ROAS(広告費用対効果)ベンチマーキングにおける重要な要素は「媒体種別」と「ブランドのサイズ」
仕事をしている人なら誰しも、自分が行っている仕事が正しいのか、間違っているのか、自問自答した経験があるのではないか。
企業で働く新入社員から最高経営責任者レベルまで、誰もが自身の知識レベルを超えた客観的な検証手法を模索していると言えるだろう。
消費財を製造・販売する広告主にとっての朗報は、Nielsen Catalina Solutions (ニールセンカタリーナソリューションズ、NCS)が最新調査を通じて媒体別に推定費用対効果を明らかにするベンチマーク指標を確立したことだ。また調査のファインディングスから、媒体別広告費に対して消費財ブランドが期待できる増分売上が明らかになった。本調査によると、最も費用対効果が高い媒体は「雑誌」と「オンラインディスプレイ広告」。
ベンチマーク指標の確立に当たり、NCS は過去 10年間に実施された 450 消費財ブランドの 1400以上の広告キャンペーンを分析。分析から広告露出データと店頭売上データをリンクし、広告が店頭売上に及ぼす影響力を判定した。増分売上は、様々なメディアを通じて広告キャンペーンに接触した世帯における売上と接触のない類似世帯を比較することで検証された。同調査はさらに異なるメディアに対して行われた全調査をまとめ、新たな相関関係やインサイトを発掘した。
広告キャンペーンが到達した世帯を見ると、最も増分売上に貢献した媒体はテレビで世帯当たり平均増分売上は 0.33 ドル、次いで雑誌とクロスメディアキャンペーンがそれぞれ平均 0.26ドルと 0.25 ドルの増分売上となった。対してインプレッション当たりの売上を見ると、最も効果的な媒体はモバイルで 1000インプレッションに対する平均増分売上は 26.52ドル。同指標で地上波テレビを観ると、平均増分売上は 1000インプレッションに対し 20.56ドルに留まった。
消費財商品カテゴリー別のベンチマーク指標を見ると、興味深い傾向が浮かび上がってくる。最も広告費用対効果が高いのはベビー用品の広告キャンペーンで、平均リターン額は 3.71ドルとなり、次点となったペット用品の平均リターン額は 3.06ドル。理由として考えられるのは、これらの商品カテゴリーは比較的高価格帯であること、そして購入頻度が高いことだ。広告主は自らの販売指標を商品カテゴリー内のブランド指標と比較することで、競合との差をより明確に把握することが可能となる。

さらには調査対象のブランドをサイズ、普及率と購入サイクルで分類した結果、最も興味深い、明らかな傾向を提示するファインディングスが得られた。ブランドの分類は以下の通り:
- メジャー(marquee)ブランド: 規模が大きく、市場における普及率やシェアが高いブランド。
- 頻繁に利用されない(infrequent use)ブランド: 購入サイクルが長いが確実に購入されるブランド。
- 中間(mid-size)ブランド: 上記の中間として分類されるブランド。
本調査によると、媒体別広告費用対効果や増分売上を含む全調査指標で最もスコアが高かったのはメジャーブランド、次いで中間ブランド、頻繁に利用されないブランドとなり、ブランドの「サイズ」と「スケール」の重要性が確認された。また売上貢献という視点では、ブランドの「サイズ」と「スケール」がカテゴリーよりも影響力が強いことが明らかになった。

詳細は 2016年6月12日から14日、ニューヨークで行われた広告調査財団(Advertising Research Foundation、ARF)主催 Audience Measurement Conference で発表された全プレゼンテーションをダウンロード。
テレビ広告効果を最大化する方法
消費者の感情に訴え、登場するブランドを消費者にとって自分ごと化させ、広告主が意図する消費者行動を喚起することができる広告は売上という短期的な効果を発揮する。さらにはブランドに対する消費者のロイヤリティの醸成、そして市場におけるブランドエクイティの構築といった長期的効果も期待される。
アメリカ広告業協会(American Association of Advertising Agencies)によると、アメリカにおいて全国ネットで放送される30秒テレビコマーシャルの平均的な制作費は34万2000ドル。このように広告を制作するには多額の費用が必要となるものの、テレビ番組視聴デバイスの増加や「ながら視聴」形態の多様化により広告主にとっては視聴者の共感の獲得など、費用に見合う効果を得ることが難しくなっている。
広告の成否は 1) 広告はブランドがターゲットとする消費者に到達できたか、2) 他の広告を圧倒する目立ちが獲得できたか、3) ブランドと正しく関連付けられたか、で判断される。広告費用対効果を最大化するためには、広告主はキャンペーン期間中に掲載中の広告やブランドがコアとなる消費者の共感を得られているかを把握し、キャンペーンが終了するまでに何らかの対策を打つことが不可欠となる。
「想起性」の重要性
今日、誰もが複数の媒体経由で何らかの広告に 24時間接触していると言っても過言ではない。莫大な広告露出量に対し、消費者は目に飛び込んでくる広告それぞれに注意を払うことができず、そのため感情移入もしない。結果として広告主は高額な広告費用を活かせないでいる。
ニールセンは全メディアに対するマーケティング予算の管理を支援するクラウドベースのツール、Nielsen Marketing Cloudを発表した。同ツールはメディアの取引単位となる視聴データやアナリティクスアプリケーションを単一のプラットフォームに統合、今後同社が展開するNielsen Total Audienceデータを用いたクロスチャネルのメディアプランニングが可能になる他、オーディエンスセグメントの作成や消費者インサイト調査を支援する。
同ツールはモバイル、ウェブ、OTTテレビ、動画、ソーシャルメディア、メールやコンテンツマネジメントシステムなど、すべての主流メディアやマーケティングプラットフォームに対応。アメリカで利用されている全デバイスの95%を対象としたクロスプラットフォーム機能を提供する。
Nielsen Marketing Cloud のEVP、Mark Zagorski (マーク・ザゴースキー)は同ツールについて、「マーケティング効率を向上する上で、データはかつてないほど重要な役割を担っている」とコメント。
測定に関しても、同ツールを利用して広告やコンテンツが消費者の持つイメージや購入意思決定に与える影響のリアルタイム分析や、マーケティング費用効果に対する評価を行うことができる。
Nielsen Marketing Cloud のアプリケーションはNielsen Data Management Platform (DMP)に対応、150以上の第三者メディア、コンテンツアクティベーションや最適化アプリケーションを統合する。
ニールセンは1年前にデータテクノロジー提供企業のeXelateを買収、今回発表したNielsen Marketing Cloud を通じてeXelate の主要機能が利用可能となる。
Sports Business Journal (スポーツビジネス専門ニュース)
ニールセン、Repucom 買収を完了
ニールセンは 6月21日火曜日、コネチカットを本拠地とするスポーツ視聴測定などを提供するスポーツマーケティングリサーチ&コンサルティング会社、Repucom の買収を完了したと発表、買収金額は未公表。 もっと見る
The Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
米の大規模メディア企業、生き残るにはデジタルシフトに対抗せず、「利用」すること
アメリカでは若い視聴者によるテレビからデジタルへのメディアシフトに伴い、従来のテレビ企業はゆっくりと衰退する、という説が存在する。しかし Comcast Corp の NBCUniversal、Time Warner Inc.、Walt Disney Co. や 21st Century Fox などの大手メディア企業はデジタルシフトに上手く「乗っかる」ことで生き残ることができるだろう。また時代の先端を行くテレビ番組制作だけではなく、最先端のビジネスモデルを構築することが急務となる。Vice Media、Vox Media や BuzzFeed など新たに台頭するメディア企業と手を組む方法もあるが、あくまでも新たなオーディエンスの獲得やオーディエンスに到達するためのツールに入手できるかどうかを見極める必要があるだろう。 もっと見る
Broadcasting & Cable (地上波・ケーブルテレビ業界誌)
米のテレビ広告費、2016年5月度に 4% 上昇
アメリカの調査会社 Standard Media Index が発表した数字によると、9月から開始する新テレビシーズンに向けたアップフロント交渉により、アメリカにおける 2016年5月度のテレビ広告費は 4% 上昇した。 もっと見る
Research Live (マーケットリサーチ専門ニュース)
ニールセン、ニューロサイエンスツール・スィートを発表
ニールセンコンシューマーニューロサイエンス(Nielsen Consumer Neuroscience)は広告クリエイティブの調査や最適化を支援する統合ニューロサイエンスツール・スィート、Video Ad Explorer を発表した。 もっと見る
Adweek (アドウィーク誌)
米Facebook、店舗訪問や売上に対する広告効果のトラッキングを開始
Facebook はオンラインで掲載された広告の店舗訪問や店頭売上に対する効果を測定する手法を新たに導入する。また利用者の来店促進を狙い、広告には最寄りの店舗情報が表示される。同社は 6月14日火曜日、Facebook に掲載される広告キャンペーンに接触した利用者がどのくらい店舗に訪れるかを明らかにする新たな測定ツールを追加。ツールには店舗訪問の有無に基づいて広告クリエイティブや配信、ターゲティングを最適化する機能が備わっており、個店や地域レベルで結果を表示することで広告キャンペーン全体の最適化を支援する。 もっと見る