欧州では先頃、一般データ保護規制（General Data Protection Regulation、略称　GDPR）が施行され、アメリカ合衆国議会では広告業界の慣習が討議される昨今、企業のマーケターは急速に変化する市場に直面している。同カンファレンスにはニールセンや業界の主要企業の役員も参加し、今後の方向性について議論が行われた。

ニールセンの視聴行動分析（WATCH）部門プレジデント、Megan Clarken （メーガン・クラーケン）はテレビやデジタル関係者を前に、ARF のプレジデント兼CEO （最高経営責任者）、Scott McDonald （スコット・マクドナルド）と共に業界のコンバージェンスについて議論を行った。数多くのプラットフォーム上で優れたコンテンツが提供される今、消費者は週平均 82時間を動画視聴に費やしている。Clarkenは「オーディエンス計測は、かつてないほどにチームとしての結束力を必要としている」と強調、全数をベースとする計測を通じて計測対象が拡大する中、業界全体の支持が必要という見解を述べた。

過去数年、一部のデジタルの先進的企業や小売企業は、それぞれが独自の閉鎖された計測システム（ウォールド・ガーデン）を開発している。この動きに対し、Clarkenは広告予算が獲得しづらいという側面を指摘した。広告主企業や広告代理店の圧力により、多くの企業は閉鎖されたシステムの開放化に向けて舵を切っている。同氏は「同等のプレイヤーとして認められるためには、計測に一貫した手法が用いられることが条件」と語った。

広告、メディア業界はオーディエンスの注目や感情の計測に前向きな姿勢を見せている。同氏によると、まず行うべきことは性・年齢別のオーディエンスリーチとフリクェンシーの計測。自らのオーディエンスの基本構成を把握しない限り、次のレベルに進めないからだ。ベースをしっかりと把握できていれば、メディアやその先の施策にまで投資対効果（ROI）を追跡することが可能となる。

ベースを把握する上での注意点として、Clarkenは値段が高くても質の高いデータを入手する必要性を説いた。質の低いインプットは、誤解を招く恐れのある結果につながる可能性があるからだ。同氏は「数ドルを節約するのは高価で質の高い寿司の代わりに安くて質の悪い寿司を食べるようなもの。当然、食後にお腹の調子が悪くなる」という痛快な例えを用いて説明した。

ニールセンが果たす役割は顧客に対し、質の高いデータを提供し続けること。そのためには、ニールセンがビジネスを展開する世界48 の市場それぞれに固有なニーズを理解することが必要となる。Clarkenは「広告主企業の信頼を得るためには、対価に見合った独立した、質の高い第三者データを提供すること」を強調した。

同氏が発表したプレゼンテーションの題材は、イベント期間を通じて参加者の意識を高め、参加者同士での会話や議論の活性化に貢献した。

INDUSTRY NEWS

MarTech （マーケティングテクノロジー業界紙）  
時代と共に進化するテレビ、エンターテインメント提供メディアとして今後も存続
 過去100年の歴史が示すように、テレビは新たなテクノロジーと競い合うことによって進化し続けてきた。最近発表されたニールセンのLocal Watch Reportによると、動画コンテンツをストリーミングした視聴者の93%はテレビも視聴することが明らかになった。ニールセンのオーディエンスインサイト担当 VP、Justin LaPorte （ジャスティン・ラポート）は「Local Watch Reportは、リニアテレビは終わった、という通説を吹き飛ばす内容」とコメントしている。 もっと見る

Bloomberg （経済情報・金融ニュース）   
2018 FIFAワールドカップの米テレビ視聴率、2014年から44%ダウン
 ニールセンのデータによると、アメリカにおける2018 FIFA ワールドカップ ロシアのグループリーグ戦テレビ視聴者数は、前回の2014年から44%ダウンした。視聴者数の減少は、今回のワールドカップを放送するFoxの英語放送とNBCUniversalの Telemundoによるスペイン語放送の両方で確認されている。Foxが放送したワールドカップ中継の視聴者数は平均198万人、ESPNが放送した4年前の前回大会の平均視聴者数355万人を下回った。スペイン語放送のTelemundo中継番組の平均視聴者数は187万人、対して Univisionが放送した前回大会の平均視聴者数は330万人だった。 もっと見る

AdWeek （アドウィーク誌）
メディアとマーケティングの交わりにおけるデータの役割   
 2018カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバルが閉幕した6月21日、AdweekはスポンサーパートナーのThe Boston Consulting Groupと共同でフェスティバルの最後を飾るグループディスカッションを開催した。テーマは、「変化するマーケティング、メディア戦略におけるデータの役割と意義」。ディスカッションのパネリストはGoogle EMEMA メディアバイイングソリューションズ担当マネジングディレクター、Frank Einecke （フランク・アイネック）、MDC Media Partners and Assembly CEO、Martin Cass （マーティン・キャス）、The Boston Consulting Group シニアパートナー兼マネジングディレクター、Dominic Field （ドミニク・フィールド）、Garnett/USA Today Network CRO、Kevin Gentzel （ケビン・ジェンツェル）の 4名。海岸沿いのクロワゼット通りに太陽が沈む頃にスタートした同ディスカッションでは、ブランドマーケティングエコシステムが消費者の信頼を維持するためには、新たなパートナーシップモデルを模索する意義がある、という参加者の総意が確認された。

ニールセン、オーストラリアで提供のDigital Content Ratingsを大幅改良
 オーストラリアの業界団体、IAB Australia が推奨する独立したデジタルオーディエンス計測システム、Nielsen Digital Content Ratings （DCR）に新たにオフプラットフォームのオーディエンスが追加、さらにはモバイルオーディエンスの計測対象範囲も拡大される。6月29日、シドニーで発表された大幅改良を通じて、ニールセンのDCRはトータルデジタルオーディエンスを把握するための最も精緻かつ包括的なソリューションとして提供される。 発表内容を見る。本件の記事はAdNewsとB&Tにも掲載されています。 

USA Today （USAトゥデイ誌）    
米における人気テレビ番組を対象としたオーディエンスダイバーシティ調査
 ニールセンは、様々な人種のキャストが登場するアメリカのテレビ番組シリーズのオーディエンスを解明する調査を実施、結果を発表した。キャストの大半が白人俳優、一部黒人俳優がキャスティングされているNBCの「This Is Us」（邦題「THIS IS US 36歳、これから」）のオーディエンスは大半が白人、対してアフリカ系アメリカ人俳優が中心のキャストが登場するシリーズは有色人種のオーディエンスの比率が高い傾向にある。またニールセンは一部の俳優のN-Score （タレントの好意度と影響力を示すスコア）を分析、対象にはABCが放送する「Black-ish」（原題）の主演俳優 Anthony Anderson （アンソニー・アンダーソン）とTracee Ellis Ross（トレーシー・エリス・ロス）が選ばれた。 もっと見る