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  2016年7月11日・25日合併号
   

THOUGHT LEADERSHIP

  

広告効果、質の高いブランデッドコンテンツがプレロール広告を上回る

広告を行う企業のブランドやマーケティング担当者はコンテンツに貪欲な今日の消費者をエンゲージするべく、凌ぎを削っている。広告ブロック機能が普及する現在、広告が視聴者にアピールするにはクリエイティブな戦略が必要となる。

クリエイティブな戦略は、「ブランデッドコンテンツ」(branded content)という新たなマーケティング手法を生み出した。ブランデッドコンテンツとはエンターテインメントまたは記事コンテンツと訴求したいブランドや商品とを組み合わせる手法で、例としては特定のトピックを啓蒙するオンライン動画シリーズに訴求したいブランドを登場させる、あるいはテレビ番組で特定の商品を中心としたストーリーを展開する、などが挙げられる。ブランデッドコンテンツは広告を実施する企業が消費者とエンゲージする新たな手法として、様々な形で実施されている。

コンテンツクリエイターや広告主にとってはオーディエンスを魅了し、ブランドや商品を買いたいと思わせるブランデッドコンテンツを広告で溢れかえる環境でどのように実施するかが重要な課題だろう。

ブランデッドコンテンツについて、ニールセンリサーチラボのディレクター、Harry Brisson (ハリー・ブリッソン)は「インパクトの強いブランデッドコンテンツの開発には万能な策があるとは言えませんが、ニールセンが実施した研究やコンテンツ調査から共通のテーマを抽出することができました。共通のテーマは、オーディエンスの共感を得るコンテンツ制作のベストプラクティスとして利用することができるでしょう」、とコメントする。

新たなマーケティングコンテンツに対する消費者の反応を把握するため、ニールセンは 100 を超えるブランデッドコンテンツに対する消費者の反応評価を実施した。評価からブランドの効果(ブランドに対する視聴者の共感)は訴求メッセージの「フォーマット」と「配信される環境」に大きく影響されることが明らかになった。オーディエンスの共感を獲得するだけではなく、さらに多くのオーディエンスの獲得が可能なブランデッドコンテンツを実施する上で重要となる 3つのポイントを以下にまとめる。

1. ブランデッドコンテンツはプレロール広告よりも高いブランド想起とブランドイメージ向上(ブランドリフト)を達成することが可能。

2. ブランデッドコンテンツを楽しんだ視聴者は、そのブランドに対して好意的な態度を示す傾向にある。

3. 媒体社と組むことで広告のインパクトをさらに強化することが可能。


ブランデッドコンテンツ:ブランド想起やブランドイメージの向上に寄与するドライバー

ニールセンの分析によると、ブランデッドコンテンツとプレロール広告(利用者が選んだ動画が再生される前に流れるプロモーション目的の動画)を比べた場合、視聴後のブランド想起が高かったのはブランデッドコンテンツ。実際に同一ブランドのブランデッドコンテンツとプレロール広告を調査対象者に提示し、視聴後にブランド想起を計測したところ、ブランデッドコンテンツの平均ブランド想起率は 86% となり、プレロール広告の平均 65% を上回った。さらには好意、購入意向や推奨意向などブランドイメージ向上(ブランドリフト)を計測する主要 KPI のスコアを比較すると、ブランデッドコンテンツ視聴後のスコアがプレロール視聴後のスコアを上回った。

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心を捉えるコンテンツに反応する消費者

共感という点では、発信されたメッセージに視聴者の心を開かせることができるのは質が高く、魅力的で感情移入ができるコンテンツ。

分析結果を見ると、今後放送されるテレビ番組エピソードの視聴意向とブランドイメージ向上に対するプラスの影響の間には相関関係が見受けられた。ブランデッドコンテンツを伝達する番組の視聴者エンゲージ効果が高ければ高いほどリピート視聴の可能性が高く、コンテンツに統合されたブランドに対する態度も好意的となる。

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視聴意向と最も相関関係が強い属性は、「自分に合った」のコンテンツ。そのためブランデッドコンテンツを実施する場合、コンテンツは視聴者のエンゲージメントを獲得できることと同時に視聴者個人に「自分に合う」と感じさせる必要がある。

またテレビ番組を活用する場合、ブランデッドコンテンツに関連する司会者や登場人物に対して視聴者が感情移入できること、さらには専門家として定評があり、好意的に捉えられていることも大切だ。分析から得られたファインディングスによると、ブランデッドコンテンツの動画に登場する主人公を「素晴らしい」と評価する視聴者は「まあまあ良い」や「よくない」という評価をした視聴者に比べ、今後新たに発表される同一ブランドのコンテンツを視聴する可能性が非常に高い(「素晴らしい」は 46%、対して「まあまあ良い」または「よくない」は 1% 未満)。

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視聴者の興味や関心を惹き、エンゲージメントを獲得するために必要となる要素は、ニールセンがアメリカのテレビネットワークや番組制作スタジオ用に実施したテレビ番組調査から得られたベストプラクティスとほぼ一致している。


媒体社との協業によって高まる広告インパクト

最後に、媒体社と手を組むことの重要性が指摘される。特定の媒体社と提携してブランデッドコンテンツを実施した企業と単独でブランデッドコンテンツを実施した企業を比べると、提携した企業のブランドイメージ向上率は平均で50%高かった。媒体社と手を組みことで企業は世の中に出る前の広告フォーマット、タレントとのコネクションや媒体社が保有するロイヤルティの高いオーディエンスを手に入れることができるからだ。

「コンテンツを伝達するフォーマット、ブランドのみに留まらないコンテンツの要素やコンテンツが配信される環境を検討する企業は高いブランドインパクトの発揮に成功する傾向にある」、とブリッソンは指摘する。

今日、メディアに接触するオーディエンスの興味喚起を得ることはかつてない程に難しくなっているが、オーディエンスは良いコンテンツを強く求めている、という点は不変だ。ブランデッドコンテンツを理解する企業は今後、オーディエンスにとって意味があり、楽しませてくれる体験を通じてブランドのインパクトを高めるコンテンツを制作し、結果を得ることができるだろう。


同ツールはモバイル、ウェブ、OTTテレビ、動画、ソーシャルメディア、メールやコンテンツマネジメントシステムなど、すべての主流メディアやマーケティングプラットフォームに対応。アメリカで利用されている全デバイスの95%を対象としたクロスプラットフォーム機能を提供する。
Nielsen Marketing Cloud のEVP、Mark Zagorski (マーク・ザゴースキー)は同ツールについて、「マーケティング効率を向上する上で、データはかつてないほど重要な役割を担っている」とコメント。
測定に関しても、同ツールを利用して広告やコンテンツが消費者の持つイメージや購入意思決定に与える影響のリアルタイム分析や、マーケティング費用効果に対する評価を行うことができる。
Nielsen Marketing Cloud のアプリケーションはNielsen Data Management Platform (DMP)に対応、150以上の第三者メディア、コンテンツアクティベーションや最適化アプリケーションを統合する。
ニールセンは1年前にデータテクノロジー提供企業のeXelateを買収、今回発表したNielsen Marketing Cloud を通じてeXelate の主要機能が利用可能となる。

 

 

INDUSTRY NEWS 

 

Music Business Worldwide (音楽業界専門グローバルニュースサイト)
ニールセン発表: YouTube、米で音楽ストリーミングサービスに抜かれる
 ニールセンミュージックは 2016年上半期(1-6月期)米音楽業界レポートを発行、掲載されたデータはほぼ BuzzAngle が発表した内容と同じだった。MBW が 7月4日週の前半に発表したデータでは上半期のオンデマンドストリーミング再生の 55% は Spotify、Apple MusicやTIDALなどの音楽ストリーミング配信サービスによるもので、残りの45% はYouTubeやVevo などの動画配信サービス。ニールセンのデータによると、音楽ストリーミング配信プラットフォームでの配信数は 2016年1月から6月までに1136億件、対して動画配信プラットフォームの配信数は953億件にとどまった。動画ストリーミング配信の成長率は対前年比 28.6% だったのに対し、音楽ストリーミング配信の成長率は対前年比97.4%。 もっと見る


Broadcasting & Cable (地上波・ケーブルテレビ業界誌)
テレビ再生の鍵はアドバンスド広告

 
ニールセンの最新調査によると、アメリカの家庭におけるSVOD (定額制動画配信)サービス加入とDVRの保有は同水準に達した。ニールセン発行の最新 Total Audience Research Report では2016年度第1四半期(1-3月期)、アメリカにおけるテレビ保有世帯の半分が Netflix、Hulu PlusやAmazon Prime に代表されるSVODサービスに加入しており、これはテレビ保有世帯におけるDVR 保有と同レベルにあると指摘している。 もっと見る

 

Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
米Comcast、今年後半にNetflixの動画コンテンツ配信を開始
 
メリカのメディア企業 Comcast Corp. の契約者は今年の後半、同社の次世代セットトップボックス経由でNetflixが配信する動画コンテンツを視聴できるようになる。長年に渡って紛争状態にあったComcastとNetflixは契約者増という共通のゴールに向けて、動画配信サービスで提携することとなった。 もっと見る

 

Music Business Worldwide (音楽業界専門グローバルニュースサイト)
もはや独り勝ちではない米YouTube、Spotify や Apple Music を下回る
 
2016年の上半期(1-6月期)は新たな歴史が誕生したと言っても過言ではない。アメリカにおけるデジタル動画プラットフォーム経由オンデマンド音楽ストリーミング配信の上半期増加率はわずか23%、対して音楽プラットフォーム経由のオンデマンド音楽ストリーミング配信は対前年比 108% という驚異的な伸びを記録した。ニールセンのデータによると、2015年のデジタル動画プラットフォーム経由での音楽ストリーミング配信は 1724億件で、音楽プラットフォーム経由の 1449億件を大きく引き離していた。 もっと見る 

 

Mediapost (広告メディア専門ニュースサイト) 
プレロール広告よりも効果の高いブランデッドコンテンツ
 
ニールセンの調査によると、ブランド想起においてはプレロール広告よりもデジタルブランデッドコンテンツの方が効果的。同社の分析ではブランデッドコンテンツとプレロール広告それぞれの視聴者における平均ブランド想起はブランデッドコンテンツが86%、対してプレロール広告は65%。 もっと見る

 

Beet TV (インタビュー動画サイト)
ニールセンマーケティングクラウドEVP インタビュー
 
アメリカのニールセンマーケティングクラウドは単なるデータマネジメントプラットフォーム企業にとどまらない。同社を象徴するキーワードは「オウンド」と「統合」だ(Nielsen Consumer 360 会場にて、同社の EVP、Damian Garbaccio (デーミアン・ガルバッチョ)に対するインタビュー動画)。 もっと見る

 

Wall Street Journal (ウォールストリート・ジャーナル紙)
米Twitter、NBA とライブストリーミング配信契約を締結
 
アメリカのSNS、Twitterは北米の男子プロバスケットボールリーグ、NBA とのライブストリーミング配信契約を締結した。契約により、NBAにとって初となるSNS 専用番組が配信される。もっと見る



 
 
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