INSIGHT
5G テクノロジー、そして広告、メディアおよびその他業界に与える影響の考察
ニールセン戦略アライアンス、Advanced Mea、ローカルテレビAudit担当 SVPスコット・ブラウン
CES (Consumer Electronics Show)2019 を総括した前回の記事では、5G (第5世代移動通信システム)テクノロジーの台頭やメディア接触のポータビリティ(携帯性)、IoT などの領域に対する 5G の派生的な効果について簡単に触れた。 今回は 5G というテクノロジー自体に少し踏み込んでみたい。本記事では 5G テクノロジーに課せられた目標、そしてサービス開始に至るまでのスケジュール、5G の主要アプリケーションやニールセンのグローバルメディアとグローバルコネクトビジネスへの影響への考察について考察する。
5G の世界では、皆さんのスマートフォンが無制限に高速なブロードバンドに接続し、待ち時間や応答時間がほぼゼロになる。スマートフォンの電源が入っている限り、常に超高速であらゆるものに接続することが可能だ。このような新たな世界で、生活者の行動はどう変わるだろうか? 自動車にも 5G 自動運転機能が搭載されるだろう。買い物はすべてモバイルで行い、ネットワークも全てモバイルになると、小売りエコシステムも全方位のモバイル対応を行うだろう。人々の生活が大きく変化することは想像に難くないが、本当にこのような世界が訪れるのだろうか?
5G - 技術目標 利用者に対するワイヤレスサービスのほぼ瞬時かつリアルタイムな提供により、5Gテクノロジーはスマートフォンの利用やモビリティの成長に確実に影響を及ぼすだろう。超高速 5G周波数帯域によってIoT は現実となり、広告や薬品・ヘルスケア、輸送などの主要業界に大きな影響を与えることが想定される。5Gワイヤレスサービスの開始に伴い、簡単なセンサーやマイクロプロセッサーが搭載されたあらゆるデバイスから新たなデータ要素が発生する。健康モニタリング装置、テレビ、ウェアラブルデバイス、医療機器、アプライアンスそしてほぼ全ての電子機器からデータが収集されるようになり、生活者が膨大なデータ量に圧倒される日が刻々と近づいている。
新たな未来の到来が迫る中、5Gテクノロジーとは音声やテキストを用いた通信よりも、膨大なデータ量のリアルタイム送受信を可能にする技術であることを覚えておきたい。 5G が革命的なテクノロジーである根拠として、以下の技術的な改善ポイントを挙げる。 - 大量の帯域幅 - 待ち時間が短縮されたリアルタイム通信 - シグナルの信頼性向上 - 運用コストの低下 - 効率的な帯域幅管理

大量の帯域幅 5Gサービスの開始に伴い、無線帯域幅は現在の 4G LTE の12-60 Mbps から 10 Gbps へと飛躍的に拡大する。複数のモバイルデバイスと 5G基地局の間に複数のストリームが確立され、全ストリームを利用して同時にデータを伝送することが可能になるからだ。 データレートは、基地局が使用する周波数や受信デバイスによって異なる。5Gネットワークサービス開始時点では、おそらくまだ低い周波数が使用されるだろう。その結果、通信速度は大方の消費者向け 4G LTE と同等、または速い程度のレベルに留まる。5G の基地局や受信デバイスの普及に伴って高周波数スペクトルの利用が始まると、データレートは 10Gbps へと著しく増加するだろう。
待ち時間が短縮されたリアルタイム通信 5G の世界では、計算能力は一元化されたサーバーから 5G基地局へと移る。俗にエッジコンピューティングと呼ばれるものだ。5G の待ち時間(応答時間)は、4G よりもはるかに短くなる。5G対応ハードウェアがセッションを確立し、データ交換するまでの時間はわずか 1-4 ミリ秒、人間の知覚ではほぼ瞬時と思える速さだ。 待ち時間は、データ処理によっても短縮される。エッジクラウドで処理が行われる場合、エンドツーエンドの待ち時間はたったの 20ミリ秒のため、新たな応答指向テクノロジーの開発が加速するだろう。 自動車の自動運転では、センサーデータを伝送して路上の周囲の自動車や歩行者の動きに関するフィードバックをリアルタイムに更新し、これに反応することで衝突を避けることが瞬時に、ドライバーが交通状況を見て反応するよりもはるかに短い時間で可能になる。車両の衝突回避やマッピングテクノロジーの進化においては、5G は必要不可欠だ。 対して、ウェブのブラウジングには待ち時間として知覚される時間が発生する。5G基地局の背後には、幅広いインターネット回線が存在するからだ。自動運転車両で Netflix が配信する映画を視聴する時には、ストリーミング開始までに 1-2秒程度かかることが予測される。
シグナルの信頼性向上 全てのワイヤレストラフィックは平等にあらず、5G データが優先される。そのため、自動運転の大型配送トラックやロボットを使用した手術など、極めて重要性の高い情報が優先的に伝送される。また 5G の仕様では誤差低減が重視されているため、エラー回復や冗長プロトコルによってシグナルの正確性や信頼性が 4G よりも高まっている。エラー回復や冗長プロトコルは、極めて重要なミッション用に消費者向け技術として設計された。 誤差を低減するために、ビームフォーミングテクノロジーが採用されている。これは基地局が物理的に RF (高周波)伝送をレシーバーに向けることで、幅広いエリアに散乱するシグナルからの干渉を減らす技術だ。 RF の利用により、5Gネットワークの密度は 4G よりも高くなる。RF はより小まめな範囲のアンテナを必要とするが、5G基地局では4G基地局と同じ面積のエリアに100台ほどのアンテナを設置することが必要になる。また密度増加は信頼性の向上につながり、IoTデバイス、自動車、ドローンやゲームのオンライン化に伴う接続需要の増加にも対応する。唯一残念なことは、大都市圏の住宅街の道路にはおそらく数百台規模の 5Gアンテナが乱立するようになる。景観を考慮して、5G基地局を街灯など、既存のインフラに組み込む試みが一部で行われるだろう。
運用コストの低下 キャリア各社は長年、より効率的なセルラー通信の運用コストを模索してきた。5Gのサービス開始に伴いより多くの基地局の設置が必要となるが、これらの基地局の運用コストは大幅に下がるだろう。 あくまでも推定だが、5Gデータの管理にはモバイルネットワークの 15-20% 程度のエネルギーが必要となる。残りの 80%-85% は常時接続の維持や、基地局内設備の冷却にあてることができる。 ハードウェア管理の改善により、5G は電力消費を 90% 削減するよう設計されている。RF の利用によって街中のアンテナ数は増加するが、増加したトラフィックへの対応についても基地局の消費電力は大幅に低下する。
効率的な帯域幅管理 帯域幅管理という点でも、5Gネットワークは 4Gと大幅に異なる。先に述べたビームフォーミングに加え、5Gネットワークは大規模 MIMO (Multiple Input/Multiple Output)システムを利用する。数百台規模のアンテナは冗長性の確保や受信の改善を達成すると同時に、双方向同時通信方式の全二重通信を管理する。 このような形の帯域幅管理には、以下の 2つの利点がある。 - データ量の増加が可能となり、待ち時間が減少する。 - データ送受信に必要なエネルギー量が減少するため、レシーバーのバッテリー寿命が長くなる。5G 仕様のスマートフォンのバッテリー寿命は最低 3日間、5G対応の IoTデバイスの寿命は最大 15年となるはずだ。
5G サービス開始までのスケジュール モバイルキャリアが巧みに操るマーケティング言語により、生活者は何が現実的に実装されているのか理解に苦しんでいるのが現実だろう。真実は、5G の完全な仕様はまだ最終化されていないものの、真の 5Gテクノロジーは既に実装されている。最初は NSA (ノンスタンドアローン)での運用となるが、これらのケースでは正式な 5G仕様の一環として、4Gネットワークが通信とネットワーク管理に利用され、5G はデータ伝送に利用されている。 5G スタンドアローン(5G SA)の実装では、全通信とデータ伝送は 5G で行われる。詳細は、2020年初期にリリースされる 5G仕様で定められる予定だ。キャリア各社は NSAシステムの構築を進めているが、5G仕様が完成すると SA に移行しなければならないことを意識している。 2段階のロールアウトによって、生活者は高速通信という 5G の恩恵を初期段階から受けられるが、待ち時間や消費電力の低減、信頼性の向上などその他の恩恵は 5G SA のフル実装までお預けとなる。5Gネットワークはハードウェアではなく、ソフトウェアベースであることから、待ち時間や信頼性に関しては今後、継続的な改善が期待できるだろう。 超高速ワイヤレス通信の大いなる進化は、5G で終わりではない。既に 6G が計画段階にあり、初期研究が進められている。6G は 5G を凌ぐ速度とパフォーマンスの向上をもたらすことが期待されるが、サービス開始までには最低でもあと 10年かかるため、今後 5年は、5G のロールアウトが進むだろう。
先週、Appleは Intel のスマートフォン向けモデム事業を 10億ドルで買収したと発表、 来る5G の世界に向けて優位なポジションを獲得した。買収により、Apple は新スマートフォン製品向け自社 5G チップを製造することができるようになり、自らの 5G の未来を 操れるようになった。5Gの未来はとてつもなく大きく、2020年には Apple 5G フォンや関連デバイスの導入が予定されている。 業界の巨人が大胆な動きを見せたことで、新たに想定される示唆を理解することが重要になる。 後半の記事では、5Gテクノロジーが与える影響に関する個人的な考察を共有する。
5G テクノロジーが主要業界に及ぼす影響
広告 アメリカのメディア業界、広告主、アドテク、クリエイティブやニールセンを含む計測企業の関係者は皆、5Gサービス開始による影響を受けることになる。 生活者が 5Gデバイスを用いて動画や音楽を楽しむようになり、家庭にあるデバイスの多くが動画やオーディオ対応になるにつれ、メディア接触の総量は確実に増加する。豊富なエンターテインメントシステムが搭載された自動運転車両や 5Gテクノロジーが市場に浸透するにつれ、自動車は家庭の延長として捉えられるようになるだろう。その結果、利用者にとって価値のある利用や新たな広告インプレッションが生まれるだろう。 企業のマーケターは、ハイエンドでコネクテッドな生活者を貴重なターゲットオーディエンスとして狙い始める。5G が提供するアドレサビリティにより、適切な広告クリエイティブが適切なオーディエンスにシームレスに配信され、広告主 ROI の最大化に貢献するだろう。パフォーマンス指標を通じて ROI が確認されると、ニールセンとしてもメディアエコシステムにおけるオーディエンス指標の独立プロバイダーという役割をさらに強化する必要がある。
変化 情報速度が加速するにつれ、生活者のエンターテインメント視聴意欲が高まり、より多くの広告インプレッションやオンラインの利用、さらには広告クリエイティブのより大きな効果が生まれるようになる。広告クリエイティブの性質も進化する可能性がある。例えば自動運転車両では、乗員を囲むようにスクリーンが配置され、スクリーンには映画、アニメーションを利用した広告メッセージ、天気予報やローカルニュースなどが流れ、全てが指タッチや音声でインタラクティブになる。新たな広告メニューやインタラクション手法が登場すると、5Gインフラで運用可能な新たな計測テクニックやテクノロジーが必要とされる。キャリア、自動車メーカー、ディストリビューターまたはその他サードパーティなど、新たな「ゲートキーパー」との提携が必要になるのではないか。 情報速度によって視聴コンテンツや広告の制限がなくなると、消費行動も新たに進化するだろう。すぐにやりたいことができるという自由によって、生活者は新たな期待を抱くことが予想される。5G速度をサービス提供者側が都合良く利用し、「どうせ消費者には分からないだろう」という傲慢な意識が芽生えると、プライバシーに対する生活者の懸念が高まる。事実、IAB (Interactive Advertising Bureau)の調べによると、生活者による広告ブロッカーの主な利用理由は、広告がロードするまでに時間がかかることが挙げられている。5G の高速通信が現実になると、広告ブロッカーの利用も減る、またはなくなる可能性がある。
新たなクリエイティブ表現 ファイルサイズという制限が無くなることにより、よりリッチな広告や複雑な広告メニューが登場することが予想される。自動運転車両や新たな家庭用 IoTデバイスに大きなスクリーンが搭載されるようになると、超高解像度の動画や複雑なオーディオ構成が必要になる。5G AR や VRコンテンツに関する予測が現実になると、AR や VR を用いた広告が登場し、計測は新たなチャレンジに直面する。 5G のより大きな帯域幅により、サードパーティ間でより大きなデータファイルが共有できるようになると、結果としてより高度なターゲティングが可能になる。複数の商品イメージや動画を利用したがるウェブサイトやアプリのデザイナーはこれらの素材がロードするまでの時間を考慮する必要がなくなり、Eコマース体験の向上が期待される。
アドテク 広告インプレッション数やターゲティングデータの飛躍的な増加、さらには 5G に対する「速さ」という要求により、現在のアドテクインフラは多くの問題に直面するだろう。5G は基地局とレシーバー間の待ち時間を短縮するが、他のオンラインインフラには影響を及ぼさない。アドテクシステムが 5G の速度に対応し、ロードや動画再生遅延を避けるためには、エンドツーエンドへの再設計が必要となる。現在の主流である一元化広告サーバーと Exchange インフラから脱却し、マルチプルエッジサーバーを5G基地局に近い場所に移動する必要が出てくるため、アドテクサービスのコストは増加するだろう。
メディア、エンターテインメント 5Gテクノロジーがメディア企業に及ぼす影響は、広告に留まらない。 5G によって生活者は新たなケーブル会社の ISP サービスが受けられるようになり、OTT (Over-the-Top)動画視聴が増加するだろう。生活者はまだ気づいていないかもしれないが、5G ISP にスイッチすることで、有料ケーブル放送との縁が完全に切れる可能性がある。しかしながら、ケーブル回線の通信速度も年々加速している。値段などを考慮すると、生活者が有料ケーブル放送サービスを解約するには、かなり説得力のある理由が必要になるかもしれない。 5G の他の側面を見ると、帯域幅の制限が少なくなり、ダウンロードなどのオフライン消費が Wi-Fi なしで現在より速く、より実用的になると、消費の活性化が期待される。オフラインでの聴取や視聴は、リアルタイムでの広告掲載や計測に様々な影響を及ぼすだろう。
VR と AR 生活者による VR の利用はまだまだ広まっていないが、5G は VR利用の一部の障壁を間接的に取り除く可能性を秘めている。障壁の 1つとして挙げられるのが、VR の利用に欠かせない高出力の VRコンピュータの価格だ。5G によって VRコンピューティングがクラウドに移行すれば、スマートフォンなどの小型デバイスでの利用が実現実を帯びてくる。
交通・輸送 5G基地局が拡大し、地方部で十分な通話エリアが確保できれば、5G対応の自動運転車両が街中を走るようになるだろう。基地局の拡大には時間がかかるため、最初に世の中に登場する 5G接続車両は比較的小さなエリアをカバーする配送トラックになる可能性が高い。5G の通信インフラが地方部に拡大するにつれ、5G接続配送トラックの自動運転走行エリアも拡大するだろう。 5Gテクノロジー搭載の配送用ドローンも、配送トラックと同じ道をたどることが予想される。しかし都市部でドローンを飛ばすことは、自動車で街中を走るよりもかなり難しいだろう。両方のテクノロジーを最大限に活用するには、自動運転の配送トラックがドローンを積み、ドローンがラストワンマイルを担うというハイブリッドアプローチが有効となる。 さらには 5G により、自動車は処理能力の高いクラウドコンピューティングにアクセスすることが可能になる。運転状況に関する最新情報を随時収集し、自動車同士で情報を共有できれば、より安全な自動車運転が実現するだろう。
車載エンターテインメント 5G対応の自動運転車両がマスマーケットに投入されると、生活者は車内で時間を潰すために熱中できるメディア体験を求める他、ビジネスで利用できる機能を要求し始めるだろう。5G は車載インフォテインメントシステムに問題なく動画を配信できることから、自動車は新たな VODサービスのタッチポイント、そしてローカルテレビ局が通勤中のドライバーにニュースを配信する新たな手段となる可能性を秘めている。 自動運転車両の増加は、Uber や Lyft などのライドシェアサービスの成長と照らし合わせて考えることができる。ライドシェアサービスは、高額な自動車購入からより安く、レンタル性の高いライドシェアというビジネスモデルへと生活者のマインドを変える可能性がある。 問題は、主要な「ゲートキーパー」たちが自動運転車両内のメディアをどう決めるか、という点だ。メディアは自動車のソフトウェア会社、自動車メーカー、あるいはアップストアに依存する生活者によって決められるのだろうか?配信されるデータの視聴や聴取は、これらのゲートキーパーによって管理される。
トラック配送 アメリカでは既に長距離配送トラックの自動運転試験が高速道路で始まっており、5G通信が地方部に届く前に定期配送が始まるだろう。高速を走ることは比較的単純な行為であることから、地方部や準地方部の 2拠点をつなぐ自動運転ルートを走るだけなら 5G なしでも可能だ。しかし 5Gサービスが都市部から地方部へと拡大すると、配送トラックは都市部での配送など、より複雑な業務をこなせるようになり、都市から離れた場所での荷物の積み替えが不要になる。アメリカにおける輸送セクターの市場規模は年間 410億ドル、5G による転移は十分考えられる。輸送業界での職は減少の一途を辿り、それにとって代わるのが平凡で繰り返し作業に適していると言われるロボット、機械学習そして AI だ。これらは 5Gデータストリームで作動することができる。
IoT 現在、音声アシスタント業界を牽引する Amazon の Alexa と Google Home は、生活者 IoT へと導くだろう。調査会社の IoT Analytics によると、全世界における IoTデバイス数は現在の 70億台から、2025年には 210億台超となる。5G は将来的なデバイス数の増加を促進し、Wi-Fi 接続できないエリア、あるいは接続数が Wi-Fi ルーターの容量を超過するエリアでの IoT デバイスの作動を可能にする。ルーターテクノロジーにもよるが、Wi-Fi ルーターの接続数は通常 40 から 260 の範囲だ。 5G の仕様によると、5Gネットワークは 1平方メートル当たり 100万件の接続をサポートしなければならない。世界で最も人口が密集している都市でさえ、1平方メートル当たりの人口は数千人程度であることを考えると、残りの数十万件の 5G接続は IoTデバイス、交通・輸送やその他の用途で使用可能になる。この接続密度と 5G 特有の待ち時間の少なさ、高帯域幅により、最も小さな IoTデバイスでさえもクラウドコンピューティングにアクセスすることで高い処理能力を発揮するだろう。 さらには 5Gの消費電力の少なさによって、IoTデバイスの電池寿命が長くなり、配線で電源を確保する必要がなくなる。これによって農業、製造、建設、採鉱やその他電線が不可欠な業種で IoTデバイスの利用が増加することが予想される。
多目的デバイス IoTデバイスを 5Gネットワークに接続すれば、多目的な利用が可能になるだろう。5Gネットワークに接続したサーモスタットには、音声コントロール用マイクロフォンが搭載されるかもしれないし、接続した面は全て、ディスプレイとして利用される可能性もある。5G に接続されたランプが、テレビのスピーカーになる日が来るかもしれない。 このような多目的デバイスは、Wi-Fi ベースのスマートホームシステムで既に存在する。今後、Wi-Fi という制限がなくなると、多目的デバイスの数と機能は急激に拡大するだろう。
ゲーム ゲーマーとゲーミング会社は、5G の恩恵を最も受ける業種や企業の 1つ。5G の待ち時間の少なさと高帯域幅によってコンピューティング処理能力はデスクトップPC からクラウドへと移行し、より小さくて価格の安いデバイスでより優れたゲーミング体験が可能になるからだ。ゲーミングにおいては、待ち時間の少なさが非常に重要な要素となる。特にマルチプレイヤーのゲームでは、僅か数ミリ秒の違いが対戦に大きく影響する。待ち時間を完全に無くすには、インフラを 5Gノードの近くに移動する必要があるが、これは全世界からプレイヤーが参加するマルチプレイヤーゲームにとって課題となるだろう。
ゲームにおけるゲームチェンジャー 高級なゲーム機への依存が低くなることは、歴史のあるゲーム企業への依存低下を意味する。Microsoft、ソニーや任天堂など、今日のゲーム企業は 5G を利用してクラウドベースのゲームを拡大することが予想される。ゲームメーカーもまた、D2C製品を導入して業界リーダーに対抗するだろう。 またゲーミングは電話会社にとって、新たな収入源となる可能性がある。電話会社は 5Gノード所有という優位性があるため、ゲーム企業に対してゲームサーバーの 5G対応施設への移動を要求できる。あるいは自社のゲームインフラを構築して、直接生活者にゲームサービスを提供することも考えられる。 より多くのゲームがクラウドに移行すると、ゲーム内広告の増加が見込まれる。広告ターゲティングの精度は高まり、広告フォーマットもより複雑化するだろう。ゲーミング企業にとってゲーム内広告は大きな収入源となることから、ユーザーターゲティングデータの需要の高まりが予測される。
その他
ヘルスケア ロボティクスを 5Gコネクティビティと組み合わせれば、遠隔手術が現実化する可能性がある。待ち時間の少なさと高帯域幅により、外科医は高解像度画像をリアルタイムで見ることができ、手術中に発生する予期せぬ変化にも迅速に対応することができるようになるだろう。これによってヘルスケアの質が向上し、同時に費用が下がることが予想される。最終的により大きな恩恵を受けられるのは地方部在住者だが、5Gネットワークが地方部に拡大するまでには相応の時間がかかるだろう。
製造業 モニタリングや計測機器、環境など IoTデバイス関連の利点に加え、5G によってプロジェクトのデザイン、トレーニングや運用フェーズにおける ARツールの利用が可能になるだろう。これらのツールは既に普及しているが、コネクティビティや帯域幅といった制約によって最大限利用されていないのが現実だ。AR は生産性の向上、誤差や欠陥の減少に加え、作業者の安全確保という点でも今後期待されている。
5G と ATSC 3.0 ATSC 3.0 とはアメリカの次世代地上デジタル規格(ATSC 3.0 記事は近日中に投稿予定)で、主にSinclair Broadcasting Group と韓国の電話会社 SK Telecom が普及拡大を主導している。両社は共同で、5G と ATSC 3.0 を融合した次世代車載エンターテインメントシステムのデモを披露した。デモでは 5G接続が自動車とネットワーク間の双方向通信を管理、ATSC 3.0 は車内のスクリーンにリアルタイムのテレビストリームの配信を行った。車内に設置された 3台のスクリーンに同一のテレビ局の番組がリアルタイム配信されたが、それぞれのスクリーンには異なる広告が流れた。ターゲティングデータは SK Telecom が支給した。 同デモでは、複数のカメラアングルで撮影されたスポーツ中継も用いられた。ATSC 3.0 放送はメインカメラの画像、5G は代替カメラの画像のリアルタイム放送に用いられた。 ATSC 3.0 を主導する企業の弁では、放送局は今後、自動車やモバイルデバイスにソフトウェアのダウンロードや大容量ファイルの転送を行えるようになるかもしれないとのこと。 現実に目を向けると、アメリカのキャリア各社は ATSC 3.0 に関わっている企業と現時点では提携しておらず、5G のサービス開始に注力している。
5G まとめ 5Gインフラの開発の重要性は高いものの、高額の費用が必要とされる。ビジネスモデルもまだ成熟化していないが、開発は進んでいる。メディアでは、5Gイノベーションが多くのビジネスを垂直統合するのではないかという期待と誇大広告が溢れている。モバイル利用者に超高速度と待ち時間のないモバイル市場サービスを提供する 5G は、メディアの世界を確実に変えるだろう。モバイルが全ての人の生活の中心となり、消費力学も一変するのではないか。今後はダイレクトなブランドが繁栄し、D2C が主流となる。Direct-to-Auto は標準となり、アドレサビリティは確立され、重複や集計といった作業は効率が高く、包括的なデジタルワークフローへと姿を変える。
「新たなテクノロジーが約束することと消費者需要予測は、滅多に交わらないというのが現実だ。テクノロジーイノベーションという新たな時代において、B2B は今後益々主眼となるが、情報は常に消費者中心に語られる傾向にある。」
INDUSTRY NEWS
CNBC (経済ニュースチャンネル) 11月にサービスを開始する Disney+、強みは料金と潤沢なコンテンツ アメリカの Disney が新たに提供する動画配信サービス、Disney+ は 11月12日からアメリカでサービスを開始する。月額料金は 6.99ドル。 低料金と膨大な作品数という理由により、アナリストは莫大なサービス加入数を予測している。 8月23日から25日に開催された D23 Expo にて設置された早期加入用キオスクは開催期間中、来場者で溢れていた。早期加入は 3年契約で、単年契約よりも年間 23ドル安くなる設定。
The Wrap (エンターテインメント・ニュースサイト) 米における世帯の半数、複数のストリーミング配信サービスを利用 ストリーミング配信がケーブルや衛星放送に取って代わるという新たな証拠が明らかになった。 Leichtman Research Group の最新データによると、アメリカでは既に総世帯数の半分がNetflix、Hulu、Amazon Prime Video の内、2つ以上のストリーミング配信サービスを利用している。総世帯数の 51% は約 6500万世帯に相当、2017年の複数ストリーミング配信サービス利用世帯率 33% から大きく上昇した。
CNBC (経済ニュースチャンネル) Netflix の事業拡大ペースを凌ぐ勢いで成長する米Roku アメリカの投資銀行および資産管理企業、William Blair のアナリストによると、アメリカのストリーミングプラットフォーム運営企業 Roku の有効アカウント数は 2025年に 8000万件に達する見込み。 同社のアナリスト、Ralph Schackart (ラルフ・シャカート)は「Roku は Netflix の海外進出時における事業拡大と同じような、段階的な国際的成長を遂げるだろう」とコメント。 自社ストリーミング端末を販売し、数千ものチャンネルやスマートテレビ用 OS を提供するRoku の株価は今年に入ってから急上昇しており、上昇率はほぼ 370% を記録。
The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙) 米 Amazon、傘下の IMDb TV 用独占番組を物色 消費者が広告無しのサブスクリプション動画以外に触手を伸ばしていることを受け、Amazon.com Inc. は広告支援型無料ストリーミングサービス、IMDb TV への投資を着実に増やしている。 近い情報筋によると過去数か月に渡り、Amazon はコンテンツサプライヤーに対し、IMDb TV 用で配信する映画やテレビ番組のより独占的なライセンスを要求している。また同社は Vice Media に接触し、今年前半に HBO がキャンセルしたエミー賞受賞ニュース番組「Vice News Tonight」の配信取引について話し合いを行った模様。
Bloomberg (ブルームバーグ) 米 Apple、Apple TV+ の公開は 11月を目標、料金は月額 9.99ドルが濃厚か Apple Inc. は同社の映画・テレビ番組サブスクリプションサービス、Apple TV+ の公開を11月中に予定している。同サービスは、2020年までにサービス売上 500億ドルを達成する同社の計画の一部。 内部情報筋によると、同サービスは少数のテレビ番組でスタートし、その後数か月をかけて作品数を頻繁に増やしていく。匿名を条件に情報を明かしてくれた人物の話では、作品数を増やしていく段階で無料トライアルが計画されている。
AdWeek (広告業界誌) 米 Google、オンライン広告のプライバシー保護強化案を発表 消費者のプライバシー保護に関して様々な批判を受けてきた Google は、やっと批判を心に留め始めたようだ。同社は 8月22日木曜日(現地時間)、媒体社の取組の透明性を高め、消費者に対して個人情報の取り扱い企業や利用用途などを通知することでオンライン広告とプライバシー保護の両立を目指す初期提案「privacy sandbox」を発表した。
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