transcosmos mail magazine special column

「ウェブマーケティングの新潮流」
ネットレイティングス株式会社代表取締役社長 萩原雅之


第2回 「メディアミックス」と「クロスメディア」

 毎年急成長をとげるネット広告費(約2800億円、2005年)でも、日本の広告費全体(約6兆円)のわずか4.7%にすぎません。インターネット業界にいるとすべてがネットを中心に動いているかのように思いがちですが、現実にはまだまだテレビや新聞を使ったマス広告や伝統的なSP手法への依存度は高いと認識しておくべきでしょう。

 90年代後半から始まったネット媒体や企業サイトを使った広告やプロモーションは、そのインタラクティブ性が注目されたために特殊なものという扱いがされましたが、現在ではキャンペーンプランでも予算でもインターネットを最初から組み入れることが一般化しました。

  具体的には、ネット媒体をマス4媒体の補完メディアと位置づけてリーチの最適化を考える「メディアミックス」と、企業サイトやブランドサイトをマーケティングツールとして位置づけ、消費者とより深いコミュニケーションを実現する「クロスメディア」という2つの考え方があります。
今回は、この二つの考え方について見ていきましょう。

「メディアミックス」におけるネットの捉え方

 ネットメディアにおいても、誰に(ターゲット)、どのくらい(リーチ)メッセージを届けられるかという基本的な考え方は重要です。すべての企業が個人情報を駆使するアマゾンやグーグルになれるわけではないですし、世の中の多くの広告・マーケティングデータが性・年齢別データなどのシンプルな数字として存在しています。

 ミクシィはもっともWeb2.0的な企業と言われていますが、その事業収入はこのような伝統的「メディアミックス」の考え方で広告を出す大手企業に支えられています。ネットレイティングスの視聴率データによれば、ミクシィの利用者は20代以下が半数を占めており(図1)、ひとりあたりの利用時間もYahoo!JAPANを大きく上回ります。

  F1層(20〜34歳女性)やM1層(20〜34歳男性)のテレビや新聞への接触時間が少なくなった現在、この層に確実にリーチできるネットメディアは貴重です。実際、ミクシィの総バナーインプレッションは今年に入ってYahoo!JAPANについで2位に浮上し、掲載されるバナー広告のクリエイティブもF1、M1を強く意識したデザインになっているものが多くなっています。これは広告主が媒体の利用者像を明快にイメージできるからです。
(図1)
mixi(ミクシィ)と asahi.com(朝日新聞)利用者の年齢構成
(2006年6月、家庭のPCからのアクセス)

  ネットレイティングスの基本メニューには、性・年齢などを指定するとその層を多く含むサイトを抽出してくれる「Demographic Targeting」(参照:http://www.netratings.co.jp/NetView/ams_2.htm)という機能がありますが、閲覧しているサイトはこんなにも違うのかと驚かされます(図2)。ウェブの表現力が格段に向上し細かい表現力が実現すれば、女性誌のように細分化された具体的なユーザー像を描きやすいネットメディアへの注目度も高くなると思われます。


  
■ (図2)属性別にみた構成比の高いサイトの例(Demographic Tarketing による)
(2006年6月、家庭のPCからのアクセス)

属性 該当属性の構成比が高いサイト(例) 構成比
F1
(20-34歳女性)
felissimo.co.jp フェリシモ(通販) 36%
cosme.net アットコスメ(クチコミ) 34%
fashion-j.com 週刊ファッション情報(ポータル) 32%
M1
(20-34歳男性)
akibablog.net アキバBlog(個人サイト) 38%
square-enix.com

スクウェア・エニックス(ゲーム)

34%
gamecity.ne.jp GAMECITY(ゲーム) 32%
F2
(35-49歳女性)
co-op.ne.jp 生協(通販) 58%
orangepage.cet オレンジページ(レシピ) 47%
benesse.jp ベネッセ(生活情報) 45%
M2
(35-49歳男性)
zdnet.com ZDNet(ニュース) 51%
coneco.net コネコネット(価格比較) 45%
amazon.com Amazon.co.jp(ショッピング) 44%
F3
(50歳以上女性)
nomura.co.jp 野村證券(証券) 11%
kirin.co.jp キリンビール(飲料) 9%
jtb.co.jp JTB(旅行) 8%
F1
(50歳以上男性)
nikko.co.jp 日商コーディアル証券(証券) 43%
nikon-image.com Enjoyニコン(写真・映像) 37%
necdirect.jp NECダイレクト(通販) 37%

メディアミックスとの違い

 一方、クロスメディア戦略では、マス広告やネット広告と連動させて、企業のホームページを消費者との「より深いコミュニケーションを実現する場」と考えます。

 例えばライフカードのCM(カードの切り方が人生だ)のように、テレビCMを導入としてウェブサイトでさらに深いコンテンツを提供する手法は、消費者に行動を起こさせ経験を進化させることで、関心やブランドロイヤリティを向上させるといった効果があります。

 検索連動型広告では、最近「LPO(Landing Page Optimization)」という言葉をよく聞くようになりました。これは広告から誘導するページ(ランディングページ)こそがコンバージョンに重要であるという考え方ですが、これはクロスメディア戦略にもそのまま当てはまります。検索連動であれ、マス広告との連動であれ、誘導される消費者の気持ちや目的に最適化した表現やアピールが必要なことは言うまでもありません。最近、前述のライフカードのCMの他にもTVCMや新聞・雑誌広告などで「何々を検索して下さい」という表現が増えてきましたが、これも広告を見た人に実際に行動を起こさせ、かつその関心度や効果がアクセスログという形で正確に把握できる点で画期的な手法と言えます。

 なお、多くの企業ではサイト誘導を意図したキャンペーン以外でも企業活動がアクセスログに現れる傾向がみられます。もともとマス広告の効果を測定することは非常に困難で、このくらいの露出・広告費ならこの程度の認知度が得られるといった経験則に頼っていました。企業サイトのアクセスログの分析は、オフライン・オンライン含めあらゆる企業活動(広告だけでなくニュースや店頭SPなども含む)に対する消費者の反応をみるモニターのような役割を果たすわけです。大型キャンペーンや大きなニュースが発生した場合はネットレイティングスの視聴率データからも読み取ることが可能です。

 次回は、GyaOをはじめとする音楽・映像などリッチコンテンツを提供するサービスの台頭と、それにともなうネットマーケティングの変化や可能性について検討します。

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