INSIGHTS
母集団の代表性が担保された個人レベルのオーディエンス視聴測定の実現の鍵は、サンプリング
ニールセン データサイエンス担当ディレクター Uche Onyewu (ウチェ・オニェウ)
多くのマーケティング関係者は、「企業が生活者一人一人の行動を把握せずに消費行動を正確に測定することは本当に可能か?」という疑問を抱いているのではないだろうか。アメリカ合衆国の人口は現在、3億2500万人超だ。アメリカ在住の生活者一人一人と接触せずに、消費者のメディアエンゲージメントや買物習慣を本当に測定できるのか、疑われても仕方ないだろう。
多くの理由により、可能な限り多くの、あるいは生活者全員に接触して消費者行動の測定を試みることは現実的ではなく、必ずしも賢明ではない。一部のケースにおいては、単純に実現不可能だ。世の中には自らの判断、あるいは諸事情により測定対象となることを辞退する生活者も存在する。このような生活者の存在は、結果として測定データを測定に参加する可能性が最も高い生活者中心の内容へと歪めさせる。
幸いなことに、生活者一人一人と接触せずに大きな母集団の行動を理解することは可能だ。勿論、個人レベルのオーディエンス測定に人は欠かせない。大きな母集団を代表する生活者の主要グループで構成された測定パネルによってこそ、母集団の行動に対するインサイトを得ることができる。ここで浮かび上がってくるのは、母集団よりはるかに数の少ないパネルを測定することで、本当に母集団の行動を把握できるのか、という疑問だ。
ニールセンが採用するパネルは、真の消費者行動に対する個人レベルでのインサイトを提供する。 これを担保するために、ニールセンでは厳密なデータサイエンスや統計サンプリング法を用いて、パネルや調査を通じて測定する集団がより大きな母集団を正確に代表することを確実にしている。サンプリングとは、特定の集団を測定することで、測定がより大きな母集団を代表することを確定的にする統計的手法。様々な測定手法が存在するように、サンプリングにも複数の手法がある。
サンプリング手法は大きく分けて、確率抽出法と非確率抽出法に分類される。確率抽出手法においては、母集団に属するすべての個人が抽出される確率は同等とみなされる。対して非確率抽出手法では、母集団に属するある特定の個人が抽出される確率が高くなる。代表性の均等を確保するためには、何らかの形で確立抽出手法を使うことが必須となる。
しかしながら、サンプリングはこれら2つの手法のどちらかを選べば済むほど単純ではない。サンプリングプロセスの複雑さや実施は、ケースによって異なる。サンプルを抽出するためのパラメーターは極めて一般的であり、サンプルの信頼性はサンプル抽出の準備作業に左右される。ラジオ聴取測定を例に挙げると、ニールセンではポータブルピープルメーター(PPM)や Audio Diary 測定サービスを提供するために 100以上の重要なプロセスが行われている。これらのプロセスを日、週、月、四半期および年度という単位で実施することで、最大限代表性が保たれたサンプルが抽出、維持されている。
ニールセンのサンプリングプロセスでは、まず米国国勢調査データを用いて測定対象となる母集団のデモグラフィック属性(年齢、性別、人種、民族性、言語など)と地理的構成を推定し、ニールセンが提供する製品のサンプリングターゲットを設定する。次に過去のデータや予測モデルに基づき、無作為に抽出された世帯のデモグラフィック構成と測定への参加意思を予測する。そしてこれらのモデルを小教区、市や郡など細かい地理単位で回す。モデルを常にモニタリングすることで代表性が担保されたサンプルを維持し、必要に応じてアップデートを行う。
パネルとして抽出された世帯に協力を要請する段階では、ニールセン全体を通して様々な採用手法が用いられる。ラジオ聴取測定の場合、測定対象エリアの幅広いパネリスト候補の連絡先を得るためにサンプルベンダーに連絡を取り、初期サンプルを確保する。初期サンプルの連絡先を入手した後、担当チームがサンプル選定プロセスに着手、最終的には資料の郵送、電話でのインタビューや世帯訪問など、採用に関わる一連のオペレーションを行う。
プロセス全体を通じて、世帯がパネルや調査に参加する機会を与えられるかどうかを左右する多くの要因が存在する。これらの要因は、測定する母集団を代表するサンプルの確保に直接的な影響を及ぼす。
我々は、日々のオンライン活動がテクノロジー、クッキー、リターンパスデータ、お気に入り、プレイリストのアルゴリズムやその他多数のデジタルマーカーによって記録される時代に生きている。しかしこれらのデータの多くは完全性を欠いており、偏っている。これらのデータは、そもそも測定されることを前提としていないからだ。真の測定において、個人レベルの情報は最も信頼のおける情報源だ。そしてサンプリングこそが、代表性が担保された母集団に対する個人レベルでの測定を可能にする鍵となる。
INDUSTRY NEWS
Reuters (ロイター通信) 契約更新で紛糾する米CBSとAT&T、DirecTVのCBS番組が放送中止 アメリカの3大ネットワークの1つ、CBS などを所有する CBS Corp (CBS.N)とAT&T Inc (T.N)による契約更新が紛糾し、AT&Tが提供する有料テレビ放送サービスDirecTVの加入者はCBS の番組が視聴できくなるというあおりを受けた。 CBSは7月20日土曜日に発表した声明を通じて、ニューヨークやロサンゼルスを含むアメリカの十数都市では午前2時(東部標準時)をもって、DirecTV加入者に対してCBSの番組放送が中止されたことを明らかにした。 CBSは同声明にて、「AT&Tが公平な条件に合意することを願い、今後も誠意をもって交渉を継続するが、CBS番組の放送中止はしばらく続くことになる」とコメント。契約更新の紛糾を巡っては、両社がお互いを非難する状態となっている。 「NCIS」(邦題「NCIS ~ネイビー犯罪捜査班」)や「The Late Show with Stephen Colbert」などの人気番組を放送するCBSは顧客に対し、ウェブサイトKeepCBS.com にアクセスしてDirecTV のソーシャルメディアページにメールや電話、コメントの投稿をするよう呼び掛けている。 もっと見る
Bloomberg (ブルームバーグ) 米 Netflix、株価が急落 動画ストリーミング配信の巨人、旧来のメディアから教訓を学ぶはめに アメリカのNetflix Inc.は 7月19日、株価が10%下落した。同社は直近四半期の動画ストリーミング配信サービス加入者がかつてない程落ち込んだことを発表、本記事を執筆している時点で、同社の市場価値は約160億ドル低下した。さらに同社は、新規加入者総数が期待を大きく下回ったと報告。米国株式市場における主要ハイテク銘柄 FAANGのNを意味するNetflixの市場評価額はFacebook、Amazon.com、Apple、Googleよりも少ないものの、同社の株価の動きは最も注目を集めてきた。今までの好調に反して、同社の株価は同日急落した。
Netflixは株価急落を一時的な後退と説明したが、Bloombergのテクノロジー担当コラムニスト、Shira Ovide (シーラ・オビーデ)は懐疑的だ。同コラムニストによると、Netflixは長年、資金という燃料によって利益という名の惑星にロケットを飛ばし続けてきたが、同社の手法は事実上SF(サイエンスフィクション)になりつつある。Netflixが加入者減を記録した理由の1つに料金の値上げが挙げられるが、同社の投資金額が加入者にとって魅力的なコンテンツの鮮度を保つには不十分だったとも言える。
Bloomberg Opinionのコラムニスト、Tara Lachapelle (タラ・ラシャペル)は長年、Netflixの成長に苛立ちを隠せなかったWalt Disney Co. などの旧来メディアはNetflixに対し、直接対決を挑み始めていると指摘。人気番組を所有するこれらのメディアはNetflixで最も人気のある配信番組の提供を中止しようとしていることから、Netflixは今後、さらに視聴者を誘引しづらくなる。今まで加速し続けてきたNetflixも、旧来メディアと同じ悩みを抱えるようになる。当面の対策は、悩みに慣れることだろう。 もっと見る
Pet Age (ペット業界ニュース) ニールセンをインサイトプロバイダーに迎え、新たな関係構築を目指す米WPA アメリカで最も歴史のあるペット非営利団体World Pet Association(ワールドペットアソシエーション、略称 WPA)とニールセンは声明を通じて、今後ニールセンはインサイトプロバイダーとして WPAに貢献し、両社は新たな関係を強化していくと発表した。WPAの会員は今後、ニールセンが誇る世界クラスのデータへのアクセスにより、同社のペットデータやソートリーダーシップを活用することが可能となる。ニールセンのリテールサービス担当 SVP、Raha Alavi (ラハ・アラビー)は「ニールセンは成長著しいペット業界の全ての企業に対し、さらなるビジネス成長を加速する支援を行うことに尽力しています。過去数年に渡り、ペットチャネル固有のニーズにより応えられるよう、ニールセンのリソースを拡大してきました。WPAとの協業は非常に喜ばしく、今後WPAの会員と有意義な関係を築いていくことを楽しみにしています」とコメント。 もっと見る
Reuters (ロイター通信) ニールセン最新データ: 地方の需要低下により、インドにおける消費財の成長が鈍化 ニールセンは7月18日、地方における支出減によりインドの消費財業界の成長が鈍化していると発表した。地方経済の減速に伴い、小規模メーカーは競争優位性を失いつつある。ニールセンのリテール調査から得られた社内データによると、インドにおける日用消費財(FMCG)セクターにおける金額ベースの売上成長率は今年の6月時点で6.2%で、前四半期の9.9%から低下した。 もっと見る
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