO、Sundar Pichaiは今年の3月に関して「広告売上が大幅かつ急速に減少した」とコメントしている。
CNBC (経済ニュースチャンネル) 米Google マーケティング予算半減を計画、新規雇用も停止
CNBCが独自に入手したGoogle の社内資料によると、同社はマーケティング予算をほぼ半分にまで削減することを計画している。また同社の役員に対し、正社員および契約社員の新規雇用を停止するという通達が出されている。予算削減は4月13日週、同社の CEO Sundar Pichaiが発表した計画よりもさらに思い切った動きとなっている。

|